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平成17年12月 第3号 (日本語版) 〜急増する金融人材需要〜
エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社
代表取締役 小溝 勝信 |
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- 目次 - 第一章 金融プロダクト別様相 T.プロダクト別人材需要(件数ベース) U.プロダクト別様相 1.投資銀行ビジネス
ディストレス・ビジネス
M&A
投資銀行カバレッジと引受 2.投資ビジネス
ディストレス・ビジネス
企業再生ビジネス
プライベート・エクイティ
プリンシパル・インベストメント
「M&A支援ファンド」「敵対的買収防衛ファンド」等
アクティビスト・ファンド
ベンチャー・キャピタル
不動産投資ファンド 3.資産運用ビジネス
伝統的資産運用ビジネス
オルターナティブ投資 クレジットリスクとは何かを理解出来る人材
クレジットリスクの高いファイナンスが出来る人材
クレジットリスクをトレーディング出来る人材
クレジットリスクの分析者としての人材 5.ファイナンス
MSCB
LBO・MBOファイナンス
アセット・ファイナンス
メザニン・劣後ローン
資産担保証券(ABS) 8.株式
第二章 金融機関別様相 (概観)
(人材需要) (概観)
(人材需要) |
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| はじめに バブル崩壊後の負の遺産であった設備、雇用、債務の三つの過剰が解消し、日本企業の業績は着実に回復している。 また、メガバンクは十年余続いた不良債権問題から脱却し、経営のターゲットを健全性から収益性に移している。 これらを受けて昨年の株価は約40%値上がりした。このように05年は日本経済の大きな転換点であった。 この中で、日本の金融人材市場は量的に拡大し、質的に変化した。 この「レポート」は、筆者が前職のヘッズジャパンで94年に執筆を開始し、 以来半年毎に作成してきた「金融人材レポート」の当・新会社における連続版である。今回は新会社で第3回目となる。 05年後半の様相をご説明する。
(1)メガバンクによる「寡占化」
(2)「大買収時代」
(3)「ファンド資本主義」
(4)「ストラクチャード・ファイナンスとクレジットリスク」
(5)その他 |
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第一章 金融プロダクト別様相
I.プロダクト別人材需要(件数ベース) *リテーナー・ベースのものとコンティンジェンシー・ベースのものを含む。
*クライアントは外資系金融機関、日本の金融機関、ファンド等も含む。
*シニアなポジションが大半である。
*マーケター、ストラクチャラー、トレーダー、運用者、ミドルオフィス等を含む。 |
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| ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成17年12月31日現在) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| II.プロダクト別様相
05年の日本の資本市場は、企業業績の急回復を背景に「大買収時代の幕開け」と評価されたほど活気を帯びていた。
象徴的には、ライブドアとフジテレビジョンによるニッポン放送の争奪戦や楽天によるTBS株買い集め等の敵対的買収であった。
この動きに対応するため多くの上場企業が買収防衛策を導入した。従って外資系金融機関及び日本の証券会社の投資銀行部門は多忙
を極めていた。人材需要も強いものがあった。しかし求められる人材は、スキルを持つ人ではなく「企業価値」の増大を支援したい
という強い理念・志を持つ者であった。年明けに勃発したライブドアの不祥事のように、資本市場の欠陥を逆手に取り、あたかも企
業価値が上がっているとの幻想を与えて収益を得るビジネスであってはならない。
M&A
・「投資ファンドが介在する」M&Aが増えている。
データによれば、ファンドが介在したM&Aは総額約2兆円でM&A全体の10%に及ぶ。件数は前年比21%増の358件となった。
特に、MBOではファンドの応援を得るケースが多く、場合によってはファンドが主導するMBOも増えているようだ。M&Aの候補者
の要件に、ファンドとの人脈を持つ人が含まれるようになった。逆に、ファンドでの採用条件でも内外金融機関のM&Aグループとの人
