| II.分析
1.金融プロを取り巻く環境について
「金融環境についての基本的な認識」(データは、図表1−@〜Eを参照頂きたい)
回答者の大多数が「日本の不良債権問題は峠を越した」と認識しており、「日本経済も回復基調にある」と考えている。 「長期的にも楽観的な観測」を持っている。「金融庁の金融行政を基本的には評価しておらず」、「金融コングロマリッ
ト政策にも懐疑的」である。ビジネスの流れについては、多くが「不動産ビジネスはバブル化している」と認識しており 、圧倒的多数が「今後M&Aが頻発する」と予想している。これらの回答は一般的な認識と大差無いと考えられる。
「米国資本主義が世界を席捲するか」(図表2)
全回答者の内「肯定」が35.5%で、「否定」が42.3%と「否定」が多いものの、賛否は拮抗していると言えなく も無い。「否定」した回答者には、「米国資本主義が唯一の経済体制ではない」というグローバリゼーションへの反発も
あると考えられる。日系金融・外資系別で見ると、日本の金融機関の人の方がより否定的である。年齢別で見ると、30 歳代より40歳代の方が肯定的であるのは興味深い。海外経験のある人の方が無い人より肯定的である。
「ニッポン放送買収騒動でのホリエモンの行動を評価するか」(図表3)
「肯定」が50.8%、「否定」が19.0%で、金融マンは圧倒的にホリエモンの行動を支持している。この傾向は、 日系金融・外資系別でも、年齢別でも同じであった。即ち、今後新会社法の施行等で「敵対的買収」が増えることも予想
されるが、その覚悟の表れでもあろう。
「会社は誰のものか」(図表4)
会社は「株主のもの」「経営者や従業員のもの」「さまざまなステークホルダーが共有するもの」のどれかという質問 に対して、回答は「ステークホルダーの共有」(53.0%)が最大であったが、「株主のもの」(44.0%)と拮
抗している。「経営者や従業員のもの」との回答は2.8%に過ぎなかった。「共有」が多いのは、「企業一家主義」と いう伝統的な日本型経営の意識が、いまだに金融マンの心に残っているのか、日本の金融マンが「新しい」日本の企業文
化の構築を期待しているのか分からない。日系金融で「共有」の比率が高いのは理解出来るが、50歳以降の人が「株 主のもの」と考えているのは興味深い。
「成果主義報酬制度は正しいか」(図表5)
圧倒的多数が「肯定」(57.8%)しており、「否定」(12.0%)の5倍、「中立」(30.0%)の2倍いる。 しかし、外資系では「否定」と「肯定」に大きな違いがあるが、日系金融では大きな差は無かった。即ち、ここに外資系
の金融プロと日本の金融マンに明確な違いが見える。特に「経営層」の間では、外資系(「肯定」が67.5%、「否定」 が6.5%)と日系金融(「肯定」が45.2%、「否定」が16.7%)での差が大きかった。勿論、日本の銀行・証
券と外資系金融機関ではこのマーケットに対するミッションが違うため「報酬」に対する考え方も違って当然だが、日本 の金融機関の役職員には「成果主義報酬制度」への戸惑いが見える。これが、日本の金融機関における「改革」のテンポ
を遅くしている原因と考えられる。年代別に見ると、30歳代より40歳代の方が「成果主義報酬制度」をより支持して いるのは興味深い。専門性別では「債券ビジネス」と「投資ファンド」で「肯定」が比較的多く、「企業金融」や「資産
運用」で比較的少なくなっている。これは、それぞれのビジネスの性質の違いを反映していると考えられる。特に「投資 ファンド」では「肯定」が非常に多い。これはエグジットして得たゲインから配分を受けるビジネスであるから、当然と
言える。
「日本の金融機関の経営は全体として評価出来るか」(図表6−@、A)
圧倒的多数が「否定」している。即ち、全回答者の内307人(76.8%)が「否定」しており、 「肯定」は21人(5.3%)に過ぎない。この判断は日系金融・外資系別や年齢別を問わない。日本
の金融機関の「経営層」でも78.6%が「否定」している。日本の金融機関のほとんどの経営層自身 が「評価出来ない」としているのはどういうことか。彼らに経営者としての自覚が不足しているのか、
日本の金融産業の構造的な問題なのか。
「否定」する理由は、「経営者が悪い」が最大(「否定」の46.3%)で、「企業文化が悪い」(同 、18.9%)や「人事・報酬制度が悪い」(同、18.2%)を大きく超えている。この傾向は日系
