人材市場レポート

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月例レポート

平成19年8月 第6号 (日本語版)

〜金融市場の最近の人事事情について〜

第一部 「過剰流動性」下の金融人材市場
第二部 「金融転職市場の創設」の提言

エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社
代表取締役 小溝 勝信
- 目次 -

  • はじめに
  • 要約
    (1) 金融市場の現況に対する認識
    (2) 金融プロダクト別・金融機関別様相
    (3) 求められる人材のタイプ
    (4) 「金融転職市場の創設」の提言


    第一部 金融プロダクト別人材需要

    (1) 投資銀行カバレッジと証券引受け
    (2) M&A


    (1) 買収ファイナンス
    (2) ストラクチャード・ファイナンス
    (3) 不動産投資と証券化


    (1) 事業法人宛てビジネス
    (2) デリバティブ

    (1) ヘッジファンド
    (2) 投信
    (3) 投資顧問


    8.その他

    第二部 「金融転職市場の創設」の提言





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    はじめに
    07年前半での世界経済及び日本経済はともにおおむね順調に推移していた。金融人材市場も、06年のように「バブル」と称せられるほどではなかったが、外資系を中心に引き続き活況を呈していた。しかし07年の前半を終わりこの原稿を書いている最中に、米国で「サブプライム問題」が勃発、世界の金融市場を大混乱に巻き込んでいる。この「問題」が日本の「金融人材市場」にどのような影響を与えるのか予断を許さない。

    この「レポート」では、
    第一部で、07年前半の金融人材市場の様相を報告する。
    第二部で、当社の起業の理念である「金融転職市場の創設」の提言を行う。

    この「レポート」は、筆者が前職のヘッズジャパンで94年に執筆を開始し、以来半年毎に作成してきた「金融人材レポート」の連続版である。


    要約
    (1)金融市場の現況に対する認識
    10年前には世界の名目GDPの合計額の2.2倍であった金融資産残高は、現在、3.3倍に膨らんでいる。この「過剰流動性」は、日本の超低金利政策に起因する円キャリー・トレード(一説に100兆円に上ると)、米国の巨額な貿易赤字、大幅に低下している米国の家計貯蓄率等の信用創造と、好業績による企業のキャッシュの積み上げ、オイル等の資源マネー、中国等新興国の増大する外貨準備により生み出されている。この「過剰流動性」により、金融は実物経済を陵駕するほど巨大化し(金融資本主義の再来)、世界を駆け回り(グローバリゼーションの進展)、機関投資家や個人富裕層の資金はリスク選好を強化して、結果、リスクのフラット化をもたらした。ファンド化した資金(ファンド資本主義)は、LBOファイナンス(レバレッジ効果)の支援を得て空前のM&Aブームを引き起こした。ここで生み出されたファイナンスは、高度化したクオンツ技術により証券化され、格付けへの妄信と相俟って一大投資ブームを作った。このように世界の「過剰流動性」は世界の金融ビジネスの様相を一変させた。結果、欧米の巨大金融機関は、06年に引き続き07年でも巨額の利益を上げていた(図@参照)。確かにリスク指標(VaR)は上昇していたが、欧米の巨大な投資銀行やファンドの動きにブレーキを掛けるものはいなかった。
    一方日本では、「三つの過剰問題」を克服して企業業績は向上し、金融機関の体力も回復しつつあった。そのため、企業は「選択と集中」政策をとり「産業の再編」が進んだ。結果、日々M&AやTOBの記事が新聞紙上を賑わした。個人投資家は、「貯蓄から投資へ」の流れに乗って高いリターンを求め、高リスクのクレジット資産や海外の金融資産への投資を増やしていた。個人富裕層宛てビジネス(このレポートでは「リテール・ビジネス」と称する)は急拡大していた。
    上記のように、経済の「グローバル化」や「金融化」は、好むと好まざるとに関わらず世界の潮流であり、企業や個人といった経済主体はそれに正面から対峙しなければならない。しかし邦銀や日本の企業は依然として「閉鎖主義」を堅持している。即ち、6月の株主総会では、300以上の上場会社が「アクティビスト」の行儀の悪さを口実に買収防止策の導入を決め、それに日本の司法がお墨付きを与えた。06年では、90年以降はじめて株式持合い比率が上昇し、日本の経営者は自己保身体制を強化している。さらに、従業員の成果報酬制度は人事評価が難しいとして、邦銀や大手証券では再び「年功序列」の報酬制度が復活している。このように、歴史の歯車は逆回転し始めている。
    山本金融大臣は「東京のウインブルドン化!」と叫ぶが、具体的政策は何も無い。シティ・オブ・ロンドンによる国際金融センター・ランキングの調査では、東京は9位で、香港、シンガポール、シドニーにも劣っていると評価されている(図A参照)。

    しかし、米国型「原理」資本主義の蔓延は世界的な懸念であり、ポストモダンの文明の構築も含めて見直さなければならない。それにもかかわらず筆者が懸念するのは、日本では、いまだにグローバリズムの流れを阻止し、フェアな企業文化の構築を阻もうとしている「既得権者」がいることである。

    (図@) 主な外資系証券(日本法人)07年3月期決算

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    (図A) 世界の金融センターランキング

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    (2)金融プロダクト別・金融機関別様相
    これまでの「レポート」でも報告の通り、メガバンクは04年の中間決算で「不良債権問題」の終焉を宣言し、05年では、経営の軸を「健全性」から「収益性」へ移すとして組織改革を企図し、積極的に外部採用を試みた。しかし06年に入ると、メガバンクは一転その政策を放棄した。金融人材市場は再び「外資系中心」に戻り、M&A、投資ファンド、LBOファイナンス、クレジット投資、ヘッジファンド、リテール/個人富裕層ビジネスが拡大した。06年では、外資系は、「バブル」と呼ばれるほど大きな人材需要を生み出していた(「レポート」−5)をご参照下さい)。
    この流れは07年でも続いているが、特徴的なことは、金融ビジネスのフォーカスが、M&Aやエクイティ・ファイナンスから、ハイマージン・ファイナンス(デット)の提供、それらのソーシング、加工、トレーディング、加工された金融商品の販売・投資へ「シフト」していることである。即ち「クレジット投資」ビジネスが急激に拡大し、強い人材需要を引き起こしていた。また、個人金融資産の「貯蓄から投資へ」の流れに対しては、内外の金融機関が、おのおのの戦略に沿って体制を強化していた。このリテール・ビジネスでの人材採用で目立ったのは、戦略を策定し推進する「指揮官」の採用であった。各社とも苦戦していた。先端的な金融機関はリスクのある富裕層向け商品を開発し、高収益を上げていた。人材需要も強かった。

    邦銀の貸出し利鞘が改善せず、証券会社が株式市場の不振を受けて苦戦する中で、世界の金融界における日本の金融機関の「劣後」は明白である。しかし最近では、3メガバンク・グループや大手証券3社の間にも「違い」が見え始めている。改革を進めるため苦闘して いるメガバンクもあれば、危機感すら持たない邦銀もある。同じ金融機関の中でも改革派と守旧派がいる。


