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月例レポート

平成17年8月 第2号 (日本語版)

〜「金融マンの意識調査」報告〜

エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社
代表取締役 小溝 勝信
- 目次 -

  • はじめに


  • 第一章「金融マンの意識調査」の結果報告

    I.アンケートの要領と分析の方法

    II.分析


    第二章 金融人材市場の概観と金融ビジネス別の現状


    I.金融人材市場の概観

    II.金融ビジネス別人材需要


  • おわりに
  • ESPのアサインメント残高(平成17年12月31日現在)
  • 筆者のプロフィール
  • エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のプロフィール
  • 「金融マンの意識調査」のデータ資料
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    はじめに
    十数年も続いた邦銀の「不良債権問題」は、金融庁によるメガバンクへの強烈なリストラ圧力もあり収束に向かい、血の滲むような企業努力により企業業績は急速に回復している。また、世界的な「金余り」は日本経済に大きな影響を与えている。このような内外の変化を受けて、昨年後半から日本の金融人材市場は「量的」に拡大し「質的」に変化している。

    このレポートは、筆者が1994年以来、半年毎に作成してきた「金融人材市場レポート」の連続版である。当社の新・第2号として、今年前半の状況を報告する。

    第一章では、激変する金融ビジネスでの「金融マンの意識調査」を行った。当社との関係を持つ外資系や日本の金融機関の「金融プロ」や「経営者」に対してアンケートを行い、400人から回答を得た。当社のコメントを付して報告する。

    第二章では、今年前半の「金融人材市場の様相」と「金融ビジネス別の人材需要の特徴」について報告する。

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    第一章 「金融マンの意識調査」の結果報告

    I.アンケートの要領と分析の手法

    (1)アンケート実施の要領
      6月16日から6月27日の間に、インターネットを通じ、匿名でアンケートを行った。400人から回答を得た。
    お礼を申し上げると同時に、下記の通り報告申し上げます。


    (2)分析の方法と「用語」の定義
    「回答」結果を、全体の傾向、日本の金融機関と外資系の別、年齢別、地位別、金融ビジネス別等で分析した。

     
    質問に対する回答の分析では、下記の用語を使用した。
    ・「そう思う」は「肯定」
    ・「そうは思わない」は「否定」
    ・「どちらとも言えない。分からない、回答不明」は「中立」

     
    日系金融・外資系・その他日系別分析では、下記の用語を使用した。
    ・日本の銀行、証券会社、生損保(グループ内の会社も含む)等は「日系金融」
    ・外資系の金融機関、資産運用会社、ファーム等は「外資系」
    ・その他、日系の非銀行・証券会社は「日系その他」
    具体的な分類は添付を参照頂きたい。

     
    専門性別分析では下記のグループ分けとした。
    ・「債券ビジネス」
    ・「企業金融」
    ・「資産運用」
    ・「投資ファンド」
    ・「その他」
    具体的な分類は添付を参照頂きたい。

     
    地位別での「経営層」とは、経営者(日本の金融機関では執行役員以上、外資系では部門長のMD以上)と部長クラス(経営者の下で部下を有する職責の人)の合計である。

     
    回答の比率で、特に定義のないものは全回答者400人に対する割合である。

     

    (3)回答者の分布回答の詳細
      添付のデータを参照頂きたい。

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    II.分析

    1.金融プロを取り巻く環境について

    「金融環境についての基本的な認識」(データは、図表1−@〜Eを参照頂きたい)
    回答者の大多数が「日本の不良債権問題は峠を越した」と認識しており、「日本経済も回復基調にある」と考えている。 「長期的にも楽観的な観測」を持っている。「金融庁の金融行政を基本的には評価しておらず」、「金融コングロマリッ ト政策にも懐疑的」である。ビジネスの流れについては、多くが「不動産ビジネスはバブル化している」と認識しており 、圧倒的多数が「今後M&Aが頻発する」と予想している。これらの回答は一般的な認識と大差無いと考えられる。


    「米国資本主義が世界を席捲するか」図表2
    全回答者の内「肯定」が35.5%で、「否定」が42.3%と「否定」が多いものの、賛否は拮抗していると言えなく も無い。「否定」した回答者には、「米国資本主義が唯一の経済体制ではない」というグローバリゼーションへの反発も あると考えられる。日系金融・外資系別で見ると、日本の金融機関の人の方がより否定的である。年齢別で見ると、30 歳代より40歳代の方が肯定的であるのは興味深い。海外経験のある人の方が無い人より肯定的である。


    「ニッポン放送買収騒動でのホリエモンの行動を評価するか」図表3
    「肯定」が50.8%、「否定」が19.0%で、金融マンは圧倒的にホリエモンの行動を支持している。この傾向は、 日系金融・外資系別でも、年齢別でも同じであった。即ち、今後新会社法の施行等で「敵対的買収」が増えることも予想 されるが、その覚悟の表れでもあろう。


    「会社は誰のものか」図表4
    会社は「株主のもの」「経営者や従業員のもの」「さまざまなステークホルダーが共有するもの」のどれかという質問 に対して、回答は「ステークホルダーの共有」(53.0%)が最大であったが、「株主のもの」(44.0%)と拮 抗している。「経営者や従業員のもの」との回答は2.8%に過ぎなかった。「共有」が多いのは、「企業一家主義」と いう伝統的な日本型経営の意識が、いまだに金融マンの心に残っているのか、日本の金融マンが「新しい」日本の企業文 化の構築を期待しているのか分からない。日系金融で「共有」の比率が高いのは理解出来るが、50歳以降の人が「株 主のもの」と考えているのは興味深い。


    「成果主義報酬制度は正しいか」図表5
    圧倒的多数が「肯定」(57.8%)しており、「否定」(12.0%)の5倍、「中立」(30.0%)の2倍いる。 しかし、外資系では「否定」と「肯定」に大きな違いがあるが、日系金融では大きな差は無かった。即ち、ここに外資系 の金融プロと日本の金融マンに明確な違いが見える。特に「経営層」の間では、外資系(「肯定」が67.5%、「否定」 が6.5%)と日系金融(「肯定」が45.2%、「否定」が16.7%)での差が大きかった。勿論、日本の銀行・証 券と外資系金融機関ではこのマーケットに対するミッションが違うため「報酬」に対する考え方も違って当然だが、日本 の金融機関の役職員には「成果主義報酬制度」への戸惑いが見える。これが、日本の金融機関における「改革」のテンポ を遅くしている原因と考えられる。年代別に見ると、30歳代より40歳代の方が「成果主義報酬制度」をより支持して いるのは興味深い。専門性別では「債券ビジネス」と「投資ファンド」で「肯定」が比較的多く、「企業金融」や「資産 運用」で比較的少なくなっている。これは、それぞれのビジネスの性質の違いを反映していると考えられる。特に「投資 ファンド」では「肯定」が非常に多い。これはエグジットして得たゲインから配分を受けるビジネスであるから、当然と 言える。