金融・外資系別を問わない。金融市場では日本の金融機関の経営者への「失望感」が大きい。
「日本の金融機関が業績を回復するために必要な政策は何か」(最大で三つ選択可能)に対しては (図表7)、・「経営者/従業員の意識改革」(54.2%)、・「経営統治方式の改善と組織改革」(3
8.5%)、・「年功序列/ジェネラリスト重視から専門性を評価する企業文化・人事制度の構築」(3 4.8%)・「資本コスト経営の徹底」(29.0%)、・「経営者の外部採用」(27.3%)、・「
リスクに見合ったプライシング」(23.8%)、・「プロの外部採用」(20.8%)の順番で提案 されている。即ち、役職員の意識、経営手法、人事制度で幅広い改革が求められている。
問題は、市場でのこの「極めて低い」評価を邦銀の経営者が「深刻」に受け止めていないことである。邦 銀の多くは、2〜3年前には「債務超過」「国有化」と騒がれ、公的資金が注入され、ゼロ金利政策の継
続で預金者を犠牲(預金者から銀行への所得の移転)にして救済されたことを既に忘れている。即ち、邦 銀は「失われた10年」から全く学んでいない。
日本の金融機関は、相変わらず、集団主義という無責任体制、シェア重視、情実人事等の「日本型経営」 から脱却出来ていない。外部採用を忌避して「閉鎖主義」にこだわり、経営が「独善」に陥っている。こ
れは、「日本の金融機関を保護する」という「既存システム」が、近年揺さぶられてはいるが、いまだに 「破壊」されていないことによる。日本の金融機関の役職員に「既得権」意識が根強く残っている。従っ
て、資本主義的な経営が行われないため、政策や組織編制が資本コスト/収益性に基づいて決定されない。 「資本コスト」経営をしていない証拠は、一般融資は言うに及ばず、シンジケート・ローン、不動産のノン
・リコースローン等でメガバンク同士がダンピング合戦していることである。邦銀は「儲かりもしない」 ビジネスに大量の人員を貼り付け、シェアが上がったと自己満足している。この「お粗末な経営」に因る
「低い収益力」と「低い株価」は、巨大外国資本の格好の「買収ターゲット」となり得る(東京三菱銀行とU FJ銀行が合併しても、時価総額はシティグループや香港上海銀行の半分にも及ばない)。もっとも、「日本
の銀行は巨額の資金を使って買収するに値するか」という疑問はある。
邦銀の人事制度は、「専門性」や「業績評価」を軽視する。今日でも「日本型職能資格制度」(年齢が上 がると能力も上がると前提する)を堅持している。そして「クオリティ重視」と称する不透明な人事が行
われている。勿論、従業員の「質」は最も重要な経営要素であるが、「クオリティ優先」の人事は一部の 「コア」人材に対するものであって、投資銀行の金融プロまで一律に適用すべきではない。
邦銀の組織は外資系と大きく違う。外資系では、現場の長、即ち部長や部門長レベルは「現場で勝ち残っ た人」から選ばれる(勿論、定量評価と定性評価で決定される)。その「長」(マネジング・ディレクタ
ーと呼ばれる)は、ビジネス遂行のための権限(業務の範囲、認められたリスクとコスト、人材採用の決 定権、ボーナスの配分権等)を与えられる。勿論、結果責任も問われる。この職責は当該ビジネスのプロ
でなければ果たせない。しかし日本の金融機関は「ジェネラリスト指向」であるから、「素人」が、ジョ ブ・ローテーションで部長として転勤してくる。これでは専門性と経験を武器に戦う金融ビジネスでは勝
てない。「プロ」は「素人」の上司を信用しないから、日本の金融機関は外資系のプロを採用出来ない。
「日本の金融機関の中途採用は正しいか」(図表8−@、A)
商機は日ごとにメガバンクに集中しつつある。しかし、大幅なリストラと極端な新卒採用の縮小により邦銀の年齢構成は極端にいび つになり、大幅な戦力不足に陥っている。メガバンクは、これを一気に取り戻そうとして大量の中途採用を計画している。しかし、
人材市場での評価は辛い。即ち、全回答者の内192人(48.0%)が「否定」している。「肯定」は85人(21.3%)と「 否定」の半分以下である。この「否定」の傾向は日系金融・外資系別を問わない。従って、メガバンクには膨大な量の人材需要があ
るが、殆んどうまく採用出来ていない。