    (3)求められる人材のタイプ
    金融ビジネスが変化すれば「求められる人材」のタイプも変わる。90年代、金融ビジネスを席巻していたマーケット・リスク(金利・株・為替等)の金融先端商品は、その商品自体が持つ付加価値により、外資系金融機関に大きな収益をもたらしていた。金融のプロに対しては、高度な数理を駆使して作られた金融商品に対する理解力が求められた。しかし現在では、ボーダフォン買収のLBOファイナンスに代表されるように、事業やプロジェクトが生み出すキャッシュフローを裏付としたファイナンスと、その証券化や流動化ビジネスが拡大している。従って金融のプロには、企業貸付けの知識(財務諸表の分析や担保価値の査定)だけではなく、事業価値の算定やコベナンツ等の法的知識、そのプライシング(証券化や流動化が可能な金利水準の算定)に関する能力が求められる。そして「企業価値とは何か」についての見識も問われる。

    90年代と違い今日の金融ビジネスでは、「商品」で他社と差別化することが出来ない。金融機関の数が外資系大手十数社と数社の日本の金融機関に絞り込まれている今日、各社ともあらゆる商品を提供出来る。90年代のように革新的な金融商品が期待出来ないのであれば、「戦略・営業」で勝負しなければならない。また、顧客のニーズが多様化し急激に変化するのであれば、マーケットの変化を機敏に読み取る「洞察力」で戦わなければならない。従って、営業担当者には、互いに「矛盾」する「専門性」(複数の商品に対する深い知識の取得)と「普遍性」(変化に対する柔軟性の醸成)が求められる。即ち、実戦で勝ち抜く「提案のためのアイディアやセンス」であり、「顧客とのコミュニケーション能力」である。

    金融マンは、「金融はグローバル・ビジネスである」という自明の理を理解しなければならない。「失われた15年」の間、特に日本の金融機関の経営者や金融マンは内向きの仕事に忙殺されていた。邦銀の海外店は閉鎖され、国際的な取引から疎外され、新しい金融商品の開発では常に外資に遅れを取っていた。もし日本の金融機関が世界の金融市場で存在感を示したいのであれば、各金融マンは自らグローバルな感覚を養わなければならない。


    (4)「金融転職市場の創設」の提言
    「金融転職市場の創設」は筆者が18年間に亘り訴えてきた理念である。今回、その「骨子」を提言したい。問題が多岐に亘っているので、順次説明したいと考えている

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    第一部 金融プロダクト別人材需要

    図Bに見られる通り、「クレジット投資」が最大の需要項目であった。06年ではM&Aやファイナンス等のプライマリー・ビジネスでの人材需要が最も多かったが、07年に入り、このファイナンスの証券化やクレジット投資商品が脚光を浴びており、07年前半で最大の人材需要をもたらしていた。

    (図B) ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成19年7月31日現在)
    金融ビジネス
    プロダクト
    投資銀行ビジネス
    8
    14.5
    カバレッジ、M&A、引受け、IPO
    買収・投資ファンド
    6
    10.9
    バイアウト、プリンシパル・インベストメント、PIPEs
    ハイマージン・ファイナンス
    6
    10.9
    LBOファイナンス、メザニン、ストラクチャード・ファイナンス
    クレジット投資
    12
    21.8
    ファイナンスの証券化、ローン・トレーディング
    CDS、CDO/CLO
    事業法人ビジネスとデリバティブ
    7
    12.7
    中小資本企業取引とデリバティブ
    資産運用
    9
    16.4
    ヘッジファンド、投信・投資顧問
    リテール
    5
    9.2
    個人富裕層宛てビジネス
    その他
    2
    3.6
    アナリストコンプライアンス等
    合計
    55
    100.0
     

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    1.投資銀行ビジネス

    (1)投資銀行カバレッジと証券の引き受け
    @ 外資系金融機関は、07年でも引き続き投資銀行部門で積極的な採用を行っていたものの、人材需要は06年ほど強くはなかった。(大手外資系の投資銀行部門は100人余りのスタッフで構成されているが、06年では純増と入れ替えの合計でその3割程度が採用された)。
    カバレッジ・グループの担当産業別では、GIG(一般産業)、TMT、FIG(金融機関)、FSG(投資ファンド)で純増や欠員補充のための採用があった。対象は06年に引き続き中堅以上の「即戦力」であった。従って外資系同士の引き抜き合戦が続いており、良質な若手を除けば日系のバンカーは対象にならなかった。07年では、金利の上昇やクレジット・スプレッドの拡大予想もあって、高格付けの社債の発行が増大したが、特にそのための人材需要は聞かれなかった。
    その他目を引いたのは、大手邦銀の役員の外資系への転職であった。最近では昔と違い、邦銀の役員の転職も珍しく無くなった。ポストは、外資系金融機関日本法人の会長、副会長、シニアアドバイザー等の要職であった。シニアバンカーに対する外資系の人材需要は周期的に起こるが、最近では、ファイナンス・ビジネスが拡大する中で、大きな人脈を持つ大手邦銀のベテランバンカーが評価されている。

    A 図Cに見られる通り、株式の引受けでは野村証券、大和証券SMBC、日興シティという日本の大手証券会社が強く、債券の引受けではメガバンク系の証券会社が順位を上げている。この傾向は07年でも続いている。大手証券は主幹事としての地位を死守し、メガバンクはメインバンクの強みを生かして、銀行業・証券業等の総合力を発揮しようとしている。これに対抗すべく、外資系投資銀行は「中・小資本の事業法人取引」を強化している(詳細は「事業法人取引とデリバティブ」の項を参照下さい)。このためメガバンクの人材に触手を伸ばしている。

    B 投資銀行ビジネスはますます証券機能を必要とすることから、メガバンクはRM部門のスタッフを関連証券会社のカバレッジ・グループに異動した。それに併せて、外部採用も試みていた。邦銀のバンカーには大型やクロスボーダーのディール経験がないので、外資から人材を引き抜こうとしていた。しかし依然としてメガバンクの雇用環境は外資系金融機関と大きく違っているため、外資系の一流プロは敬遠していた。

    (2)M&A
    @ 世界のM&Aは今年の6月までは好調で、前年比5割増しの2.5兆ドル(300兆円)に増大した。特徴は、この内25%はファンドによる買収であったこと。「過剰流動性」に促されて大口化したこと。また、拡大する欧州経済を背景に、欧州のM&Aが前年同期比7割増の1.1兆ドル(130兆円)に上ったことである。これで欧州のM&Aは米国に並んだ。
    日本企業による07年上半期のM&Aの総額は813億ドル(10兆円弱)で、前年同期比3%増加していた。TOB案件も増えている(図C参照)。しかし日本のM&Aは世界全体の3.3%(日本のGDPは世界のGDPの10%程度ある)に過ぎない。M&Aの増大は日本経済の活性化や企業の世界市場での生き残りのために不可欠であり、M&Aのいっそうの拡大が期待される。

    (図C) 日本で届出をしたTOB件数と公表金額の推移(自己株式は除く)