    「日本の金融機関の経営は全体として評価出来るか」図表6−@、A
    圧倒的多数が「否定」している。即ち、全回答者の内307人(76.8%)が「否定」しており、 「肯定」は21人(5.3%)に過ぎない。この判断は日系金融・外資系別や年齢別を問わない。日本 の金融機関の「経営層」でも78.6%が「否定」している。日本の金融機関のほとんどの経営層自身 が「評価出来ない」としているのはどういうことか。彼らに経営者としての自覚が不足しているのか、 日本の金融産業の構造的な問題なのか。

    「否定」する理由は、「経営者が悪い」が最大(「否定」の46.3%)で、「企業文化が悪い」(同 、18.9%)や「人事・報酬制度が悪い」(同、18.2%)を大きく超えている。この傾向は日系 金融・外資系別を問わない。金融市場では日本の金融機関の経営者への「失望感」が大きい。

    「日本の金融機関が業績を回復するために必要な政策は何か」(最大で三つ選択可能)に対しては (図表7)、・「経営者/従業員の意識改革」(54.2%)、・「経営統治方式の改善と組織改革」(3 8.5%)、・「年功序列/ジェネラリスト重視から専門性を評価する企業文化・人事制度の構築」(3 4.8%)・「資本コスト経営の徹底」(29.0%)、・「経営者の外部採用」(27.3%)、・「 リスクに見合ったプライシング」(23.8%)、・「プロの外部採用」(20.8%)の順番で提案 されている。即ち、役職員の意識、経営手法、人事制度で幅広い改革が求められている。

    問題は、市場でのこの「極めて低い」評価を邦銀の経営者が「深刻」に受け止めていないことである。邦 銀の多くは、2〜3年前には「債務超過」「国有化」と騒がれ、公的資金が注入され、ゼロ金利政策の継 続で預金者を犠牲(預金者から銀行への所得の移転)にして救済されたことを既に忘れている。即ち、邦 銀は「失われた10年」から全く学んでいない。

    日本の金融機関は、相変わらず、集団主義という無責任体制、シェア重視、情実人事等の「日本型経営」 から脱却出来ていない。外部採用を忌避して「閉鎖主義」にこだわり、経営が「独善」に陥っている。こ れは、「日本の金融機関を保護する」という「既存システム」が、近年揺さぶられてはいるが、いまだに 「破壊」されていないことによる。日本の金融機関の役職員に「既得権」意識が根強く残っている。従っ て、資本主義的な経営が行われないため、政策や組織編制が資本コスト/収益性に基づいて決定されない。 「資本コスト」経営をしていない証拠は、一般融資は言うに及ばず、シンジケート・ローン、不動産のノン ・リコースローン等でメガバンク同士がダンピング合戦していることである。邦銀は「儲かりもしない」 ビジネスに大量の人員を貼り付け、シェアが上がったと自己満足している。この「お粗末な経営」に因る 「低い収益力」と「低い株価」は、巨大外国資本の格好の「買収ターゲット」となり得る(東京三菱銀行とU FJ銀行が合併しても、時価総額はシティグループや香港上海銀行の半分にも及ばない)。もっとも、「日本 の銀行は巨額の資金を使って買収するに値するか」という疑問はある。

    邦銀の人事制度は、「専門性」や「業績評価」を軽視する。今日でも「日本型職能資格制度」(年齢が上 がると能力も上がると前提する)を堅持している。そして「クオリティ重視」と称する不透明な人事が行 われている。勿論、従業員の「質」は最も重要な経営要素であるが、「クオリティ優先」の人事は一部の 「コア」人材に対するものであって、投資銀行の金融プロまで一律に適用すべきではない。

    邦銀の組織は外資系と大きく違う。外資系では、現場の長、即ち部長や部門長レベルは「現場で勝ち残っ た人」から選ばれる(勿論、定量評価と定性評価で決定される)。その「長」(マネジング・ディレクタ ーと呼ばれる)は、ビジネス遂行のための権限(業務の範囲、認められたリスクとコスト、人材採用の決 定権、ボーナスの配分権等)を与えられる。勿論、結果責任も問われる。この職責は当該ビジネスのプロ でなければ果たせない。しかし日本の金融機関は「ジェネラリスト指向」であるから、「素人」が、ジョ ブ・ローテーションで部長として転勤してくる。これでは専門性と経験を武器に戦う金融ビジネスでは勝 てない。「プロ」は「素人」の上司を信用しないから、日本の金融機関は外資系のプロを採用出来ない。


    「日本の金融機関の中途採用は正しいか」図表8−@、A
    商機は日ごとにメガバンクに集中しつつある。しかし、大幅なリストラと極端な新卒採用の縮小により邦銀の年齢構成は極端にいび つになり、大幅な戦力不足に陥っている。メガバンクは、これを一気に取り戻そうとして大量の中途採用を計画している。しかし、 人材市場での評価は辛い。即ち、全回答者の内192人(48.0%)が「否定」している。「肯定」は85人(21.3%)と「 否定」の半分以下である。この「否定」の傾向は日系金融・外資系別を問わない。従って、メガバンクには膨大な量の人材需要があ るが、殆んどうまく採用出来ていない。

    「否定」する理由(最大で三つ選択可能)は、・「受け入れ体制が整っていない。目的・方針・戦略が明確でない」(「否定」の72 .4%)、・「中途採用者の人事・報酬制度が確立していない/明確でない」(同、62.0%)、・「職責・権限の範囲がはっきり しないことが多い」(同、35.9%)、・「報酬が安すぎる」(同、27.1%)、・「出世が出来ない」(同、24.0%)、・ 「権限・自由度が与えられない」(同、23.4%)、・「中途採用者がいじめられる」(同、23.4%%)となっている。