脈を持つ人が有利となっている。「ファンド」の様相は4.投資ビジネスで報告する。
日本の企業は長期に亘り金融不安に苦しめられてきた。そして苦渋のリストラを敢行して負債を減らした。結果大きな現預金を持つに至 った。これは逆に「資産や資本の効率的な運用を行っていない」とされ、アクティビスト・ファンドの標的となった。内外の投資銀行は 「敵対的買収からの防衛」や「資本政策の適正化」のためのアドバイスを求められた。このカバレッジ・オフィサーの人材需要は、意外 にも、特に日本のメガバンクから発生していた。企業の資本政策全般についてアドバイザリーを行い、関連証券会社を含めて商機にした いと考えている。実際、マーケットの「アンケート」でもメインバンクはこのアドバイザリーを期待されていると。従ってメガバンクに は資本政策の提案に強いインベストメント・バンカーに対する人材需要があった。また、今後のファイナンス需要では、負債比率を上げ る必要からエクイティよりデットのファイナンスが多くなると言われている。実際、05年にはエクイティ・ファイナンスの総額は4−5 兆円程度で、前年比25%程度減少している。 05年での企業の新規上場は158社(前年比17社減)あり、金額は7631億円(前年比44%減)であった。ネット証券を含め大 小25の証券会社が支援した。しかしネット証券では甘い引受審査があり、市場で非難された。従って人材採用は概してうまくいかなか った。これは、小口であってもIPOは投資銀行業務であり、個人のデイ・トレーダーを対象にするネット証券のビジネスではないとい う評価による。 2.投資ビジネス このレポートで言う「投資ビジネス」には、不良債権の購入・転売・回収(ディストレス・ビジネス)、企業再生のためのファンド、地 域再生のためのファンド、不動産ファンド(私募ファンドやREIT)、「正統」のプライベート・エクイティ、「一般」の投資ファン ド、スティール・パートナーズ等のアクティビスト・ファンド、証券会社が行うプリンシパル・インベストメント、及びベンチャー・キャ ピタルを含む。即ち、自らの投資方針を持ち、資金を投下し、加工し、回収するビジネスを指す。
しかし競争は激烈化しており、高い収益を上げることは難しくなっている。成功するためには、優良な投資案件を発掘する力(ソーシング)、
経営力(ハンズオンによる経営の刷新)、加工する力(リストラの執行や付加価値を持ち込み資産・企業価値を上げる)、回収する力(売却や
IPO等による出口戦略の実行)を兼ね備えていなければならない。今後はプレーヤーの能力に対する要請が厳しくなる。ある識者によれば現
在50−100本と言われる国内の主要ファンドは「数年以内に7割が消える」と。
現時点での日本のプライベート・エクイティにとって一番重要な戦略は、ソーシング力の強化である。従って人材需要の対象は、自ら投資可能 先への人脈を持つと同時にソーシング先であるメガバンクや投資銀行のM&A部門とのコネを持つプロである。要は、ソーシングにおいてビッ ド合戦を回避し、相対で案件を発掘出来るプロが求められている。また、投資後では投資先の人々と折衝(コミュニケーション能力)し、経営 ・財務・ビジネス改革(経営力)を行う力のある人。よく指摘されることは、この能力はM&Aの能力とは別のものであるということだ。M& Aで実績のあるプロがプライベート・エクイティに転入して間違いを起こすことがある。プライベート・エクイティでは双方の要請に応えられ る能力のあるプロが求められている。 次に、投資の可否の判断や投資後のプロセスを担当するエグゼキューション(執行)担当の若手に対する需要がある。デューディリジェンス( 会計、税務、法務、人材)、キャッシュフローの予想、バリュエーションや財務リストラ、組織作り等を進める。会計事務所や人事コンサル ティング会社等の専門会社との共同作業で進める。プライベート・エクイティ・ファームでは、このような能力のある若手に対する人材需要は 常にある。理由の一つは、最近、若手のエグゼキューション担当者の転職が目立つことである。これは、プライベート・エクイティはファンド を組成して、投資先を発掘し、売却が完了するまでに5−7年を要する。30歳代前半の人にとってこの年月は長すぎるようだ。確かに時代の 変化が急で、キャリアのサイクルが短くなっている。従って、勝負の早いアクティビスト・ファンドや証券系のプリンシパル・インベストメン トの方が好まれる。