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    A 上半期の日本企業の関わったM&Aのアドバイザリー・ランキングは、図D、図Eの通りである。即ち、日本の証券会社がランクを上げている。これは、銀行系がメインバンクとしての強みと総合力を発揮し始めたということであろう。また、事業継承のM&Aニーズが増大しているが、メガバンク・グループは非上場企業の小口M&Aの発掘に注力している(図E参照)。さらに、日本企業による海外進出の増大に伴い、現地企業の買収等海外でのM&Aも増えている。実際、日本の大手金融機関は欧州とアジアでのM&Aを拡大するため、実績のある欧米のM&Aファームと提携し、外人プロをスカウトしている。このように、今後、日本の金融機関はM&Aでの人材採用を増やすと思われる。しかし現時点では、日本の大手証券会社はディール件数では外資を圧倒しているものの、大型やクロスボーダー案件ではトップクラスの外資系投資銀行との差はまだ大きい。
    外資系金融機関も06年に引き続きM&Aの人材を採用していた。外資系のM&Aは、相変わらず大口中心でクロスボーダー案件を狙うので、外資系同士でプロの引き抜き合戦を行っていた。そしてファイナンシャル・スポンサー・グループ(FSG)を強化してファンドとの関係を強化し、案件の相互紹介を進めている。また、ファイナンスを得るため銀行との関係も強めている。即ち、M&A、ファンド、LBOファイナンスは、「三位一体」として拡大している。いずれでも強い人材需要があった。

    (図D) 2007年3月期 M&A、引き受けランキング

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    (図E) M&Aアドバイザリーランキング(07年1-6月の取引金額)

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    2.買収・投資ファンド

    @ 日本の買収ファンド(マイノリティ投資やPIPEsを除く)は、97年にアドバンテッジ・パートナーズが日本で始めてファンドを設立して以来、06年までに110本が設立された。投資・運用会社は、バイアウト・ファームと証券会社の行うプリンシパル・インベストメント(PI)を合わせると約100社に及ぶ。投資された案件は約300件、金額は3兆円を超えており、約100件のエグジットがあった。ビジネスとしてテイクオフしていると言える。

    最近の買収ファンドでは、特にオーナー系事業会社による事業継承と資本再構築の案件が増加している。オーナー系の案件に対しては、日本の証券会社、外資系の小型ファンド、ブティック系ファンドが注力しており、人材需要があった。採用の対象はこのクラスの事業法人との取引に慣れた邦銀マンである。また、ペルミラ、KKR、ベインキャピタル、ブラックストーン等、海外で大きな実績を持つファンドも日本に上陸した。しかし、これら大手による日本専用ファンドの設立はまだない。従って、騒がれた割には人材需要は小さかったと言える。この「遅れ」は、「日本のバイアウト市場の開花にはまだ時間が掛かる」と言う海外からの評価に起因していると懸念される。

    証券会社の自己資金によるPIも活発であった。日本の大手証券3社の投資額は1.3兆円で、なお増加中である。グループ全体の収益増に寄与している。日本の大手証券は、アジア市場でも積極的に投資しており、現地でも人材採用していた。外資系投資銀行の日本法人も積極的にPIを進めており、人材需要も強かった。PIは自己資金の投入であるから、ファンドより機動性が高く自由度もある(勿論、投資銀行部門のアドバイザリーとの利益相反には注意を要した)。従って人材需要は、ファンドよりPIの方が大きかった。

    A マイノリティ投資も活発であった。買収ファンドと異なり、純粋に投資ゲインを求める。PIPEsに代表される。複数のPEに投資する外資系ファンドの上陸もあり、人材を採用していた。また、生命保険会社等大手の機関投資家が、シングルPEファンドやPEのファンド・オブ・ファンズに投資していたが、これらは内部から人材を調達していた。

    B 日本企業のM&Aで、買収ファンドが仕掛けた案件は1−6月で54億ドル(6千億円)あり、そのM&A全体に占める割合は8.2%に過ぎない。世界のM&Aの25%がファンド主導であったのに比べると小さい。日本経済の活性化には買収ファンドの活躍が必要だが、日本のマスコミが「ファンドによる買収はゲイン狙いであるからケシカラン」と嫌汚感を煽っている。それに加え、司法がスティール・パートナーズを「乱用的買収者」と認定した。同社のお行儀の悪さは問題だが、驚かされたのは、東京高裁が判決文の中で「陳腐」なステークホルダー論を述べ立てたことだ。知識経済では経営者や従業員と対立して一方的にTOBを宣告しても買収は無理である。しかし、だからと言って「敵対的TOBは悪だ!」と国を挙げて決め付けるのは如何なものか。これでは日本でのM&Aは拡大しないしファンドも投資しない。従って人材も育たない。

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    3.ハイマージン・ファイナンス

    (1)買収ファイナンス

    @ 世界でのM&Aは、事業会社自身の戦略というよりファイナンスに後押しされて拡大している。LBO形式によるM&Aは、06年に世界で7千億ドル(84兆円)実行された。M&A全体の約2割に相当する。LBOファイナンスは、06年に世界で4千億ドル(48兆円)実行され、前年比68%増加した(図F参照)。07年でも同じ勢いで増えていた。LBOファイナンスは銀行融資、ファンドによるファイナンス、社債に分かれるが、現在ではファンドによるファイナンスが全体の3/4を占めている。しかしファンドの場合内容が不透明になる。現在、欧米金融機関による過当競争でLBOファイナンスのコベナンツ(制限条項)が緩和されつつあるが、そのファイナンスがファンド化されて世界の投資家に販売されている。不透明なリスクが「拡散」されているのかもしれない。

    A 日本のLBOファイナンスは、07年3月期に2.4兆円(前年比3.8倍)取り組まれたが、先進国の仲間入りをするには、少なくとも10兆円程度に増えなければならない。ボーダフォン買収のように1兆円を超えるファイナンスもあったが、日本の実力は4−5千億円程度で、海外市場に比較して極めて小さい。日本でLBOファイナンスが拡大しない理由は、邦銀による金利のダンピングや貸し出し条件の緩和で証券化が難しく、また採算に会わないため外資系が参入しにくいことである。経験者も少ない。伝統的な銀行員には事業ファイナンスの経験が少ないし、コベナンツも処理できないからである。マーケットが拡大しなければ人材も育たない。

    B LBOファイナンスの提供者は、メガバンク、外資系ファンドが所有する中堅の銀行、信託銀行、日系金融機関の運営するファンド、外資系金融機関である。ボーダフォン案件を除けばメガバンクの融資額が最大である。一部の邦銀が海外でLBOファイナンスで世界ランク入りしているが、各メガバンクとも欧州とアジアにフォーカスしている。現地で外人プロを採用していた。日本で外部採用して拡大を進めているのは、特に中堅の銀行や外資系金融機関である。このビジネスで強い人材需要があり、外資系は数少ないプロをめぐって争奪戦を繰り広げていた。

    (図F) 世界のLBOローンの実行額

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    (2)ストラクチャード・ファイナンス

    @ 06年に1兆円余り発行されたMSCBはスキームの評判が悪く、07年では大きく減った。しかし擬似MSCBで、資本と負債の中間に位置するさまざまなハイブリッド証券が開発されている。これらは私募形式でSTEPと呼ばれ、既存株主の一株当たりの利益の急速な希薄化を抑えるスキームや、発行会社に一定額の資金調達を保証するもの等がある。ここでの人材採用があった。また、これらのファイナンスのソーシングや機関投資家への販売でも人材需要があった。