    日本の金融機関が中途採用を希望する「30歳代」の金融マンでも、66.3%が「否定」している。さらに、77.6%の外資 系の若者が日本の金融機関は「嫌い」と回答している。これでは中途採用は出来ない。専門性別で見ると、特に「企業金融」の人 に「否定」が多い。地位別では、日系金融、外資系とも「経営層」は日本の金融機関の中途採用に「寛容」である。日々の判断を 行う彼らは「仕方が無い」と考えるのであろうか。

    な報酬も少ない。差別化が行われず、同期トップとボトムの年収の差はせいぜい1〜2百万円である。一般に「成果主義」の欠陥 が指摘されるが、金融ビジネス、特に投資銀行ビジネスでは「平等主義」は破棄されなければならない。まして、中途採用者に対 する報酬条件では意味を成さない。即ち、日本の金融機関での中途採用者への報酬条件は、・「総合職」であれば生え抜きと同一 条件(しかし年金、退職金で不利になる)。・お金が欲しければ「1〜2年の有期雇用契約=嘱託」とし、年収は生え抜きの1. 5倍程度とする。しかし、業績に対する上乗せは期待出来ない上、退職金や年金が無いことから、実質1.3倍程度にしかならな い。また、銀行の人事部は「実質」パーマネント契約であり雇用の安定性はあると説明するが、「契約が延長されないリスク」は 十分にある。勿論、下記に報告するが、転職は「報酬」だけが目当てではなく、「やりがい」や「キャリアアップ」も重視される 。しかし、メガバンクでは一顧だにされない。日本の金融機関の中途採用者は現状「使い捨て」である(メガバンクへの合併以前に 雇用された中途採用者は、リストラの過程で殆んど退職させられた)。これでは優秀なプロの中途採用は不可能だが、メガバンク は「超一流の当行の採用であるから、対象は一流の金融マンに限られる」と条件付ける。しかも「即戦力であり報酬条件も似てい るから、他のメガバンクから採りたい」と言う。全く「独り善がり」の採用計画と言わざるを得ない。

    中途採用者の「職責」も間違っている。即ち、「プロ」を外部採用するためには「組織や権限の調整」「報酬」「閉鎖的な企業文 化の改革」等々、さまざまなインフラ整備が必要である。しかし「プロ」の中途採用者は、現時点では、既存組織の「一兵卒」と して押し込められる。どんなに優秀で稼ぐプロであっても、日本の金融機関では部長、部門長、ましてや執行役員に任命されるこ とは無い。これは、「経営は中途採用者には任せられない」という邦銀の原理主義に基づく。しかし、「中途採用者は経営に関わ ることは無い」として、中途採用の「プロ」にディール遂行のための明確な「権限と責任」が与えられるのか。一般に、「プロ」 は「権限が明確でなければ実力を発揮出来ないし、責任も負えない」と考える。「稼ぐ」プロはいつも「権限と責任」の狭間で追 い込まれ、苦闘して成果をあげる。しかし日本の金融機関では、中途採用の「プロ」がレポートする「長」ですら「権限と責任」 が与えられていない。しかも「長」のほとんどは「半分素人」である。従って外部の優秀な「プロ」はメガバンクに応募しない。


    「外資系金融機関東京支店の経営は全体として評価出来るか」図表9−@、A
    それでは外資系に対する評価はどうなっているか。全回答者の内「肯定」は25.8%、「否定」は33.5%、「中立」が39. 3%となっている。「肯定」は少ないものの、日本の金融機関に対するように一刀両断に「否定」しているわけではない。これは一 般市民の「外資ハゲタカ」批判とは少し違っているように思う。日系金融・外資系別で見ると、日系金融の人では「否定」(40. 5%)が「肯定」(17.9%)の2倍以上になっているのに対し、外資系では「肯定」(31.5%)が「否定」(26.1%) より多い。認識の違いがはっきり見える。

    「肯定」の理由は、・「グローバルな経営が良い」(「肯定」の22.3%)、・「人材が良質である」(同、19.4%)、・「 人事・報酬制度が良い」(同、18.4%)、・「国際的なネットワークを持つ」(同、14.6%)、・「商品が良い」(同、 12.6%)であった。「否定」の理由では、・「日本市場へのコミットメントが小さい」が圧倒的に多い(「否定」の42.5 %)。次に・「企業文化が悪い」(同、20.9%)、・「東京支店の経営・経営者が悪い」(同、15.7%)、・「顧客ベー スが小さい」(同、9.7%)、・「人材が良くない」(同、6.7%)と続く。

    そして「外資系金融機関経営の改善の方策」(最大で三つ選択可能)への提案としては(図表10)、・「日本へのコミットメン トの増大」(63.3%)が最大で、・「短期的な収益主義の改善」(41.5%)、・「本社から派遣される役員の質の改善」 (38.8%)、・「顧客ベースの強化」(36.3%)、・「日本市場向けの商品力の強化」(28.0%)、・「短期的な人 事評価・報酬制度の見直し」(25.3%)、・「人材の改善」(18.8%)と続く。日系金融・外資系の別では、日系金融の 人は外資系の短期収益至上主義を批判し、外資系の人は本社からの外人役員の質を問題にしている。


    「日本における外資系金融機関の採用・雇用の方法は正しいか」図表11−@、A
    全体では「否定」(34.3%)が「肯定」(22.8%)より多い。しかし、これも日本の金融機関の中途採用に対するほど評判は悪くない。「否定」する理由は、・「人事方針が本社の方針で大きく変化し、日本法人に確立した人事・採用方針が無い」(「否定」の51.1%)が最大で、次に・「本社や外人が実権を握っており、日本人に権限・自由度が与えられない」(同、40.9%)、・「ジョブ・セキュリティが不確実(すぐクビにする)」(同、40.1%)、・「実力より英語が重視され過ぎる」(同、38.0%)、・「人事・報酬制度がフェアでない」(同、33.6%)・「収益プレッシャーが強すぎる」(同、33.6%)、・「ベテランの力を軽視し過ぎる」(同、23.4%)と続く。日系金融・外資系別で見ると、外資系の人は日系金融の人ほど「否定」していない。専門性別で見ると、「肯定」は「債券ビジネス」と「投資ファンド」で多く、「企業金融」では少ない。「企業金融」で「肯定」が少ないのは、このビジネスは収益を上げるのに長い期間を要するため、外資系の採用・雇用のあり方に疑問を持つのかも知れない。