「否定」する理由(最大で三つ選択可能)は、・「受け入れ体制が整っていない。目的・方針・戦略が明確でない」(「否定」の72 .4%)、・「中途採用者の人事・報酬制度が確立していない/明確でない」(同、62.0%)、・「職責・権限の範囲がはっきり
しないことが多い」(同、35.9%)、・「報酬が安すぎる」(同、27.1%)、・「出世が出来ない」(同、24.0%)、・ 「権限・自由度が与えられない」(同、23.4%)、・「中途採用者がいじめられる」(同、23.4%%)となっている。
日本の金融機関が中途採用を希望する「30歳代」の金融マンでも、66.3%が「否定」している。さらに、77.6%の外資 系の若者が日本の金融機関は「嫌い」と回答している。これでは中途採用は出来ない。専門性別で見ると、特に「企業金融」の人
に「否定」が多い。地位別では、日系金融、外資系とも「経営層」は日本の金融機関の中途採用に「寛容」である。日々の判断を 行う彼らは「仕方が無い」と考えるのであろうか。
な報酬も少ない。差別化が行われず、同期トップとボトムの年収の差はせいぜい1〜2百万円である。一般に「成果主義」の欠陥 が指摘されるが、金融ビジネス、特に投資銀行ビジネスでは「平等主義」は破棄されなければならない。まして、中途採用者に対
する報酬条件では意味を成さない。即ち、日本の金融機関での中途採用者への報酬条件は、・「総合職」であれば生え抜きと同一 条件(しかし年金、退職金で不利になる)。・お金が欲しければ「1〜2年の有期雇用契約=嘱託」とし、年収は生え抜きの1.
5倍程度とする。しかし、業績に対する上乗せは期待出来ない上、退職金や年金が無いことから、実質1.3倍程度にしかならな い。また、銀行の人事部は「実質」パーマネント契約であり雇用の安定性はあると説明するが、「契約が延長されないリスク」は
十分にある。勿論、下記に報告するが、転職は「報酬」だけが目当てではなく、「やりがい」や「キャリアアップ」も重視される 。しかし、メガバンクでは一顧だにされない。日本の金融機関の中途採用者は現状「使い捨て」である(メガバンクへの合併以前に
雇用された中途採用者は、リストラの過程で殆んど退職させられた)。これでは優秀なプロの中途採用は不可能だが、メガバンク は「超一流の当行の採用であるから、対象は一流の金融マンに限られる」と条件付ける。しかも「即戦力であり報酬条件も似てい
るから、他のメガバンクから採りたい」と言う。全く「独り善がり」の採用計画と言わざるを得ない。
中途採用者の「職責」も間違っている。即ち、「プロ」を外部採用するためには「組織や権限の調整」「報酬」「閉鎖的な企業文 化の改革」等々、さまざまなインフラ整備が必要である。しかし「プロ」の中途採用者は、現時点では、既存組織の「一兵卒」と
して押し込められる。どんなに優秀で稼ぐプロであっても、日本の金融機関では部長、部門長、ましてや執行役員に任命されるこ とは無い。これは、「経営は中途採用者には任せられない」という邦銀の原理主義に基づく。しかし、「中途採用者は経営に関わ
ることは無い」として、中途採用の「プロ」にディール遂行のための明確な「権限と責任」が与えられるのか。一般に、「プロ」 は「権限が明確でなければ実力を発揮出来ないし、責任も負えない」と考える。「稼ぐ」プロはいつも「権限と責任」の狭間で追
い込まれ、苦闘して成果をあげる。しかし日本の金融機関では、中途採用の「プロ」がレポートする「長」ですら「権限と責任」 が与えられていない。しかも「長」のほとんどは「半分素人」である。従って外部の優秀な「プロ」はメガバンクに応募しない。
「外資系金融機関東京支店の経営は全体として評価出来るか」(図表9−@、A)
それでは外資系に対する評価はどうなっているか。全回答者の内「肯定」は25.8%、「否定」は33.5%、「中立」が39. 3%となっている。「肯定」は少ないものの、日本の金融機関に対するように一刀両断に「否定」しているわけではない。これは一
般市民の「外資ハゲタカ」批判とは少し違っているように思う。日系金融・外資系別で見ると、日系金融の人では「否定」(40. 5%)が「肯定」(17.9%)の2倍以上になっているのに対し、外資系では「肯定」(31.5%)が「否定」(26.1%)
より多い。認識の違いがはっきり見える。