    A メザニン・ファイナンスは、日本では劣後ローン形式で拡大しつつある。メガバンク、 外資系ファンドが買収した中堅の銀行、信託銀行、ノンバンク、外資系投資銀行、ブティック型ファンド等が、自己資金を投下していた。メザニンは05年に始まり、事業ファイナンスや不動産の証券化に使われている。ローン金利は5−15%で投資家には魅力的である。メザニンの規模は現在1千億円程度だが今後拡大すると予想されている。ファイナンスのオリジネーション担当だけでなく、他社がアレンジするメザニン・ファイナンスに参加する担当も含め、強い人材需要がある。しかしメザニン・ファイナンスの取り組みには高度のノウハウを要するので、外資系のメザニン・ファンドでは外人プロが与信を担当している。今後、日本人経験者の成長が期待される

    B 邦銀が行うシンジケートローンは07年3月末現在で27.5兆円あった。これは前年比6%増で拡大のペースが鈍化している。しかし、日本のシンジケートローンの規模は米国の1/10程度に過ぎない。シンジケートローンには、M&Aのための協調融資、LBOファイナンス、PFI、インフラ・ファイナンス、海外向けのシンジケートローン、アレンジメント・フィー稼ぎのための国内融資の仕立て直し等が含まれる。邦銀の人材は内部調達されている。外資系金融機関はPFI、プロジェクトファイナンス、インフラファンド等、特徴的なものに特化している。人材需要は限定的であった。


    (3)不動産投資と証券化

    @ 日本の不動産時価総額は約2300兆円あり個人金融資産より大きい。その内、証券化された不動産は僅か30兆円程度である。それでも02年には6兆円であったから、急拡大していると言える。内、不動産私募ファンド10兆円、REIT6兆円、住宅ローンの証券化6兆円、CMBS4兆円程度である。
    最近では大都市の地価が急上昇し、優良物件のキャップレートは採算が取れる下限と言われる3%台に低下している。しかし、資本力と加工力のある大手の外資系投資銀行は引き続き高収益を上げ、さらに巨額の自己資金を投入しようとしている。また、外資系金融機関やオイルマネーの新規投資も行われている。このように日本の不動産投資にはまだ商機があるようで、依然として外資系からの人材需要は強い。また日本勢の不動産私募ファンド、メガバンク、中堅の銀行の不動産関連ビジネスも好調である。人材需要もある。しかしノンバンクは収益性の高いものを選別し、際物を追っている。今後は私募ファンドも金融庁の監督対象となることから、その影響を見る必要がある。

    A 不動産のノンリコース・ローンは邦銀を中心に拡大を続けており、邦銀全体での残高は10兆円を超えていると見られる。このローンの証券化商品であるCMBSは、毎年1−1.5兆円程度発行されている。邦銀は、ローンの取り組みからCMBS組成、投資家への販売と一貫した体制を作ろうとしている。メガバンクの人材は内部採用されているが、中堅の銀行は外部採用していた。

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    4.クレジット投資

    @ 世界のクレジット・マーケットは07年の前半までは順調に拡大していた。06年末のCDSの想定元本残高は34兆ドル(4千兆円)で、前年比36%増大した。全世界のCDOの発行高額も5490億ドル(66兆円)で01年の5.4倍に増大していた。
    日本市場でもさまざまなクレジット・ビジネスが拡大しており、過去一年で最も強い人材需要があった。

    外資系投資銀行の「クレジット投資部」は、LBOファイナンス等クレジット・リスクの高いローンや社債、不動産のノンリコース・ローン、リスクの高い住宅ローン、アパートローン、メザニン、エマージング債権を仕入れる(ソーシング)。その後リスク分析やデュー・ディリジェンス等のエグゼキューションを行う。さらに転売(ローン・トレーディング)や、CDSを使用したヘッジングやトレーディングを行う。また、自己資金を投入(PI)してホールドする場合もある。さらに、投資家向けに、リスクの大きさ別にトランチングしてCDOを組成する。クレジット投資では、各投資銀行とも大きな収益を上げており、各段階で強い人材需要があった。その内最も人材需要が強い職責は投資案件のソーシングである。ここではシンジケーションへの参加やセカンダリー・マーケットからの購入も行われる。

    A 日本のCDSの想定元本は22兆円に上るが、世界全体の4千兆円の1%にも満たない。しかし日本でも07年の初めからサブプライムローン問題や一部の日本企業のクレジット・リスクに対する懸念もあり、CDSの指数が拡大(クレジット・スプレッドが拡大)しつつあった(図G参照)。また、クレジット銘柄の増大や指標の提供サービスの拡大等インフラも整えられつつあり、投資での魅力が改善しつつあった。従って、特に外資系投資銀行のクレジット商品開発部で人材需要があった。クレジット・アナリストの需要もあった。しかし、依然として日本のクレジット・マーケットには合理性が欠けていることから、日本ものだけのトレーダーの需要は聞かない。外人トレーダーが海外ものをトレーディング(グローバルブック)すると同時に、日本ものも管理している。

    (図G) 2007年での国内のCDS指数の変化

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    B 外資系金融機関は、日本や海外で組成したクレジット証券を、金融機関、年金、ノンバンク、商社、事業法人、個人富裕層(販売会社を経由)に販売している。トップクラスの外資系投資銀行には高度の数理を駆使したさまざまなCDOがあり、マーケターに対する強い人材需要があった。マーケターは、セールスをサポートして投資家に商品の説明を行う。CDOにはマネージド型、スタティック型、シンセティック型、キャッシュ型等多種類ある。また、CPDO等日々新種のCDOが開発されており、通常の債券部セールスには説明が難しい。また、マーケターの職責には、日本の投資家のニーズを海外のトレーダーに伝達することも含まれる。この採用の対象は英語力のある頭の良い若手である。
    逆に言えば、日本のクレジット・ビジネスは外資系の本社主導であり、既製品の販売に過ぎない。ハイマージンのファイナンスをCDOに証券化するだけでなく、クレジットリンク債を組成したり、CDSとのアービトラージを行ったり、クレジットリスクにはさまざまな商機が期待出来ると思う。日本のクレジット・ビジネスがより多様化することが望まれる。

    C 日本の金融機関もクレジット・ビジネスを拡大している。メガバンクがローンを担保にCLOを仕組み、証券化したCDOを系列の証券会社を通じて販売している。さらに、あるメガバンクは、グループ内の銀行・証券会社が連携して、ファイナンス、証券化・ファンド化から販売まで、「一気通貫」ビジネスとして構築しようとしている。そのためには社内インフラの整備が必要であると同時に、外人プロを採用しなければならない。

    D 7月、懸念されていたサブプライムローン問題が炸裂し、クレジット市場がグローバルに大混乱(プライスが立たない)している。これにより、資産担保証券を組み込んだCDOの市場規模は現在の1/8にまで縮小するとの見方もあり、人材需要にも影響があると考えられる。