一方、現在銀行の不良債権処理から出てくる不動産は少なくなった。05年の基準地価も15年ぶりに東京23区が上昇に転じ、都心部地価の 反転が鮮明になった。従って、収益的な物件の取得は難しく、多くはビッド合戦で、都心の優良オフィスビルの投資キャップレートは3%台に 低下している。また収益源の一つであったゴルフ場への投資は回収期を迎えており、各社とも新たな投資対象の発見に腐心している。不動産ビ ジネスが「バブル」と言われる所以である。 しかし筆者は「不動産ビジネスのバブル論」には組みしない。日本の不動産時価総額は1400兆円あり、全国の不動産価格はいまだ下降傾向 にある。バブル化しているのは、東京や大阪の一部でのオフィスビルや一部の商業施設に過ぎない。バブルと諦めるには早過ぎる。日本のGD Pが2%程度しか拡大しない環境下で、人気のある都心の優良オフィスビルの価格がヒートアップする一方、過疎化したオフィスの賃借料は下 がる。一部でバブルが起きるだけである。不動産ビジネスが底堅く拡大するためには、今後の不動産投資は付加価値を創出する「事業」を展開 しなければならない。
不動産のノンリコース・ローンは日本の信託銀行、メガバンク、外資系銀行、国内外の証券会社がレンダーとして依然として積極的である。融 資額は大手行合計で4兆円台にのぼり地銀も追随している。不動産のノンリコース・ローンの推進・エグゼキューションの人材需要は邦銀を中 心にまだ強い。 不動産ファンドの出口は国内機関投資家、年金、J−REIT、海外投資家等であるが、オルターナティブ投資として順調に広がりを見せてい る。不動産投資の出口作戦における人材需要も堅調である。特に外国の資本が海外不動産市況のバブル化、利回りの悪化を懸念して日本への投 資を始めている。その中に運用利回りが安定的であれば低い利回りのものでも長期保有を考える外資も出ていると。不動産私募ファンドやJ− REITが海外投資家へのマーケティングのための人材需要を起こしている。 3.資産運用ビジネス 伝統的資産運用ビジネス
米系や欧州系のヘッジファンドが東京にオフィスを開設し、日本株への投資を行う動きが出てきた。日本株に対する信任の表れであろうか。人 材需要もある。このポジションを求める日本人プロは多いが、採用されるのは難しい。相当の実力者でないと無理である。また、自分でヘッジ ファンドを立ち上げようとするプロもいる。彼らは自らの運用手法やクオンツモデルを開発して実績もある。しかしシードマネーの出し手がい ない。大手の金融機関での良いパフォーマンスは「実績」にならないようだ。そこで、これら若手ヘッジファンド・マネジャーを応援するイン フラを作ろうとする動きも見られる。ヘッジファンドの運用で、世界で通用する日本人ファンドマネジャーが育って欲しいと願っている。 海外の大手ヘッジファンドが日本での販売拠点を強化している。そのための人材需要があった。ファンド会社自体の採用であったり、外資系金 融機関東京支店のファンド・マーケティング・グループによる採用であったりする。職責は、日本の機関投資家のニーズに適合した商品の仕組 み直しや説明である。特に銀行に販売する場合バーゼル・の規制が障害になる。また、日本の銀行・証券会社にリテール(個人富裕層)向け商 品として卸す場合は、日本の投資信託としての形を整えたり、元本保証を付けてリスクを小さくするように加工する必要がある。店頭セールス への教育も行わなければならない。従って、金融法人へのネットワークやファンド・デリバティブ等の商品知識を持つ人プロが求められた。ま た、年金宛てコンサルティング・ファームでの人材需要も強かった。これは年金に対して投資ヘッジファンドの選定、パフォーマンス評価、リ スク分析を支援する。 日本の銀行に対して07年3月期末からバーゼル・の規制が適用される。現在、銀行のヘッジファンド投資に対するリスクウエートに関して混 乱が起きている。中身の分からないヘッジファンドのリスクウエイトは1250%で計算されるという。しかし現時点では専門家によって解釈 が違う。従って地銀等が新規の投資を見送っているという。逆に、外資系金融機関がヘッジファンド・セールスで、バーゼル・規制回避のため のアイディアや仕組みを売り込もうとしている。あらゆる機会を商機と考える外資系の真骨頂であろう。 4.クレジットリスク・ビジネス
クレジットリスクの高いファイナンスが出来る人材 一方、邦銀が行うファイナンス(企業融資等)では、邦銀は相変らずリスク相当の金利を取らずに融資シェアの拡大を目指している(邦銀の貸 出金利は下降の一途である)。外資系金融機関にはクレジットリスクの高いファイナンスを行うグループがある。外人中心の組織で、高いリス クを許容する代わりに高いリターンを取ろうとしている。ハイテクなファイナンスである。そこに邦銀が低金利で殴りこんでくるので、それら の外人組織は壊滅する。邦銀はまた不良債権の山を作ろうとしているのか。さすがに金融庁も邦銀によるこのリスク無視の融資拡大を放置出来 ず、バーセル・がらみで介入しようとしているとの噂である。 最近、日本の証券会社がクレジットリスク・ビジネス(投資適格社債のトレーディングではない)に参入しようとしている。彼らがファイナン スとしてのクレジットリスクを考えているとすれば、難しいと思う。リスクの高いクレジットリスクは金利や為替のように定量化出来ず、経験 を通じてしかノウハウを蓄積出来ないからだ。いざとなっても流動性が低いため転売して逃げることも難しい。即ち、コマーシャル・バンクの ように企業に融資し、不良債権に苦しむという経験を重ねなければノウハウは蓄積しない。リスク回避型の証券会社の発想を払拭できなければ、 クレジットリスク・ビジネスに参入すべきでない。