    金融のホールセール・ビジネスはグローバルであるから、好むと好まざるとに関わらず、外資系金融機関東京支店の経営も人事も本社の世界戦略の指揮下に入る。当社は、東京支店の日本人従業員が「本社は日本の商慣習や実態を理解していない」と不満をもつことも、本社の外人経営者が「日本のスタッフはグローバル・スタンダードを知らない」と嘆く気持ちも理解出来る。だからこそ東京支店の日本人経営者はその間に立ち、「融合」した経営を作り上げなければならない。うまく行かなければ「外資系金融機関の日本人経営者には経営力が無い」と非難されてもやむを得ない。


    「今後、日本の金融ビジネスでは、外資系金融機関よりメガバンクの方が有利か」図表12
    昨今の日本経済の急激な変化を踏まえて質問した。全回答者の内133人(33.3%)が「メガバンク有利」と回答し、「外資系有利」の81人(20.3%)を凌駕している。しかし169人(42.3%)が「どちらとも言えない」と判断を留保している。全体としては、まだ明確な判断が行われていない。日系金融・外資系別で見ると、いずれも「メガバンク有利」が多いが、その傾向は日系金融の人の方が強い。しかし外資系の人でも、米系と欧州系では見方が違う。米系の人では「外資系有利」が27.2%であるのに対し、欧州系では17.9%であった。米系の人の方が強気である。地位別で見れば、日系金融の「経営層」と外資系とでは見方が反対になっている。即ち、日系金融の「経営層」が「メガバンク有利」としているのに対して、外資系は「外資系有利」としている。ただし外資系では判断を保留している人も多い。専門性別で見ると、「企業金融」では「メガバンク有利」が突出しており、「投資ファンド」では「外資系有利」が他の専門性の人より多い。いずれにしろこれからが勝負と考えられる。

    不良債権が無ければ、邦銀は「儲かる」に決まっている。邦銀の寡占化とゼロ金利政策の継続で、2006年3月のメガバンクの決算は空前の好決算になると予想される。しかし、このトレンドへの対応を誤ると、メガバンクは「儲けすぎ」とバッシングされ、さまざまな後ろ向きの対策に忙殺されることになる。そのような事態を避けるためにも、メガバンクは早々に「開かれた」経営に転換する必要がある。


    「今後、金融ビジネスではどの力を持つプロが有利か」図表13
    全体では「強い顧客ベースを持つ人が有利」が38.3%と最大であるが、「専門性を持つ人が有利」が34.0%であり、 拮抗している。次に「良質な総合力を持つ人が有利」が19.5%となっている。日系金融・外資系別では、今後は「顧客ベ ース」の構築が最も大切であると考える点では、外資系と日系の金融マンに認識の差は無い。地位別でも同じ傾向にある。し かし専門性別では、特に「資産運用」の人が「専門性」重視と回答しており、他のビジネスとは逆になっている。「資産運用 」は「運用力」で評価されるべきで「営業力」で売るものではないという、そのビジネスの「哲学」を表していると思われる。

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    2.自身のキャリアについて

    人生観図表14
    「自身の人生観」について、「キャリアを中心に生きていく」「個人生活を大切にして生きていく」「仕事が命である」「会社が命である」「これらのバランスを取って生きていく」「その他」の選択肢の中から選んで頂いた。大半の258人(64.5%)が「これらのバランスを取って生きていく」と回答している。次に「キャリア中心」(16.0%)、「個人生活」(10.8%)、「仕事中心」(6.8%)の順番となっている。昔懐かしい「会社命」と回答した人は1人(0.3%)だけであった。この傾向は、日系金融・外資系別でも年齢別でも同じであった。即ち、金融マンは「キャリア構築」と「個人生活」の両立(「バランス型」)を追及していると解釈される。従って、明らかに、かつてのような「会社人間」や「仕事人間」から脱却している。

    「職業人の就業観」の歴史的変遷を見ると、戦後しばらくは「会社命」「滅私奉公」「忠誠心」を持つ人が「サラリーマンの鏡」とされた。その後、日本経済の拡大にあわせ「仕事」に重点を置く風潮へ変わった。国民一人当たりの所得が世界のトップクラスとなるに至り、「余暇」や「個人生活」を大切に生きる人が増えた。「家庭には仕事を持ち込まない」と言う「マイホーム・パパ」の登場である。しかし、バブルの崩壊で「会社が一生面倒を見る」という約束手形を反故にされたサラリーマンは、失望し、「結局、自分の力で生きていくより仕方が無い」と考えるようになった。そして「自分の人生とは何か」を自問し、「自己実現」のユングが読まれた。今世紀に入り、ITバブルを経て、現在景気回復の過程にある職業人は「キャリア」と「個人生活」の両立を意識し始めている。

    「職業人の就業観」が上記のものであれば、雇用者としての金融機関は、そのような個人と「共生」する人事体制を構築しなければならない。従って、従来のように企業への忠誠心を求めたり、ジョブ・ローテーションでジェネラリストをつくる人事政策は変更されなければならない。しかし、日本の金融機関は昔から「会社は従業員のものである」と言いながら、個人の人生観・就業観を無視してきた。従って、従業員への「キャリア自立支援」という考え方はまったく無い。まして、不良債権問題で経営危機に陥ると大幅なリストラを断行したのは、日本の金融機関の「企業一家主義」がいかに欺瞞に満ちたものであるかを証明している。これからメガバンクの経営に「改革」は起こるのであろうか。


    転職意志図表15
    「貴方の転職へのスタンスはどのようなものですか」に対して、64.6%が「現在具体的に転職準備中である」か「良い転職案件があれば転職する」と回答している。一方、「当面転職するつもりはない」が25.8%であった。「将来も転職するつもりは無い」と言い切っている人は2.6%(8人)に過ぎない。大方の人が転職を考えている(アンケートに回答した人は、必ずしも転職目的で当社と連絡を取り合っている人ではない)。この傾向は日系金融・外資系別でも同じであった。当然であるが、年齢が高くなるに従って転職意欲は低下する。専門性別では、「債券ビジネス」と「資産運用」で転職意欲が相対的に大きい。「債券ビジネス」では、一年毎に評価が確定するから転職の動機が起こりやすいが、中・長期のビジネスである「企業金融」や「投資ファンド」では転職動機が起こりにくい。「資産運用」も中・長期ビジネスであるが、転職意欲が大きいのはこのビジネスの現時点での不安定さを反映していると考えられる。