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    5.事業法人取引とデリバティブ

    (1)事業法人宛てビジネス

    @ 大手の外資系投資銀行が、事業法人取引を抜本的に見直し、収益を拡大しようとしている。即ち、これまでは、投資銀行本部が大企業に対して大型の引受けやM&Aを提案し、債券本部が、時価会計やヘッジ会計の問題が比較的小さい中・小資本の事業法人や宗教団体、学校法人等に対してデリバティブ商品を提案していた。しかし現在の動きは、大企業より下の事業法人にフォーカスし、デリバティブに止まらず外資系が持つ多様な能力を総合的に提案して、高い収益を上げようとするものである。対象は、オーナー系で、時価総額5百億円から1千億円程度の上場企業、未上場企業、プライベートバンクの顧客が対象である。オーナー系では意思決定が早いからだ。ここには多くの商機がある。即ち、さまざまな資本政策の提案、M&A(戦略的M&Aや事業継承)、IPO、子会社の上場支援、MSCB類似の新しいファイナンス、負債サイドへのデリバティブの提案、長期輸入為替、株式の売り出し(ブロックセールス)等の資本・負債サイドへの提案である。資産サイドに対しては、子会社やオーナーの資産管理会社への仕組み商品(デリバティブやクレジットを駆使したもの)のプレースメントや、プライベートバンクによる資産の運用・管理サービスである。さらに、投資機会としてプリンシパル/ファンド投資(PIPEs、未上場株の取得、MBO)がある。これらの取り組みはファイヤーウォールやチャイニーズウォールを跨る。しかし、債券本部の事業法人営業部はファイナンスやM&Aを話題にするし、投資銀行本部のカバレッジ・バンカーは債券やファンドの説明を行う。勿論ウォール問題には細心の注意を払っている。

    A 本来この規模の事業法人に対しては、日本の金融機関が親密な関係を築いているはずだ。しかし、取引の窓口が銀行の支店となっていることからノウハウがついて行けず、グループの総合力が発揮されていない。そこに大企業取引の収益性の低下に悩むトップクラスの外資系投資銀行が照準を合わせ始めている。しかし外資系金融機関での問題は、少人数で、複雑で時間のかかるオーナー企業との取引を追求出来るのか、外資系に求められる高い収益を短期に実現出来るのかである。また、最近の外資系の部門長の多くは、生え抜きで40歳代前半である。「綺麗」なディールに慣れている彼らが泥臭いオーナーのニーズや行動を理解し、適切に対応出来るのか、取引は属人的となるが、そのような総合力を持つ魅力的な営業マンを確保出来るのかである。外資による採用のターゲットは、邦銀の大きな支店での営業担当者や、大手証券の事業法人担当者であろう。しかし、適格な能力をもち、且つ外資系への転職を考える候補者を見つけることは至難の業である。

    B 外資系投資銀行によるミッドマーケット(宗教・学校・財団等)のマーケターに対する人材需要は相変わらず強い。時価会計の壁が無いからだ。しかし適格な候補者が少ない。日本の大手の金融機関の地方支店にいるというが、彼らは英語が不得手で、しかも先端的な金融商品の理解力も小さい。それでも外資系金融機関は伝を辿って適格な候補者を見つけようとしているが、いずれも苦戦している。

    (2)デリバティブ

    @ デリバティブは依然として仕組み商品を作るには有効なツールである。最近では資産サイドに止まらず、負債・資本サイドにも提案する。また、デリバティブを単に商品開発やALMのツールとしてではなく、戦略的な資本政策にも使用するようだ。採用で目立ったのは、銀行・証券・プライベートバンクによる個人富裕層向け商品の開発担当者への需要であった。内資・外資を問わず、ここでは債券、預金、エクイティ、クレジット、コモディティ等の現物とデリバティブを組み合わせて、リスクがあるが高利回りを期待出来る仕組み債、仕組み預金、投信を開発する。

    A コモディティ・ビジネスも拡大している。世界的な経済の拡大と過剰流動性により、原油等の資源価格が高騰している。従って、企業にはコモディティ価格の変動リスクのヘッジニーズがあり、機関投資家や富裕層にはコモディティ商品への投資意欲がある。このマーケティングのため、主として外資系投資銀行で人材需要があった。トレーディングはロンドンやシンガポール等の海外で行われるので、日本での採用ニーズは無い。目新しいのはCCO(コモディティ担保証券)の登場で、これはAAAの格付けを持ち且つL+120bpsの利回りが期待出来ると。コモディティでの人材需要の対象は金融マンであり、商社や資源会社の出身者ではない。これは、コモディティが「資源」としてではなく「金融商品」として取り扱われているからである。

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    6.資産運用

    (1)ヘッジファンド

    @ 90年代の中旬までは、世界のヘッジファンドの運用利回りは年率20−30%も珍しくなかったが、2000年代に入って一桁台に低下している。06年では平均約12%に上昇したものの、S&P500種株価指数の収益率13.6%を下回っている。但し、ヘッジファンドにはさまざまな戦略があり、パフォーマンスにもバラツキがある(図H参照)。このような環境下でも、オルタナティブとしてのヘッジファンドへの投資需要は強く、07年1−6月の間に運用資産の総額は年率20%増加し、200兆円を越えた。
    日本でも和製ヘッジファンドの設立や資金の流入が続き、現在80本程度で、金額は1兆円に迫っている。また、大手証券会社がバックにある運用会社では、販売目的のため、多くの場合ファンド・オブ・ファンズ運用である。ここでの採用のポジションは、ファンドマネジャー(ゲートキーパー)、アナリスト、リスク管理者であった。シングルファンドでは昨年来ロング・ショート戦略が苦戦したようで、清算したファンドもあると聞く。一方では、高名な投資家が運営するファンド等、海外の運用会社による日本上陸もあり、ここでは日本株のアナリストが探されていた。

    (図H)

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    A ヘッジファンド関連で最も大きな人材需要は、日本の投資家へのセールス/マーケターであった。実際、日本でもヘッジファンドへの投資は増えつつあり、残高は10兆円を越えている(年率20%程度増えている)。投資家は、銀行・信用金庫・組合48%、個人富裕層23%、信託銀行10%、生・損保9%、年金6%となっている。最近では、年金、生保、個人富裕層(オーナー経営者)が増えており、外資系が人材を採用して販売力を強化している。強い人材需要があった。
    最近では、年金基金もPEファンドの購入を始めているが、年金コンサルタントの評価能力が追いついていないという。従って運用会社が基金の理事に対し直接説明していると。地方銀行への販売では、新BIS規制での必要資本を低く抑えるファンドが売られる。個人富裕層向けでは、投信にして証券会社を通じて売られるが、マーケターは、販売支店のスタッフを教育し、投資家向けの説明会をサポートしなければならない。これらに対応出来るマーケターの人材需要は引き続き強かった。

    B 日本のヘッジファンド運用での特徴的な動きは、海外シフトである。香港、シンガポール、ロンドン、ニューヨークへの運用拠点の移動である。これは、外国株に対する日本株の遅れに加え、投資家の関心が中国株等他のアジア株に向かっていたことにも因る。しかし、最大の問題は日本市場における自由度の小ささである。日本では投資一任契約の認可が厳しく取得コストも高い。認可を得た投資一任業者の数は過去10年間、150社前後で推移している。日本の税率が高いのはやむを得ないとしても、取引の規制が強すぎるようだ。ロング・ショートでの空売りはロンドンの方がやり易いと。これでは資金が海外へ逃げるし、オイルマネーも日本に来ない。力のあるファンドマネジャーは続々とシンガポールや香港に移住している。東京時間でもプレー出来るからだ。市場が活性化されなければ人材需要は増大しないし、有能な人材も育たない。実際、ヘッジファンド関連の人材需要はシンガポール、香港、ロンドン、ニューヨークと海外からが多かった。しかし採用は容易ではない。

