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月例レポート

平成20年12月15日

緊急報告−外資系金融機関におけるリストラの現況

エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社
代表取締役  小溝 勝信

米国で勃発したサブプライム問題は、その後、世界的な金融危機を引き起こしただけでなく、実体経済まで大混乱に巻き込んでいる。このため、外資系金融機関は、グローバル戦略に基づいて日本法人も「劇的」に縮小している。まさに「日本から撤退する」勢いである。その様相を緊急報告する。

1. リストラ人数の推定

(1)日本の外資系金融機関は「巨大なリストラのツナミ」に3回襲われると考えられる。
  ・第1回目(07年8月のパリバショックから08年9月のリーマンショック前まで)
   −全体で、1109人(ESPの「レポート」−8で報告の通り)
     これは、外資系金融機関の総従業員数の4%に相当する。
     不動産証券化とクレジット・ビジネスのプロが大半であり、「対岸の火事」という認識が強かった。

  ・第2回目(リーマンショックから12月半ばまで)
   −フロントオフィスで、1531人。全体で、2000人以上
     リーマンショックにより「米国投資銀行モデル」の崩壊が確認されたため、世界の金融機関が危機に
     陥り、リストラは、不動産証券化とクレジット・ビジネスにとどまらず全ての金融ビジネスに波及した。
     世界でも大掛かりなリストラはリーマンショック以降に起こっている
   −従って、第1回と第2回のリストラ数の合計は、全体で、3100人となる。
     これは、外資系金融機関の総従業員数の11%に相当する。

  ・第3回目(12月半ばから09年前半までの予想)
   −今後、更に大規模なリストラが行なわれる可能性が高い。最悪、全体で、1300人がリストラされる
     と予想される。
   −従って、07年8月から09年前半までの間で、日本における外資系金融機関が行う
     リストラ数の合計は、全体で、4400人となる。
     これは外資系金融機関の総従業員数の16%に相当する。

(2) 第2回目の「リストラ」の定義は下記の通りである。
  定義−1: リストラ人数の計算方法
    主要な外資系金融機関の「フロントオフィス」を対象とし、12月15日現在当社が各社別に「確認」し
    た、または「確からしい」と判定したリストラ人数の合計である(但し一部雇用関係 は残っている)。
    また、「フロントオフィス」でのリストラ数から、「ミドルオフィスとバックオフィス」を含む「全体」でのリスト
    ラ数を推計した。

  定義−2: リストラの定義(第1回目と同じ)
  下記の@ABをリストラと定義する。
    @ 会社の一方的な意思により雇用契約を解除した場合。解雇には懲戒解雇と整理解雇がある。整理
    解雇では退職の条件が提示される。また、「期限を定めた雇用契約」を会社側が延長しない場合も含
    まれる。
    A 合意に基づき雇用契約を解除した場合。即ち、(a)人事部や上司が退職勧奨する従業員に対して
    パッケージ(割増し退職金の支払い、再就職先の紹介等)を提示して、合意に基づき退職させる方法
    と、(b)会社が人員削減の予定数と有利なパッケージを全従業員に告知して、早期退職者を募集する
    方法がある。
    B 会社側が「期待した最低限の貢献をしていない」と評価した従業員に対し、退職パッケージを提示
    せず自主的に退職を促した場合。また、リストラの対象となっていたが、他社からのオファーがあり自
    主的に退職した場合もある。