    転職の判断基準図表16
    「転職をするとすれば、何を判断基準としますか」(最大で三つ選択可能)に対しては、「自分のやりたいビジネス・職責・プロダクトであること」が圧倒的多数(66.0%)であった。日系金融・外資系の別では、外資系の人の方が、より「やりたいこと」にこだわっていた。二番目の基準は「報酬が上がること」(41.5%)となっている。日系金融・外資系別でみれば、日系金融の人の方がより「報酬」にこだわっている。これは日系金融での年収が著しく低下しており、「不満」の表れと言えるかも知れない。三番目の基準は「中・長期的なキャリアにフィットしていること」(36.0%)である。上記したように「キャリア指向」が転職の基準にも反映している。この傾向は日系金融・外資系別の全体では大差は無い。しかし年齢別を日系金融と外資系で見た場合、日系金融の人では、年齢が上がっていくにつれて「やりたいこと」が少なくなり、外資系の人では、逆に多くなっている。これは、日本の金融機関では「ジェネラリスト」として育成されるのに対して、外資系のプロは元々、自分の専門性への「こだわり」をもっているからである。専門性別では、「やりたいこと」へのこだわりは「債券ビジネス」→「企業金融」→「資産運用」→「投資ファンド」へと増大する。各々のビジネスの性質上当然の傾向であろう。逆に、「報酬」へのこだわりは「投資ファンド」と「債券ビジネス」で高く、「資産運用」で非常に低い。これも自然である。従って、外部採用を計画するのであれば、日本の金融機関も外資系も、候補者の「志・キャリアプラン・やりたいこと」に照準をあわせて口説かなければならない。


    転職希望先図表17
    結論として、「今後転職するとすれば、どこを選択しますか」との質問に対し、233人(有効回答者383人中60.8%)が、「外資系」、即ち外資系の投資銀行、銀行、資産運用会社、コンサルティング会社等に転職したいと考えている。次に、129人(同、33.7%)が「日系その他」、即ち日本の独立系資産運用会社(日本版ヘッジファンドを含む)や日本の独立系M&Aファーム等を選択している。「日系金融」、即ち日本の銀行・証券会社への転職希望者はわずか21人(同、5.5%)に過ぎない。この現実は、日本の金融機関の経営者や人事担当者の認識と大きく違っている。「由々しき事態」と言わなければならない。メガバンクの一部経営者は「メガバンクによる金融支配が確立しつつあり、優秀な人材の採用も可能になる」と嘯くが、実態とかけ離れている。


    転職のルートと転職市場の現況図表18
    転職ルートでは、・「民間人材紹介会社」が一番多い(転職延べ人数の36.3%)。次に、・「友人・知人の紹介」(同、33.0%)、・「直接応募」(同、13.3%)、・「企業のウエブサイトの採用情報」(同、9.5%)であった。・「新聞・雑誌の求人広告」は、転職延べ人数の4.7%でしかない。即ち、「金融のプロは新聞広告では転職しない」という当社の見方が裏付けられている。

    一方で、「日本の転職市場は全体として機能しているか」との質問に対し、43.7%が「否定」している。「否定」の過半は「市場として整備されていない」からであるが、2割近い人が「良い人材紹介会社が少ない」と指摘している。「日本の金融転職市場の創設」を企業理念と掲げる当社としては、一層の努力をしなければならないと覚悟している。

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    第二章 金融人材市場の概観と金融ビジネス別の現状

    I.金融人材市場の概観

    金融ビジネス別の人材需要は、M&A等の「投資銀行ビジネス」、私募ファンド等での「不動産ファイナンス」、メガバン クによる証券化等の「ストラクチャード・ファイナンス」、オルターナティブやヘッジファンドの「資産運用」、そして、 企業・事業再生やプリンシパル・インベストメントの「投資ビジネス」に偏っており、かつて金融人材需要の大層を占めた デリバティブや仕組み債の「マーケットリスク・ビジネス」は少なくなっている。


    ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成17年7月31日現在)

    金融ビジネス
    プロダクト
    投資銀行ビジネス
    16
    26.2
    カバレッジ、M&A、引受け、IPO
    ストラクチャード・ファイナンスとクレジット
    14
    23.0
    証券化等のストラクチャード・ファイナンス、M&Aファイナンス、
    メザニン等のハイイールド・ファイナンス、PFI、シンジケートローン、CDS等のクレジット・デリバティブ
    資産運用
    8
    13.1
    オルターナティブ、ヘッジファンド、投信・投資顧問
    マーケットリスク・ビジネス
    8
    13.1
    デリバティブ、仕組み債、JGB、為替
    投資ビジネス
    6
    9.8
    バイアウト等、ファンド投資、プリンシパル・インベストメント、VC
    不動産ファイナンス
    5
    8.2
    不動産の購入やファイナンス、証券化、エグゼキューション、私募ファンド、REIT
    その他
    4
    6.6
    株式、リサーチ、オペレーションほか
    合計
    61
    100.0
     
    1.急速に回復する日本の金融人材市場

    日本企業の急速な業績の回復と銀行の不良債権問題の収束は、世界的な「金余り」と相俟って、日本の金融ビジネスに大きな変化を引き起こしている。このため、ITバブルの崩壊以降低迷していた「金融人材市場」は、久し振りに活況を呈している。即ち、下記2で説明するように、日本の銀行・証券会社が、これまで「金融人材市場」の主役であった外資系金融機関に代わって、大量の中途採用を計画している。また、下記3で説明するように、新しい金融ビジネスでの人材需要が勃興している。外資系金融機関の採用は年末年始に集中するが、今年の「転職シーズン」は日本の金融機関及び外資系が入り乱れて大盛況すると予想される。

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    2.「主・客交代」する日本の金融人材市場

    この十数年、外資系金融機関が日本の金融ビジネスの進化を大きくリードしていた。外資系が持ち込んだ数々の先端金融商品、グローバルなネットワーク、強いトレーディング力は目を見張るものがあった。日本の金融機関の優秀な若者は、こぞって一流の外資系金融機関に転職した。それは日本の金融産業にとっても、良いことであった。しかし過去一年、この人材市場での「主・客」が交代し始めている。即ち、金融庁の指導で三つのメガバンクに収斂した邦銀は、系列証券との連携を強化しながら、日本の金融を完全に支配しつつある。現在ディールのフローは殆んどメガ系に集中しているという。この流れに対応するため、各メガバンクは大量の人材採用を計画している。あらゆる部門で人材需要があるが、特に強いのは、M&A、証券化、不動産ファイナンス、MBO/LBOファイナンス、オルターナティブ投資、シンジケート・ローン、アジア地域等である。