    (2)投信

    @ 07年6月末の公募株式投信の純資産残高は67.9兆円で前年比47%と急増し、日本の資産運用会社の07年3月の決算も大幅に改善した(大手10社の純益は42%増えた)。従って、投信での人材需要はさまざまなポジションで強かった。今後も投信での運用は増大するが、これは、団塊世代の退職金の支払いが進むと同時に、投資のリスク資産へのシフトが強まるからである

    A 投信で人材需要は強かったのは販売会社宛て卸担当であり、ファンドマネジャーやシニアなアナリストへの人材需要は余り聞かれなかった。その他目立ったのは、投信評価会社に対するファンドの調査ニーズが拡大したこともあり、日系の評価会社が、日本だけでなくロンドンでも人材を採用していたことだ。また、現在、投信の約半分(40兆円)が、外国株、外債や外国REIT等の海外資産であるが、外貨資産への運用に強い運用会社の業績が好調であった。従ってここでの人材需要が強かった。また、海外資産の約5%(2.1兆円、前年比2.3倍)がBRICsものであるが、特に中国株のアナリストへの人材需要が、外資系の運用会社や日本の中堅以下の証券会社で目立った。変額年金や401(k)関連の人材需要は特に聞かれなかった。

    しかし、9月末に施行される金融商品取引法の規制やサブプライム問題の影響がどのようなものか注視を要する。

    (3)投資顧問

    @ 投資一任業者(138社)の投資顧問契約資産残高は、07年6月末では175.3兆円で過去最高となった。国内の公的年金、私的年金、海外年金ともに増加した。数年前のような投資顧問業の将来に対する悲観的な見方は少なくなっている。従って、外資系資産運用会社の日本法人での経営層や、年金・金融法人に対するシニアな営業担当に対する人材需要が復活していた。

    A 日本の企業年金は、これまでは海外の年金に比較してPEファンドへの投資を極端に敬遠していたが、最近ではPEファンドに対する投資を増やしている。06年末では前年比35%増えて5千億円の投資枠が設定されていると。この傾向に対して外資系のファンドや金融機関でマーケターに対する人材需要があった。
    企業年金宛てのマーケターは、従来のように、単に運用会社固有の投資哲学・投資手法を売る(当社は日本株のボトムアップ運用ではトップクラスである!)のではなく、多様化する年金の運用ニーズに応えられなければならない。即ち、広く日本株、外債、外国株、ヘッジファンド、不動産、PE、ハイブリッドの外債、CDOについて語れなければならない。「勝ち組は十数社に選別される」と言われる投資顧問業では、自社固有の運用哲学・手法の提案だけでは生き残れない。大手運用会社は運用部門より営業部門を強化し、人材を採用していた。

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    7.リテール(個人富裕層ビジネス)

    @ 団塊世代に対する退職金の支払い等により、ますます「貯蓄から投資へ」のトレンドが強まっている。日本の個人富裕層ビジネス(ここでは「リテール・ビジネス」と呼ぶが)は、二分している。即ち、「個人富裕層」は、野村証券研究所の定義に従って、大きく3千万円から1億円までの金融資産を持つ「アッパーマス層」「準富裕層」と、1億円以上の金融資産を持つ「富裕層」「超富裕層」(ウルトラリッチ)に分かれる。両者ではビジネスモデルが異なる。

    「前者」は、「個人金融部門」とか「プライオリティバンク」と呼ばれる。顧客は「合理的」な投資行動をする投資家(約1千万世帯ある)で、高リスク・高リターンの投信や債券(仕組み債を含む)を購入する。金融機関はこのマーケットを「マス」として戦略を構築し推進する。従ってここでの人材採用は、内資・外資を問わず、リテール部門の「指揮官」や戦略・企画の策定や推進のためのシニアスタッフであった。「指揮官」は、戦略や商品戦略の策定と執行、組織作り、販売員の報酬制度の改定、士気高揚、顧客の金融機関の販売サポート等、あらゆる職責を「統括」する。しかしこのような職責は日本の金融リテールでは新しく、適格な人材が少ない。各社とも採用で大苦戦していた。また、営業部門での顧客開拓の担当者も探されていた。しかし一定以上の顧客ベースを持つプロは限られており、各社が激しく取り合いしていた。「後者」をターゲットとする「プライベートバンク」も業容を拡大し、人材を採用していた。ここでの顧客は、IPOを実現したオーナー経営者や土地を含めた巨額の資産家で、一部は事業法人取引の顧客でもある。プライベートバンカーの職責は、これらの大口資産家との取引の獲得やメンテナンスである。人材需要の対象はそれらの投資家と個人的な関係を持つプロであるが、日本には本格的なプライベートバンカーが少ないため、「前者」での投資家担当が採用されていた。

    A リテール・ビジネスに対しては、メガバンク、大手の証券会社、外資系の銀行、内外の資産運用会社の担当部門が、それぞれの戦略を掲げて参入し、組織の拡大を図っていた。今後、勝ち組と負け組に峻別されるという。苦戦している外資は、相変わらず海外での成功体験をそのまま日本に持ち込もうとしており、上手く行っていない日本の金融機関ではこのビジネスに対するコミットメントが定まっていない。即ち、メガバンクの首脳の一部は、いまだに「銀行には企業とATMの個人顧客しかいない」と考えており、「富裕層」という別のマーケットが存在することを認めていない。

    B 外資系投資銀行は、高度の商品開発力を駆使して、仕組み債や仕組み預金、外債やBRICsの株を含む投資信託(外債やBRICsの株を含む)等、さまざまな個人富裕層向け金融商品を開発し販売会社に卸している。この開発者に対する人材需要があった。また、保険商品に対しては、07年12月での保険商品の窓販の全面解禁もあり、銀行が販売体制を強化している。窓口担当者を外部採用していた。また、この動きに対応し外資系保険会社で、金融機関への卸担当等さまざまな人材需要があった。

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    8.その他

    (1) セルサイド・アナリスト

    日本株のアナリストに対する逆風が強まっている。株式手数料の低下によるアナリストへの人材需要の縮小傾向に加え、活動の自由度も小さくなっていると。即ち、強い収益プレッシャーにより自己の分析に基づいたレポートが書けず、また、ウォールの厳格化で面白い仕事が出来なくなっているという。従って、力のあるアナリストは転向している。投資銀行部門やヘッジファンド、一般事業法人の財務部へ移っている。しかし一方で、事業法人取引の拡大戦略に合わせ、アナリストの数を増やす大手の投資銀行もあった。また、外資系金融機関では日本株での産業別戦略にバラツキがあり、戦略的な分野をカバーするランキングを持つアナリストの採用もあった。また、上記分析の通り、クレジットリスクの拡大に合わせて、クレジット・アナリストへの人材需要が強まっており、外資同士の引き抜き合戦があった。若手のアナリストに対しては、相変わらずすべての分野、即ち、セルサイド、バイサイド、ヘッジファンド等で需要が強い。高学歴と英語力と基本的な知識・経験のある若者は常に求められていた。