  定義−3: 外資系金融機関の定義と範囲(第1回目と同じ)
    ・外資系金融機関とは、外国資本が所有する銀行、証券会社、資産運用会社、直系の不動産関連会
    社(住宅ローン子会社を含む)、ヘッジファンドの運用会社、プライベート・エクイティ等の投資会社を
    含む。生命保険・損害保険、消費者金融会社、ノンバンク、コンサルティング会社は含まれない。
    ・外資系金融機関の範囲とは、
    @ 元々日本資本であったが、一時外資系ファンドや外資系金融機関が所有した日本の中堅の金融
    機関は含まれない。
    A 日興コーディアル証券は、日本の金融機関として経営されているため含まれない。
    Bリーマンブラザーズ証券の従業員の内、野村證券に入社しなかった人、または一旦野村證券に雇
    用されたがその後退職した人は、リストラ数に含まれる。
    ・この分析では、外資系金融機関に勤務する従業員総数を28,000人とした。これは「レポート」−8
    で推計した従業員数27,819人に基づく。日本における銀行・証券会社・資産運用会社等の従業員
    総数である498,856人(06年10月1日時点での「事業所・企業統計調査」の人数である。保険業や
    消費者信用会社を除く)の5.6%である。

  定義−4: 各部門のビジネスの定義(組織のあり方は各社により異なる)
  投資銀行部門:
    カバレッジ、資本市場ビジネス、M&A等通常の投資銀行ビジネスに加え、プライベート・エクイティ、
    不動産投資や通常の投資銀行ビジネスでの自己資金投資を含む。
  グローバル・マーケッツ部門(市場部門):
    通常の債券及び株式ビジネスに加え、不動産証券化、LBOファイナンス、クレジット関連、ヘッジファ
    ンド・セールス、債券・株式ビジネスでの自己資金投資を含む。
  資産運用部門:
    伝統的な資産運用、ヘッジファンド運用を含む。
  個人富裕層部門:
    超富裕層と富裕層宛てビジネスを含む。
  コマーシャル・バンキング部門:
    商業銀行での法人宛て金融、リテール・ビジネスを含む。

2. 第2回目のリストラの分析(フロントオフィスのみ)

(1)地域別分析
地域別分析
  ・第1回目のリストラでは米系金融機関が全体の77.6%を占めていたが、第2回目では64.1%に低
   下している。リストラが欧州系に伝播していることを示している。
  ・高度な金融ビジネスを行う投資銀行ほど厳しいリストラを行なっている。
  ・グローバル・ベースで大きな損害を蒙った金融機関が、日本においても厳しいリストラを行なってい
   る。

(2)部分別分析
地域別分析
* 全体では、
  ・第1回目と同様に、グローバル・マーケッツ部門で最も厳しいリストラが行なわれている。
  ・資産運用部門でのリストラでは、第1回目と比較して総リストラ数に占める比率及び人数ともに増えて
   いる。
  ・特定の外資系銀行のコマーシャル・バンキング部門でのリストラが高水準で続いている。
  ・投資銀行部門でのリストラでは、第1回目と比較してリストラ数は増えているが、総リストラ数に対す
   る比率は同程度である。
  ・高いレバレッジを掛けるビジネス、プリンシパル投資、証券化等で内容が複雑化しリスクが分かりにく
   い運用商品のセールス、不動産関連やクレジットもの関連等が、リストラの主なターゲットとなってい
   る。

* 投資銀行部門では、
  カバレッジ担当のリストラが進んだが、M&A担当は大きな対象となっていない。日本ではM&Aの人
  材需要は早晩回復すると期待される。
  今後は、グローバル・ネットワークと強い提案力を持つ数社の大手投資銀行と、ニッチにフォーカスする
  ブティック・ファームが生き残ると考えられる。

* グローバル・マーケッツ部門(市場部門)では、
  第1回に引き続きこの部門でのリストラが最も厳しい。不動産証券化関連、クレジット関連、ストラクチャ
  ード・ファイナンス、高いレバレッジを掛けたビジネス、ヘッジファンド・セールス等に加え、一般の債券・
  株式ビジネスでもリストラが行なわれている。特に自己資金による投資が崩壊している。

* 資産運用部門では、
  世界的な株式市場の下落で運用資産価値が急激に下落しており、運用会社の受取りフィーが激減して
  いる。また、パフォーマンスが悪いため資金を引き揚げられたり、ファイナンスを確保できず閉鎖してい
  るヘッジファンドがある。また、内容が不透明なファンドへの投資需要が減退している。これらが資産運
  用部門でのリストラを大きくしている。