クレジットリスクをトレーディング出来る人材 従って人材需要がある。CDSのトレーダー(内外の金融機関で)、外ものCDOの仕組み担当者(さすがに日本もののCDOは組成が難しい ようだ)、CDOへの運用担当者、この種クレジットもののセールスである。BBB債等リスクのある社債のトレーダーに対する需要も出てき た。しかし、邦銀の総合リスク管理部の信用リスクマネジメントの担当者は内部調達されている。クレジットリスクの人材需要はマーケット環 境の改善(金利水準の上昇等)と相俟って拡大するものと考えられる。
5.ファイナンス
LBO・MBOファイナンス
アセット・ファイナンス 消費者金融等「伝統的」なアセットの証券化の収益率が急速に低下しており、撤退するところも多い。従って新しい資産の証券化が進んでいる。 医療関係、パチンコ機器、葬儀場、種々のコンテンツ、映画等さまざまなソフト・アセットである。アセット・ファイナンスはオリジネーター に対する企業融資ではなく当該プロジェクトに対する与信であるから、担保価値の評価ではなく、それぞれの事業に対する分析力を持たなければ ならない。これからのアセット・ファイナンスは事業ファイナンスとして、付加価値を付けなければ儲からない。この動きは外資系金融機関で も邦銀においても起こっている。
メザニン・劣後ローン
資産担保証券(ABS) 6.シンジケート・ローン
シンジケート・ローンは手数料収入の増大、市場型間接金融の旗手としてメガバンクが強化している。全体残高も20兆円を越している。しか
し、これもデリバティブと同じく、メガバンクによる弱小顧客への押し付け商品となっている。本来ならば通常の貸出で対応出来るものを、無
理に私募債にして、アレンジメント手数料を稼ごうとする。デリバティブ販売と並び、この商品でもメガバンクから人材需要がある。 メガバンクの一つが、取引上の優越的地位を利用して融資先である中小企業にデリバティブの押し付け販売をしたとして、公正取引委員会から 排除勧告を受けた。邦銀各行は、競争激化で貸出金利を上げられないため、多かれ少なかれこの手法で収益を上げている。また、下記に述べる ように、メガバンクの窓口には大量の金融取引が持ち込まれており、証券仲介業に基づくビジネスも含め、邦銀からこれらのビジネスの経験者 への大きな人材需要がある(ともかくメガバンク・グループは猫の手も借りたいようだ)。 大手外資系金融機関の債券営業部門での地銀、事業法人、ミッドマーケット宛てマーケターに対する人材需要は、引き続き強い。外資系の一部 は依然として強い仕組み力やトレーディング力を駆使して収益的なデリバティブの仕組み債を作り上記の顧客に売ったり、中小の証券会社に卸 したりして収益を上げている。しかし事業法人宛てデリバティブのマーケティングでは、ある米系の投資銀行が圧倒的な収益力をあげていると のこと。 しかし、外資系の債券・デリバティブ・ビジネス(外資系ではグローバル・マーケッツやグローバル・レイツと称せられる)は全体的に低迷化 している。かつて外資系金融機関は、高度のデリバティブ技術を駆使して収益的な商品を創出していた。当時、デリバティブは外資系東京支店 の60−80%の収益を稼ぎ出していた。現在その面影は無い。通常の仕組み債は大手の日本の金融機関でも作れる。しかも顧客ベースにメガ 三グループと各外資との間に格段の差がある。従って、外資系は邦銀では依然難しいものをつくり、生き残りに必死である。しかし生き残る外 資系はせいぜい10−15社であろう。
東京外為市場の取引が回復する中で高名な為替のプロの転職が散見される。金余り現象の中で投資家が外貨投資を始めたため、外為専門会社や
一部外銀が人材採用を行っている。しかし、東京外為市場での外銀の拡大・縮小の繰り返しは数年毎に起こり、珍しい現象ではない。毎回シン
ガポールと東京で人材をキャッチボールする。要は、提案する為替ビジネスが付加価値を生むものでなければ、ボラティリティの低下で再びオ
フイスを縮小するだけだ。長期輸入為替やエグゾティックな為替の仕組みを開発できなければ生き残りは難しい。