    (2) コンプライアンス

    9月末から「金融証券取引法」が施行される、これに対応する人材は基本的に採用済みであるが、今後具体的な問題が発生するのに合わせて、新たな人材需要も起こると考えられる。

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    第二章 「金融転職市場の創設」の提言

    提言
    当社(ESP)は「金融転職市場」の創設を提言します。

    T.「提言」の趣旨

    ・確かに、最近では金融マンの転職が頻繁に行われるようになりました。金融マンは「キャリア構築」を目指して職場を変え、金融機関は「組織の強化」のため外部採用を行っています。しかし、「転職市場」が債券取引や株式引受けのように「市場」としての要件を備えていないため、様々な不都合が起こっています。
    当社は、日本の金融ビジネスが世界で存在感を持ち、主導的な役割を果たすためには金融人材の育成が肝要であり、そのためには「金融転職市場」の創設が喫緊であると考えています。

    ・当社の代表である小溝勝信は、18年余りに亘り従事している金融ビジネスを対象とするエグゼクティブ・サーチ・コンサルティングを通じて、金融転職市場の整備を訴えてきましたが、この度、その経験や主張の集大成として「金融転職市場の創設」を提言することと致しました。「提言」の内容が多岐に亘りますので、順次、具体的に提案致します。

    ・当社はシンクタンクではありません。クライアントである金融機関からアサインメントを頂き、金融のプロと日々コミュニケーションを取っている「エグゼクティブ・サーチ・ファーム」です。その活動を通じて得た「生の情報」に基づき「提言」したいと思います。
    また当社は、この「提言」が「十分に的を射ている」と断言している訳ではありません。しかし、当社はこの「提言」を行うに最も近い立場にあると確信しています。
    この「提言」が皆様の議論の「叩き台」になれば嬉しく思います。

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    U.「提言」の内容

    1.「市場としての要件」を整備・確立しなければならない。
    「金融転職市場」は、他の市場と同じく「市場としての要件」を備えていなければなりません。

    (1) 参加者の「志」
    • 市場参加者、即ち、雇用者(金融機関)、被雇用者(個人)、仲介業者(人材紹介会 社)のそれぞれが、転職市場の創設と発展のための「志」を保持していなければなりません。
    (2) 「ルール」と「慣行」
    • 他の市場と同じく、「金融転職市場」においても「募集」「応募」「採用」「仲介」でフェアな「ルール」や「慣行」が確立されていなければなりません。
    • 採用・雇用条件には合理性、市場性、透明性、公平性、納得性が必要です。特に「解雇権の乱用」等の労働法違反を行ってはなりません。
    • 個人には「職業選択の自由」がありますが、それを盾に、オッファーレターにサインした後に入社を取り止めたり、他社へ転職するようなことをしてはいけません。
    • 仲介業者も、違法行為を行わないことは勿論ですが、転職市場の整備のために努力が求められます。
    • ルールの違反者やモラルを欠く行為に対しては、罰則が課されマーケットから指弾されなければなりません。
    • 競合他社への転職禁止規定、転職後の人材引き抜き禁止規定、転職の際持ち出しが禁じられる秘密情報の定義等に関し、統一的な基準を設定する必要があります。また、「金融転職市場」を活性化するという要請と、「個人情報保護法」「プライバシーの侵害禁止」等の法的規範との関係を、より明確にする必要があると考えています。
    (3) 「流動性」
    • 金融人材市場には十分な「流動性」がなければならない。
    • 金融機関の組織強化のためには「外部採用」が必須であり、個人もキャリア構築のためには十分な「転職の機会」が必要です。
    • 市場に「流動性」が無ければ、昔の「総会屋」事件のように、組織に無用な忠誠を 尽くし不正を重ねる人が出てきます。
    (4) 「一物一価」の原則
    • 転職市場にも「一物一価」の原則が機能していなければならない。
    • 人材市場のプライスメカニズム(報酬額決定システム)は、債券市場等のように価格が瞬時に収斂するものではありません。しかし、例えば、35歳で年収が13百万円の邦銀マンが、トップクラスの外資系金融機関に転職したら40百万円になるのでは、「市場」とは言えません。
    (5) 「情報」
    • 市場参加者に対して人材マーケットに関する十分な量と質の「情報」が供給されな ければならない。
    • 金融機関が「開かれた人事政策」を遂行するため、また、個人が「キャリア構築」を進めるため、人材需給に関する十分な情報が入手出来なければなりません。
    • 当社代表の小溝勝信は、1994年以来半年毎に「金融人材マーケット・レポート」 (和文及び英文)を作成して来ましたが、同レポートは、現在では8000人余りの内外金融機関の経営者、金融ビジネスのプロ、マスコミ各社等に配布されています。
    (6) 「教育・啓蒙」
    • 金融はグローバル・ビジネスである」という認識を確認し、金融機関の経営者はグローバル・スタンダードに沿った経営や人事政策を遂行しなければなりません。このため、特に日本の金融機関の経営者には、グローバル・スタンダードに基づく「啓蒙」の場が必要であると考えています。
    • 個人に対しても「キャリア構築」や「スキルアップ」のための教育機会が与えられなければなりません。
    • 人材紹介会社も、業務遂行に必要な様々な知識を取得・蓄積しなければなりません。
    (7) 「日本文化」と「転職市場」のあり方
    • 日本は独自の文化を有しており、企業文化や転職市場のあり方は、日本文化と分断 してとらえることは出来ません。誇るべき「日本文化」を保持し育みながら、世界 に通用する「金融転職市場」を創設するにはどうしたらよいか、追究したいと考え ています。
    2. 「転職」で起こっている様々な「不適切」な出来事の例

    (1)「ルール・マナー」違反が頻発しています。
    部下の転職が不愉快だからといって、匿名で転職先に悪意の情報を流す上司がいます。これは卑怯な行為です。また、辞表を提出した職員を引きとめようとして、異常なまでの工作が行われています。

    (2)「労働法」が無視されています。
    外資系金融機関に「解雇権の乱用」と疑われるケースが見られます。また、本国での雇用条件をそのまま東京支店に適用しているところがあります。「労働法」は国内強制法規ですから、直接海外での慣行を持ち込んだり、本社の社内規定をそのまま東京支店に適用することは出来ません。

    (3)根拠の無い「報酬額」が主張されています。
    「市場化された労働力」の対価は、「自身が創出する本源的付加価値と市場の需給関係」で決定されるのが原則です。しかし、「要求が合理的かどうかに関わらず、高額の報酬が欲しい」と駄々をこねる金融マンが数多くいます。これは「市場」では意味を持ちません。

    (4) 人材市場の「情報」が不十分なため、間違った採用努力や不幸な転職が繰り返されています。
    一部の金融機関の採用担当者が、市場には存在しない「完全無欠」の候補者を求めたり、市場水準より極端に低い年収条件で一流の人材を採用しようとしています。これは時間の浪費です。また、金融ビジネスの変化や人材の需給に関する情報を持たずに、誤った転職をする金融マンがたくさんいます。

