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平成17年 12月号

〜日本の金融機関の海外進出〜

エグゼクティブ・サーチ・
パートナーズ 小溝 勝信

筆者は11月と12月の二ヶ月に亘ってロンドン、ニューヨーク、香港、シンガポールと4ヶ国への出張を繰り返した。これには弊社のニューヨーク・オフイスの業務開始も含まれていたが、主たる目的は、日本の金融機関による海外拠点の拡大計画の支援であった。

邦銀は、今年9月末の中間決算で確認されたように、「不良債権問題」をほぼ乗り切ったようだ。経営の対象は「健全性」から「収益性」にシフトしている。即ち、「どうしたら儲かるか」である。アナリストの通俗的な分析言えば、なすべきことは・預貸金利鞘の拡大による金利収入の増大と、・役務収益比率のアップと同収益額の増大である。しかし問題は、これらの目的をどのように実現するかである。このための経営方針・ビジネスモデルの考案がなければ意味が無い。邦銀改革の本当の苦闘はこれから始まる。

日本の金融機関の「収益追求」「経営改革」の道筋の一つに海外戦略の推進がある。かつて邦銀や大手証券会社はバブル収益を梃子に海外市場で大きな存在感を示していた。国際市場でダンピングを繰り返し、リスクを無視してシェアを拡大していた。そして量だけは巨大な存在感を示していた。しかし、これは邦銀はある意味で国際市場での役割を果たしていたとも言える。人材もプレミアムを払えば2流程度の外人の雇用は不可能ではなかった。しかし、その後のバブル崩壊により日本の金融機関は海外からの撤退を余儀なくされた。

そして最近、再び日本の金融機関は海外での拡大を模索し始めている。人材ニーズも勃興しつつある。問題は「失われた10年」で学んだ教訓をどのように生かそうとしているかである。

(1)ロンドン支店での戦略とその人材ニーズは大きく三つである。
・ 三メガバンク・グループ(系列・親密証券会社を含む)は急回復する日本の金融ビジネスを寡占化しつつある。現在、日本の顧客はメガバンクのいずれかにビジネスを持ち込んでいる。大量の顧客ビジネスフローを持つメガバンクは、対応する商品開発をロンドン支店に求めている。ロンドン市場はマーケットの大きさや外資系金融機関からの商品調達等、自由度が大きい。ロンドン支店はその要請に応えるため1.5流程度の大物外人をチームとして採用しようとしている。対象はトレーディング力、仕組み力を持つ外人である。ここでの問題は、かつてのように3流外人に1.5流の報酬を払うのではないかとの危惧である。
・ また、ロンドン支店の役割は海外進出を再開する日本企業への支援である。このためには日本人の雇用が必須である。しかし日本企業や金融機関が海外撤退してから何月が経過しているため海外に住む金融マンが少なく、採用がうまく行っていない。日本の金融機関ではロンドン、ニューヨーク、香港等いずれの海外支店でも日本人金融マン(若手)に対する需要が強い。
・ さらに、日本の金融機関は欧州企業との取引獲得、ヘッジファンド取引の拡大、オイ
ルマネーの取得を目指している。このための人材需要がある。しかし全くうまく行っていない。日本経済や日本の金融機関に対する信任の回復が先であろう。

(2)ニューヨーク支店での戦略及び人材ニーズはロンドンの事情とかなり異なる。即ち、米国市場は巨大な“ローカル・マーケット”である。閉鎖性が強く、トップクラスの米国投資銀行が熾烈な競争を繰り広げている。日本の金融機関は世界第二位の経済をバックに規模だけは大きいとは言え、何の「戦略」も持たず、人材では質は言うに及ばず量も不足している。この日本の金融機関が米国で何をしようというのか。かつては巨大な資金を持ち込み欧米金融機関が許容しない低い金利で資金提供していた。しかし今日ではそれも許されないとすれば、何を武器に戦うのであろうか。
・ ニューヨーク支店にはロンドン支店に課せられたような商品開発への期待は無い。但し、ニューヨーク支店(銀行及び証券現地法人)拡大のための日本人スタッフの需要は強い。東京本社との連絡や経営管理を行う日本人スタッフへの需要である。日本人の若手金融マンが対象で、候補者には特に専門性は問われない。各メガバンクとも日本での人員が極端に不足しているため、折角海外店で育てた人材を本国に取られる。海外店ではこの穴埋めすらされていないという状況にある。
・ ニューヨーク支店にも日本企業の米国進出支援の役割がある。特に、今後日米間のクロスボーダーM&Aが増大すると思われる。しかしここでの人材需要は日本人ではなく、日本での経験を持つ外人プロが対象である。
・ しかし、最も大切なニューヨーク支店の役割は、米国市場で外資系金融機関として収益を上げることだ。このためにはどのようなビジネスを行うか。CDO等クレジットもののトレーディング、証券化等ストラクチャード・ファイナンス、CLO、プロジェクト・ファイナンス、M&A等考えられるが、明確に的が絞り込まれていない。いずれにしろ、欧州の巨大ユニバーサルバンクですら苦戦している米国市場で収益を上げるのは至難に業である。1.5流の外人プロの確保が必須であるが、このためには1.5流のビジネスを持っていなければならない。「鶏と卵」のジレンマに悩まされることになる。

いずれにしろ、日本の金融機関が「失われた10年」での教訓を生かすことを期待する。

以上

 
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