    一方、外資系金融機関は商品力での優位性が崩れ始めており、苦戦を強いられている。端的に言えば、かつて東京支店の過半の収益を稼ぎ出していたデリバティブの収益力は大きく落ち込んでいる。大手の外資系投資銀行ですら、特に「債券・株式」では顧客基盤の大きさではメガバンクと比較にならず、営業戦力も二桁違うとして「ギブアップ宣言」している。また、外資系が優位にある商品力でも、日本の金融機関への販売ではビッド合戦を強いられ、収益性を大きく減らしている。金融ビジネスでの「主・客」交代は、第一章で報告の通り、当社のアンケート結果(「メガバンク有利」が33.3%で「外資系有利」が22.8%)でも確認されている。

    しかし、そのトレンドにあっても、米系トップクラスの投資銀行は健闘している。M&Aでの大型案件、外国人投資家による活発な日本株売買、プリンシパル・インベストメントでの大きなゲインの実現等により、前年比大幅な増益を確保している。米系投資銀行は、その戦略性、トレーディング力、グローバルネットワークを駆使した総合力では群を抜いている。クロスボーダーのM&Aやグローバルな市場での引受けは彼らの独壇場である。従って人材需要も堅調である。一方、一部の欧州系ユニバーサルバンクが東京支店で採用しているところもあるが、これは、ユーロ市場へのオイルマネーの流入やユーロ高(円の割安感)の恩恵を利用しての、一時的な動きである。日本市場に対する「戦略」を持たない欧州系金融機関の拡大には、安易に乗ってはいけないと思う。

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    3.人材需要の変化と拡大

    ・で説明するが、金融ビジネス別の人材需要では大きな偏りが見られる。即ち、・世界的な「金余り」に支えられたプリンシパル・インベストメントやファンド投資による「投資ビジネスの隆盛」であり、・企業業績の急回復と新会社法の施行による「M&Aブーム」、・ヘッジファンドの拡大と銀行による本格的な自己投資に特徴付けられる「オルターナティブ投資の拡大」である。これらのビジネスで人材需要が強くなっている。

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    II.金融ビジネス別人材需要

    1.投資ビジネスの隆盛

    (1)「企業・事業再生」への投資からMBOへ
    1997年での邦銀による不良債権の外資系投資銀行へのバルクセール(ディストレス・ビジネス)から始まった「投資ビジネス」は、企業のリストラ支援のための「企業・事業再生」ビジネスへ移行し、ベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティの勃興を経て、最近MBOへと進んでいる。「企業・事業再生」ビジネスは地方へ波及しつつある。これらの投資は「プリンシパル(自己資金)」や「ファンド」を用いて行われた。「ファンド資本主義」の幕開けである。特に、米系トップクラスの投資銀行が行っているプリンシパル・インベストメントは、「リスクを取らなければゲインは無いし、リスクマネジメントも学べない」という資本主義原理の遂行である。実際、彼らは大きな収益を上げている。これに習って、日本の大手証券会社もプリンシパル・インベストメントでの投資を増やしている。

    これらの「投資ビジネス」は1990年代末期以降の日本経済の活性化に大きく寄与し、人材の吸収力もあった。この流れを決定付けたのは、金融庁によるりそな銀行への公的資金の注入と新生銀行の株式再上場の成功であった。これらが、海外投資家や年金基金の投資への安心感をもたらした。また、産業再生機構の果たした役割も大きいと評価される。

    求められた人材は、ディストレス・ビジネスでは、不良債権の購入担当(ソーシング)、バリュエーションやデューディリジェンスの経験者、転売担当(プレースメント)であった。しかし、このビジネスの担い手は巨大な資本を持つ外資系投資銀行や海外ファンドに限られていた。その後の「企業・事業再生」ビジネスでの人材需要は、外資系及び邦銀系とも、ファインディング担当(再生可能先の発掘、選定の目利き)、財務リストラのプロ(債務免除やデット・エクイティ・スワップの調整、DIPファイナンス、メザニン等のアレンジメント)、再生のプロ(ターンアラウンド・マネジャー)等であった。また、エグゼキューション(キャッシュフローの計算やドキュメンテーション)のために大量の若手が採用された。彼らは「奴隷」と呼ばれ24時間労働を強いられた。また、ゴルフ場やホテル、リゾート、消費者金融、その他投資先の産業で長い経験を持つプロ(インダストリアル・パートナーと呼ばれる)への人材需要も強かった。この「投資ビジネス」の拡大を「再生アドバイザリー」としてサポートした、外資系投資銀行のカバレッジ部門での人材需要もあった。

    長らく資金繰りに苦しんだ日本企業は業績を急回復し、一転、1/3の上場企業が実質無借金となった。株主を無視した企業は、ホリエモン騒動や商法改正の影響もあり、「敵対的買収」のターゲットとなる。株式市場ではTOB合戦が頻発し始めた。ここでは「攻める方」も「守る方」も、「金余り」の恩恵を受けて「ファンド」を活用する。またMBO/LBOファイナンス等、デット・ファイナンスも活用される。この活況の中で、これまで日本進出を逡巡していたKKR等、欧米の巨大投資ファンドが日本法人を設立しつつある。今後これらの動きに伴う人材需要が拡大するが、ここで求められる能力は、投資先との折衝力(「クリティカル・インテリジェンス」を要すると言われる)、企業価値の評価・審査能力、エグゼキューションの経験等である。

    最近、先発した投資のプロたちが大資本の傘下から独立している。彼らは投資ファンドの「第一期生」とも呼ばれるプロで、自由とより高い報酬を求めてファンドを作って独立している。彼らには実績があることから、ファンドも集まり商機もついてくると考えられる。新しい人材の動きである。