05年の外国人投資家は日本株を10兆円以上買い越した。ネット取引の拡大もあり、株式売買における個人投資家の比率は38%に及んだ。
結果日経平均は年間40%以上値上がりし、東証一部の時価総額が15年ぶりに500兆円を超えた。しかし人材需要はほとんど無い。外人投
資家は既存の外資系投資銀行や大手の証券会社を通じて購入し、個人はネット証券を使ってデイ・トレーディングするためであろう。 日本の世帯数4900万の内、1.5%=78万世帯が1億円以上の純金融資産を持つ。 この富裕層が持つ資産の取り込みを狙ってさまざまな金融機関が「富裕層ビジネス」を展開しようとしている。超リッチ・ファミリーを対象 にするスイスの伝統的なプライベート・バンク、米系の投資銀行ビジネスから派生したウエルス・マネジメント、不祥事により日本からの撤 退を余儀なくされたシティバンクのパーソナル・バンク、欧州系ユニバーサルバンクが行うプライオリティ・バンク等である。日本の大手証 券会社はラップ口座を拡大している。戦略の難しさからか、どこも成功しているとは言いがたい。従って一年前と比較して、人材需要の盛り 上がりは小さくなった。 メガバンクも銀行の支店網、系列の信託銀行、証券会社等を総動員して個人富裕層ビジネスを強化している。ノウハウを持つ外資との提携を 行うところもある。但し、戦略家の外部採用や、組織作り、支店の営業マンと中途採用のプライベート・バンカーとの報酬の調整等の社内協 力体制の構築が必須である。日本の金融機関はどこも、支店経営、組織、成果報酬制度をそのままにしてプライベート・バンキングを始めよ うとしている。即ち、メガバンク等日本の金融機関には「プライベート・バンクとは何か」についての哲学観や本格的な戦略が無く、単に時 流に乗って騒いでいるに過ぎない。従って、外資のプライベート・バンカーのプロはその人材需要には見向きもしない。
第二章 金融機関別様相
しかし一方、竹中平蔵総務大臣は、「『竹中三原則』の内、「ガバナンスの強化」は未達である」と明言している。確かに、メガバンクの経 営は「失われた10年」を経て何も変わっていない。合併により規模や株価時価総額だけは「世界的」になったが、収益力は小さい。問題は 相変らず「資本コスト経営」を行わないこと。多くの銀行は「委員会等設置会社」ではないためトップは成り行きで決まる。従って、リーダ ーシップを発揮して「改革」を叫ぶ人はトップになれない。通常の企業には存在するトレジャラーやCFOがいないので司令塔も機能しない。 執行役員は他の執行役員のメンツを立て、自分が所轄しない部門の事項には口を出すことはない。従ってブレーキが掛からず「儲からない」 ビジネスでも大量の人材を配置して行う。貸出の金利ダンピング合戦はますます熾烈になり、リスクに見合った金利を得ていない。人事では 年功序列が厳然と機能している。外部採用は行っているが、単に「日々の仕事が忙しすぎる」からに過ぎない。専門性が評価されないから業 績対応の人事制度が確立しない。従って報酬も相変らず安い。最近は通常の人より高い年収を保証されて中途採用されるプロも出てきたが、 オッファーされる年俸額の根拠が分からない。このように邦銀経営の問題点は、上げれば限りが無い。しかも、それぞれの問題点に本格的に 対応しようとする方針も確認されない。当社は、昨年作成の「レポート」2でアンケートを行ったが、邦銀の役員ですら、ほとんどが「邦銀 の経営は評価できない」と回答している。 しかしメガバンク三行とも同様に改革を拒否しているわけではない。温度差が見える。また、全ての邦銀マンが一律に志を失っているわけで はない。「危機感」を持ち「改革を進めよう」としている立派な経営者やスタッフも多い。当社はそれらの人々を人材面で支援しようとして いる。また、現在進行中のバーゼル・の規制が明らかになれば、金融庁の圧力により銀行が真剣に資本政策を行うようになるかもしれない。 ひそかに期待している。
グループの証券会社での採用では、銀行と比較して縛りが小さいため自由度がある。雇用契約も柔軟で、いわゆる「総合職とか基幹職と呼ば れる期限を定めない雇用契約」、「プロ契や専門職と呼ばれる期限を定めた契約」。これは専門性を持つプロの採用で、成果対応の報酬を与 えられる。その中間の「期限を定めない雇用契約であるが、専門分野以外の部門には異動出来ない契約」がある。ここでも報酬は成果対応と なる。但し、いずれにしろ報酬は外資系程高くはならない。まして銀行本体では旧態依然とした人事体系・報酬体系である。邦銀が本当に収 益力のアップを目指すのであれば、人事制度・報酬制度で根本的な改革が必須である。 日本の金融機関の中途採用での最大の問題は、担当部長や役員がそのビジネスの素人であることである。