    (5) 金融機関(採用者)と人材紹介会社(仲介業者)の間に、不公平な「サーチ契約」が結ばれています。
    大手の外資系金融機関は、海外でグローバル・サーチファームに対して対価(リテーナー・フィー)を支払い、人材のサーチを依頼しています。一部の外資系金融機関が、自社に一方的に有利なサーチ条件を日本のサーチファームに強いています。これが日本の人材紹介会社の成長を阻害しています。人材紹介業者が適正に育たなければ「金融転職市場」の創設は困難です。
    また、一部の外人ヘッドハンターのマナーの悪さも指摘されています。

    3. 参加者の意識と行動原理をグローバル化しなければならない。
    金融はグローバル・ビジネスです。従って、「金融転職市場」の整備・創設と市場参加者の意識・行動規範のグローバル化は、表裏一体の関係にあります。

    (1)日本の金融機関の経営・人事政策
    日本の金融機関の経営や人事政策は、依然として「年功序列」「企業一家主義」と言う日本的経営を維持しています(「人を大切にする」と言うのであれば「終身雇用制」を維持すべきですが、これは壊れています)。また邦銀には「資本コスト経営」という考え方がありません。従ってCFOやトレジャラーのポストがありません。即ち、邦銀経営はグローバル・スタンダードから大きく乖離しています。しかも彼らにはその認識や危機感がありません。従って日本の金融機関は、グローバルに通用する経営者やプロが育つ組織とは言えません。
    今後、その具体的な例・原因・改善策を提案致していきます。

    (2)外資系金融機関の経営・人事政策
    海外における外資系金融機関の人事・報酬制度は、(一応)グローバル・スタンダードに沿ったものと考えられます。しかし、東京支店や日本法人の現状はそうとも言えません。
    外資系金融機関の経営・人事政策・報酬制度の良い点・悪い点を分析していきます。

    (3)邦銀の金融マンの意識と行動原理
    日本の金融機関の金融マンは、長らく閉鎖的な組織に閉じ込められて来ました。従って、所謂「世間知らず」に陥っています。彼らには「報酬は自らが創出する付加価値に連動する」という意識がありません。何故か「自分は高学歴でエリート銀行員だから、高額の報酬は当然だ」と主張します。当社は、これを「ラスコーリニコフ現象」と呼んでいます。

    (4)外資系金融機関のプロの意識と行動原理
    確かに外資系金融機関のプロには「市場原理」に対する理解があります。しかし多くの場合「報酬至上主義」であり、「金融マンの最大のミッションは顧客の企業価値増大である」との認識が欠けていると思われます。従って、日本の金融機関の人々から「彼らは高い専門性を持つ『プロ』かも知れないが、『職人』に過ぎない。マネジメントの人も『日本の金融ビジネスの改善に貢献したい』と、志を持って働いているとは思えない。従って外資系金融機関には経営者がいない」と非難されることになります。

    (5)人材紹介会社の規範
    海外市場では高い評価を得ている「人材サーチ・ビジネス」は、日本では、残念ながら、その評価を得ていません。これには人材紹介会社自身の努力不足もあります。実際、一部に「不適切」な活動をする業者もいます。しかし、一部の外資系金融機関が強いるサーチ契約での理不尽なハンズオフ条件の改善等、人材紹介業においてもフェアな環境が整えられる必要があります。

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    V.アクションプラン

    下記のアクションプランを実行します。

    (1)「提言」の推進と提案内容の実現
    「提言」の詳細と分析を順次発表していきます。
    このため、内外の金融機関の経営者、金融のプロ、弁護士、シンクタンク、マスコミ、その他多くの識者のご協力をお願いする予定です。また、海外市場の情報も集めます。

    (2)転職の実態調査
    「金融マンの意識調査」を行う予定です。これまでも数年毎にアンケートを行ってきました。アンケートでは、金融マンは「何のために働いているのか」「転職では何を重視しているか」「金融のグローバル化をどのように受け止めているか」等を聞きます。回答結果に基づき、日本の金融機関の経営者や金融マン、外資系のマネジメントやプロの意識を分析します。また、その歴史的変遷と要因を分析します。

    (3)「提言」をマスコミや講演会等で発表し、マーケットからの批判を頂きます。

    (4)機会があれば、公的な機関にも「提言」したいと考えています。

    (5)「提言」の実現のため、海外ビジネススクールとの提携や学校の設立・提携まで視野に入れています。

    (6)「提言」作成のためにNPOとして「ESP金融転職市場創設委員会(仮称)」の設立を計画しています。

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    おわりに
    7月「サブプライムローン」問題が勃発し、世界の金融界を大混乱に陥れている。これには貸し手責任だけでなく、証券化の手法や格付けのあり方にも問題があったと言われている。加えて、世界的な「過剰流動性」と「金融のグローバル化」が、問題の深刻さを増幅したことは間違いない。世界の金融機関が大きな打撃を受ける中で、日本の金融機関への直接的な影響は「限定的」とされている。しかし、これはいわゆる「結果オーライ」であり、日本の金融ビジネスがその域にまで達していなかったことの証左である。「過剰流動性」と「グローバル化」は、好むと好まざるとに関わらず現在の世界経済の潮流である。日本の金融ビジネスが世界でそれなりの役割を果たすべきであれば、この「潮流」を正面に見据えて対応しなければならない。そして「リスクを取らなければ付加価値は創造されないし、リスクに晒されるからリスクマネジメント能力が蓄積される」という資本主義の「原理」を忘れてはならないと思う。

    以上

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    ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成19年8月31日現在)
    金融ビジネス
    プロダクト
    投資銀行ビジネス
    8
    14.5
    カバレッジ、M&A、引受け、IPO
    買収・投資ファンド
    6
    10.9
    バイアウト、プリンシパル・インベストメント、PIPEs
    ハイマージン・ファイナンス
    6
    10.9
    LBOファイナンス、メザニン、ストラクチャード・ファイナンス
    クレジット投資
    12
    21.8
    ファイナンスの証券化、ローン・トレーディング
    CDS、CDO/CLO
    事業法人ビジネスとデリバティブ
    7
    12.7
    中小資本企業取引とデリバティブ
    資産運用
    9
    16.4
    ヘッジファンド、投信・投資顧問
    リテール
    5
    9.2
    個人富裕層宛てビジネス
    その他
    2
    3.6
    アナリストコンプライアンス等
    合計
    55
    100.0
     


    筆者のプロフィール:
    小溝 勝信(こみぞ かつのぶ)
    1968年東京大学教養学部国際関係論分科を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行、主として国際部門に従事した。1984年に外銀に転じ、 ファースト・シカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任した。人材コンサルティングに転ずるため、1989年米国の大手ファームの一つであるホイットニー・グループ日本支社に入社し、副支社長に就任した。1993年、日本型のエグゼクティブ・サーチの創設を目指してヘッズジャパンに転じ、金融部門マネジング・ディレクターに就任した。2004年エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立した。
    このレポートは、筆者がヘッズジャパンで1994年以来半年毎に報告していた「外資系金融機関の最近の人事事情について」の連続版である。

    エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のプロフィール:
    小溝勝信が長年の経験と主張の集大成として2004年に設立した。日本の金融人材市場に、初めての、本格的な、日本版の「エグゼクティブ・サーチ・コンサルティング」の創設を志す。
    詳細はホーム・ページ をご参照頂きたい。