    「投資ファンド」の一つとして「伝統的」なプライベート・エクイティ(PE)がある。「外資系」は2000年前後に日本に進出した。当時、「独立系」PEとともに「日本再生」への貢献を期待された。数年掛かったが、最近では投資も実現し業績も順調に推移しているようだ。しかし「伝統的」PEは「投資哲学」や「採算」(IRRで20〜30%)にこだわるため、いずれもコジンマリとまとまってしまった。ファンドの規模も500億円〜1000億円が限度である。現在、「PE」と定義されるファンドの金額を合計しても1兆円にも満たない。これは日本経済の規模に比較して、特に「不良債権」に分類される銀行融資がまだ十兆円規模で残っている現状、小さすぎる。「バイアウト・ファンドは私企業に過ぎず、社会的役割を期待されるのは筋違い」と開き直るのであれば、彼らはそれだけの人々とも言える。「伝統的」PEでは、設立当初は別にして、人材吸収の効果も小さかった。

    上記したように「投資ビジネス」での中身が急激に変化しており、金融プロは「キャリア選択」に苦労している。かつて「不良債権」を購入・転売して巨額のボーナスを得ていたソーサー(購入担当)やトレーダー(転売担当)、回収のサービサー、担保不動産のソーサー、「企業・事業再生」での財務リストラ担当、脚光を浴びたターンアラウンド・マネジャーは、職を失いつつある。彼らの内、特に「購入・転売」や「財務リストラ」しか出来ない人々は転職先探しに苦戦している。これからは事業リスクへのファイナンスや、ハイイールド、メザニンといった高いクレジット・リスク(擬似エクイティ)に対するファイナンスに専門性を持たなければ、人材需要の対象にならない。また、30歳そこそこの投資銀行家が「事業法人のCFOや経営企画部長になりたい。バンカー出身として企業経営の役に立ちたいので、案件を紹介して欲しい」と当社を訪れる。「志や良し」だが、「世の中」をナメている。


    (2)不動産投資
    不良債権問題の原因は不動産バブルの崩壊であったが、この問題の解決の糸口を提示したのが、1990年代の中旬から登場したDCF法に基づく「不動産投資ファンド」であった。この拡大は日本経済の回復に大きく寄与した。大きな人材吸収力もあった。1997年から2004年の間、私募、公募合わせて約20兆円の不動産が証券化された(残高は10兆円程度)。内、REITは2.5兆円である。都心のオフイスビルのキャップレートは3%台に低下し、一部に「不動産はバブル」と警戒されているが、まだ大手のファンドは買い進んでいる。上場不動産ファンド会社の業績も前年比数十%の増益で、来年もそのトレンドにあると言われる。この動きを支えたのが世界的な「金余り」であり、年金等機関投資家による「オルターナティブ投資」の拡大である。確かに不動産ビジネスは「バブル」と懸念されるが、時価総額1000兆円を越える日本の不動産の価格は、全体としてはまだ低下傾向にある。たかだか10〜20兆円の投資で「バブル崩壊」は早すぎると思う。知恵を出して、不動産投資が中・長期的にも拡大するように、このビジネスのプロは頑張って欲しい。

    不動産投資で最も強い人材需要はソーサー(物件の購入担当)宛てである。但し、彼らの年収も現状「バブル」状況である。「キャップレート3%台でもよいから100億円の物件を仕入れてほしい。その場合1億円支払う」という報酬条件である。その他、バリュエーション、エグゼキューション、ノンリコース・ローン、証券化(CMBSやRMBS)の組成、証券のプレースメント、年金基金等機関投資家宛て不動産ファンドのマーケティング、さらに、プロパティマネジャーと呼ばれる投資価値の改善担当等である。人材需要は多岐に亘っている。そして、不動産投資ビジネスの広がりの一つが「出口」としてのREITである。日本のREITの時価総額は3兆円弱(22銘柄)であるが、米国での20兆円に比較するとまだ拡大の余地がある。ここでの人材需要は、購入担当はもとより、REIT上場のための当局対応を含めた諸手続きの担当、商品企画担当、IR担当等である。人材需要はまだ強い。

    人材需要のもう一つの特徴は、不動産ファイナンス(不動産ノンリコースローン)での「質」の変化である。これまでは、「物件価値」に注目したファイナンス、即ち「アセット・ファイナンス」と呼ばれていたが、これからは、物件を活用しての「事業価値」に注目した「事業ファイナンス」へ移行する。従ってプレーヤーには、より「コーポレート・ファイナンス」的な発想とリスクマネジメントの能力が求められる。一部のファイナンス担当がこの流れについて行けず、落ちこぼれている。

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    2.M&Aブーム

    昨年来の景気の回復基調、日本企業の株主無視の経営(今年の前半には「PBRが1を下回る」上場会社が400社程度あった)、ホリエモン騒動、新会社法の成立は、一気にM&Aブームをもたらした。M&A件数は1〜6月でも1284件と過去最高であった。金額も6.2兆円で、前年同期比で40%アップとなっている。また、「敵対的買収」に対する助言契約も大幅に増えている。TOBも昨年来24件と増えている。即ち、「M&Aブーム」と「TOB時代の幕開け」である。しかしこのディール・フローのほとんどがメガバンクに持ち込まれていると言う。従って、メガバンク系証券ではいずれもスタッフが大幅に不足している。外資系では「1億円以上のフィー」が見込めなければ取り上げられないが、最近は合併する社長同士が直接折衝して決めるためM&A手数料が下がり、また、外資系が狙う大きな案件やクロスボーダーのM&Aがたくさんあるわけではない。トップクラスの米系投資銀行は堅調のようだが、二番手以下は苦戦している。

    メガバンク系の証券会社には、銀行の支店網を通じて膨大な量のM&A案件がもたらされている。つまりメガバンク系証券からの人材需要は、ファインディング担当というよりディールの完遂者である。多くの場合「売り」案件であるから、担当者は「買う」先を見つけ、折衝し、成約にこぎつける。従って求められる人材は、M&Aの一般的なノウハウに加えて、顧客とのコミュニケーション能力のある人、常識人が好まれる。逆に言えば、外資系のように、大口のM&Aの商機を見つけてくる力は必要無い。ここでは「期限を定めた雇用契約」であるが、報酬は邦銀総合職の2〜3倍となる。今後この流れは加速するので、外資系の「実績の無いM&A」よりキャリアになる。

    外資系が得意とする「敵対的買収」では、買収の攻防戦に必要な法規制・会計・税務の知識が求められる。一部の外資系の投資銀行部門で、買収防止助言契約の獲得担当やMSCB等エギゾティック・ファイナンス・スキームの開発者に対するニーズがあったが、これらの人材需要は、M&Aが本格化する来年以降に増大すると考えられる。