日本の金融機関では銀行でも系列の 証券会社でも、部長(ライン部長)や執行役員は生え抜きで占められる。彼らは経営トップを目指してジョブ・ローテーションで転勤を繰り 返すエリート・ジェネラリストである。これは現時点では仕方が無いことだが、中途採用のプロにとっては問題である。中途採用のプロはさ まざまなリスクを取ってて職責を遂行している。常にうまくいくわけではない。失敗した時なぜ失敗したかを上司が理解できなければ、リス クは取れない。しかし日本の金融機関が外資系金融機関のプロを採用出来ないのは、報酬の問題に加えて上司が素人であることである。 時価総額で世界ランキング入りしたメガバンクは、国内での圧倒的な地位を確立するだけでなく、海外拠点の拡大も始めている。人材需要は 急増している。しかし邦銀はバブル期に海外でも巨額の資金力を使い、金利ダンピングでアセットを増やした。国際市場ではある意味で「存 在感」を示していたが、結果大量の「不良債権」を掴まされることとなった。今回の海外拠点の拡大計画はその失敗を踏まえてのことであろ うか。単に「世界的な金融機関であるから、海外店もそれにふさわしい規模にしなければ恥ずかしい」程度の考えではないのか。これからは、 かつてのように「湯水の如く」資金を使うことは出来ない。戦略を注視したい。
上記と矛盾するが、今日の外資系金融機関ではもはや「スーパースター」は不要であると。かつて外資系には、海外本店の高度なノウハウを 人より早く学び、自らの営業力やアイディアを駆使して大きな実績を上げるプロがいた。今日でも散見されるが極めて少なくなった。これは 昔のように外資系に差別化出来る商品が少なくなったこと、個人の力より、金融機関が持つグローバル・ネットワークやブランド力で勝負す る戦略になったことによる。従って外資系ではシニア・プロでもルーティーンに組み込まれる。いわば、皆「金太郎アメ」となる。従って実 績のある外資プロはフラストレーションに苦しむ。外資系の魅力が小さくなった理由の一つである。 外資系金融機関の外人トップマネジメントの懸念は、東京支店の日本人に真の経営者や人材が十分に育っていないことである。東京支店には 「職人」(商品のプロで、よく稼ぎ高額のボーナスを貰っている人)はたくさんいるが、金融マンとして高い志を持ち、部門長(MD)とし て成長し、本国の経営者とも互角な議論の出来る人が少ない。また、マーケットに大きなインパクトを与える大掛かりなディールが出来るプ ロも多くないと。希少である原因は、外資系での採用が過去の実績やスキルを余りにも重視して行われることだが、日系金融機関の優良な応 募者も、チャレンジ精神をもって外資系金融機関にトライして欲しいと思う。当社は、外資系金融機関と日本の金融機関が優良な人材を抱え ながら、日本の金融ビジネスの拡大のため互いに切磋琢磨して欲しいと願っている。
以上 |
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| ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成17年12月31日現在) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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筆者のプロフィール: 小溝 勝信(こみぞ かつのぶ) 1968年東京大学教養学部国際関係論分科を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行・主として国際部に従した。1984年に外銀に転じ、 ファースト・シカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任した。人材コンサルティングに転ずるため、1989年米国の大手ファームの一つで あるホイットニー・グループ日本支社に入社し、副支社長に就任した。1993年、日本型のエグゼクティブ・サーチの創設を目指してヘッ ズジャパンに転じ、金融部門マネジング・ディレクターに就任した。2004年エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立した。 このレポートは、筆者がヘッズジャパンで1994年以来半年毎に報告していた「外資系金融機関の最近の人事事情について」の連続版である。
エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のプロフィール:
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