* 個人富裕層部門では、
  顧客からのクレーム対応に忙殺されているが、大掛かりなリストラは起こっていない。日本では、プライ
  ベート・バンクは今後の成長分野と考えられている。

* コマーシャル・バンキング部門では、
  特定の外資系銀行が大掛かりなリストラを進めている。

3. 第3回目のリストラの予想

(1)大手の外資系金融機関では、09年前半に、更に大規模なリストラが起こると懸念される。その要因としては、
@シティバンクによるグローバルなリストラの進展、Aモルガンスタンレー日本法人と三菱UFJ証券の提携・合併の影響、BBOAとメリルリンチの合併によるリストラ、C野村證券がリーマンブラザーズから雇用した従業員のリストラ、D大手の資産運用会社でのいっそうのリストラ、E欧州系ユニバーサル・バンクによる投資銀行ビジネスからの撤退・縮小に伴うリストラ、Fヘッジファンドやプライベート・エクイティファンドの清算によるいっそうのリストラ、更に、G08年度通年決算と各自の実績に対するアニュアル・レビューに基づくリストラ等が考えられる。
当社は、全体で1300人程度がリストラされると計算している。

(2)また、引き続き09年でも実体経済や金融ビジネスの環境の悪化が予想されるので、外資系金融機関はいっそうスリム化すると考えられる。
サブプライム関連での損失は、ある研究機関によれば、総額300兆円に及ぶが、現在まで100兆円が処理されたに過ぎず、まだ2/3が残っている。それに加え、米国自動車ビッグスリーの破産法適用や、信用収縮による実態経済の悪化による影響が加われば、金融人材市場への影響は計り知れない。

4. 当社の提案

(1)上記の通り、外資系金融機関は「日本から撤退する」勢いである。これは「一部の金融業態が日本市場から消滅するだけだ」とか、まして「外資系の高給取りが自らの不始末でクビになっただけだ」という短絡的なものではない。言うまでも無く、金融機関は「産業活動を金融面から支える」という重要な役割を担っている。日本における外資系金融機関は、1980年代中旬までは「限界的な存在」であったが、この15−20年間大きな役割を果してきた。今回の外資系金融機関の大幅縮小・撤退により、彼らがこれまで日本市場にもたらしてきた「プラスの効果」も縮小することになる。日本の金融機関が代わってその役割を果たせない以上、日本の金融ビジネスにとり重大な問題だと考えている。

しかもより深刻な問題は、このリストラの動きが、日本の金融ビジネス、日本の金融機関、日本の金融人材市場の後進性に起因する「日本パッシング」と重なっていることである。この結果日本の金融ビジネスは、他の国際金融市場と比較してますます遅れをとることになる。

(2)新しい金融ビジネスモデルの構築の要請
「米国投資銀行モデル」の崩壊後、「新しい世界の金融ビジネスモデル」が構築されなければならない。既にさまざまな議論があるが、いずれも体系立っていない。即ち、「これまでの金融ビジネスモデルの否定」に止まっており、議論の背後に「新しい資本主義の哲学やイデオロギー」が構築されていない。曰く「昔のオーソドックスな金融ビジネスに戻るだろう」とか「『リスクを取らなければリターンは無い』という資本主義の原理は不変である」と言った程度である。金融は「上部構造」で、「下部構造(実体経済)」の変化に規定されて変化する。それが具体的にどのようなものかを議論して欲しい。

(3)「金融転職市場」の創設
「金融人材市場の改革」を提言している当社は、新しい金融ビジネスモデルがどのようなものであろうと「金融はグローバル・ビジネス」であるから、それに沿って「転職市場」が創設されなければならないと主張している。今回のリストラの最大の問題は、規模の大きさではなく、リストラされた金融人材が新たな職場を探すための「転職市場」というインフラが整備されていないことだ。

以上

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