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    3.オルターナティブ投資の拡大

    (1)邦銀による「本格的な」自己投資の開始
    日本の間接金融市場は構造的に「預金超過」の状況にあり、今年3月末の預貸率は各行おしなべて120%程度である。銀行はこの「余剰資金」を国債で運用してきた。これは巨額の財政赤字に苦しむ政府のニーズにもマッチしていた。しかし銀行は、国債の運用利回りの低さに加え、ゼロ金利政策の解除によるキャピタルロスのリスクを抱えることになる。一方、「不良債権問題」から脱却しつつある大手邦銀はリスクテーク余力を増やしつつある。このような状況で、邦銀は本格的な運用体制を構築しつつある。投資対象は「オルターナティブ」である。平成17年度は、銀行による本格的な自己投資「元年」と呼ばれる。

    具体的な人材需要は、・ヘッジファンド投資のためのゲート・キーパーのような職責の担当、・ヘッジファンドの管理者、・リスクの高い債権の売買担当者(ローン・トレーディング、ハイイールドのようなハイリスクもの)、・投資適格格付けの債券投資担当者とそれをサポートするクレジット・アナリスト、・株式での運用者、・クレジット・デリバティブを駆使したローンポートフォリオ・マネジメントの担当者、・本格的な自己投資を始めるためのパイロット・ファンドの組成と運用者である。問題は、邦銀に自己投資で「プロの組織」を作る覚悟があるかである。数年前、生保や信託銀行がヘッジファンド運用を開始した時、「それなりの報酬」を払ってマーケットからプロを採用することに躊躇し、社内のスタッフで間に合わせた。結果、大きなロスを出した。邦銀はこの前例から学んで、適切な組織作りをして欲しいと願っている。

    (2)ヘッジファンド
    日本の機関投資家は、ベンチマーク対比の伝統的な運用手法への失望や低金利環境への対応として、オルターナティブ投資を増やしている。不動産ファンド、再生ファンド、プライベート・エクイティもあるが、ヘッジファンドへの投資が急拡大している。ヘッジファンドは世界規模で約100兆円あり、日本からの投資も年々増加している。現在では5兆円程度あると考えられる。日本ではファンド・オブ・ヘッジファンズへの投資が主体である。年金基金のオルターナティブへの投資意欲の増大や銀行の自己投資の本格化もあって、人材需要が起こっている。需要はバイサイドで強い。ファンド・オブ・ヘッジファンズ投資では、日本人ゲート・キーパーが少ないので、海外のゲート・キーパーを使った投資担当への需要であった。その他デューディリジェンス担当、管理担当等である。セルサイドとしては、外資系金融機関でファンド・デリバティブの人材需要があった。欧州系ユニバーサルバンクは本社がファンドに投資している。デューディリジェンスもきちっと行われていることから、このファンドをデリバティブを駆使して仕組み直し(元本保証型等)、個人富裕層や地銀向け投資信託に仕立てる。主として欧州系銀行からこの担当者に対する需要があった。このポジションでは、投資信託の組成に関わる法規制の知識や経験が求められた。しかしGMショックで、少なくとも人材需要は大きくならなかった。

    かつて外資系証券会社で、株やデリバティブのトレーディング、セールス、クオンツで名をはせたツワモノが、独立してヘッジファンドを設立している。自由を求めて香港でプレーするプロもいる。しかし「玉石混交」で、大成功したファンド・マネジャーもいるが脱落予備軍も多い。最近ではヘッジファンドの運用者への報酬条件も厳しくなり、「管理手数料ゼロで成功報酬だけ」のファンドも出てきた。従ってジョブ・セキュリティを心配して、大手の機関投資家に戻るファンド・マネジャーもいる。また、腕に自信はあるが、シードマネーが無かったりインフラを必要とするプロのために、インキュベーターとして支援するビジネスも出てきている。新しい人材の流れである。

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    おわりに
    平成17年の金融ビジネスと金融人材市場は「時代の転換期」にある。「会社人間」の呪縛から解き放された職業人は、好むと好まざるとに関わらず、自らの意志と力で「キャリア」を構築しなければならない。即ち、職業人は、これまでのように「会社」や「仕事」という「客体」にあわせて生きていくのではなく、これからは、「自分」という「主体」を中心に生きて、「キャリア」と「個人生活」を両立させなければならない。

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    ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成17年7月31日現在)
    金融ビジネス
    プロダクト
    投資銀行ビジネス
    16
    26.2
    カバレッジ、M&A、引受け、IPO
    ストラクチャード・ファイナンスとクレジット
    14
    23.0
    証券化等のストラクチャード・ファイナンス、M&Aファイナンス、
    メザニン等のハイイールド・ファイナンス、PFI、シンジケートローン、CDS等のクレジット・デリバティブ
    資産運用
    8
    13.1
    オルターナティブ、ヘッジファンド、投信・投資顧問
    マーケットリスク・ビジネス
    8
    13.1
    デリバティブ、仕組み債、JGB、為替
    投資ビジネス
    6
    9.8
    バイアウト等、ファンド投資、プリンシパル・インベストメント、VC
    不動産ファイナンス
    5
    8.2
    不動産の購入やファイナンス、証券化、エグゼキューション、私募ファンド、REIT
    その他
    4
    6.6
    株式、リサーチ、オペレーションほか
    合計
    61
    100.0
     



    筆者のプロフィール:
    小溝 勝信(こみぞ かつのぶ)
    1968年東京大学教養学部国際関係論分科を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行・主として国際部に従した。1984年に外銀に転じ、 ファースト・シカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任した。人材コンサルティングに転ずるため、1989年米国の大手ファームの一つで あるホイットニー・グループ日本支社に入社し、副支社長に就任した。1993年、日本型のエグゼクティブ・サーチの創設を目指してヘッ ズジャパンに転じ、金融部門マネジング・ディレクターに就任した。2004年エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立した。
    このレポートは、筆者がヘッズジャパンで1994年以来半年毎に報告していた「外資系金融機関の最近の人事事情について」の連続版である。

    エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のプロフィール:
    小溝勝信が15年の経験の集大成として2004年に設立された。日本の金融人材市場に、初めての、本格的な、日本版の「エグゼクティブ ・サーチ・コンサルティング」の創設を志します。
    詳細はホーム・ページをご参照頂きたい。

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