「肯定」の理由は、・「グローバルな経営が良い」(「肯定」の22.3%)、・「人材が良質である」(同、19.4%)、・「 人事・報酬制度が良い」(同、18.4%)、・「国際的なネットワークを持つ」(同、14.6%)、・「商品が良い」(同、
12.6%)であった。「否定」の理由では、・「日本市場へのコミットメントが小さい」が圧倒的に多い(「否定」の42.5 %)。次に・「企業文化が悪い」(同、20.9%)、・「東京支店の経営・経営者が悪い」(同、15.7%)、・「顧客ベー
スが小さい」(同、9.7%)、・「人材が良くない」(同、6.7%)と続く。
そして「外資系金融機関経営の改善の方策」(最大で三つ選択可能)への提案としては(図表10)、・「日本へのコミットメン
トの増大」(63.3%)が最大で、・「短期的な収益主義の改善」(41.5%)、・「本社から派遣される役員の質の改善」 (38.8%)、・「顧客ベースの強化」(36.3%)、・「日本市場向けの商品力の強化」(28.0%)、・「短期的な人
事評価・報酬制度の見直し」(25.3%)、・「人材の改善」(18.8%)と続く。日系金融・外資系の別では、日系金融の 人は外資系の短期収益至上主義を批判し、外資系の人は本社からの外人役員の質を問題にしている。
「日本における外資系金融機関の採用・雇用の方法は正しいか」(図表11−@、A)
全体では「否定」(34.3%)が「肯定」(22.8%)より多い。しかし、これも日本の金融機関の中途採用に対するほど評判は悪くない。「否定」する理由は、・「人事方針が本社の方針で大きく変化し、日本法人に確立した人事・採用方針が無い」(「否定」の51.1%)が最大で、次に・「本社や外人が実権を握っており、日本人に権限・自由度が与えられない」(同、40.9%)、・「ジョブ・セキュリティが不確実(すぐクビにする)」(同、40.1%)、・「実力より英語が重視され過ぎる」(同、38.0%)、・「人事・報酬制度がフェアでない」(同、33.6%)・「収益プレッシャーが強すぎる」(同、33.6%)、・「ベテランの力を軽視し過ぎる」(同、23.4%)と続く。日系金融・外資系別で見ると、外資系の人は日系金融の人ほど「否定」していない。専門性別で見ると、「肯定」は「債券ビジネス」と「投資ファンド」で多く、「企業金融」では少ない。「企業金融」で「肯定」が少ないのは、このビジネスは収益を上げるのに長い期間を要するため、外資系の採用・雇用のあり方に疑問を持つのかも知れない。
金融のホールセール・ビジネスはグローバルであるから、好むと好まざるとに関わらず、外資系金融機関東京支店の経営も人事も本社の世界戦略の指揮下に入る。当社は、東京支店の日本人従業員が「本社は日本の商慣習や実態を理解していない」と不満をもつことも、本社の外人経営者が「日本のスタッフはグローバル・スタンダードを知らない」と嘆く気持ちも理解出来る。だからこそ東京支店の日本人経営者はその間に立ち、「融合」した経営を作り上げなければならない。うまく行かなければ「外資系金融機関の日本人経営者には経営力が無い」と非難されてもやむを得ない。
「今後、日本の金融ビジネスでは、外資系金融機関よりメガバンクの方が有利か」(図表12)
昨今の日本経済の急激な変化を踏まえて質問した。全回答者の内133人(33.3%)が「メガバンク有利」と回答し、「外資系有利」の81人(20.3%)を凌駕している。しかし169人(42.3%)が「どちらとも言えない」と判断を留保している。全体としては、まだ明確な判断が行われていない。日系金融・外資系別で見ると、いずれも「メガバンク有利」が多いが、その傾向は日系金融の人の方が強い。しかし外資系の人でも、米系と欧州系では見方が違う。米系の人では「外資系有利」が27.2%であるのに対し、欧州系では17.9%であった。米系の人の方が強気である。地位別で見れば、日系金融の「経営層」と外資系とでは見方が反対になっている。即ち、日系金融の「経営層」が「メガバンク有利」としているのに対して、外資系は「外資系有利」としている。ただし外資系では判断を保留している人も多い。専門性別で見ると、「企業金融」では「メガバンク有利」が突出しており、「投資ファンド」では「外資系有利」が他の専門性の人より多い。いずれにしろこれからが勝負と考えられる。
不良債権が無ければ、邦銀は「儲かる」に決まっている。邦銀の寡占化とゼロ金利政策の継続で、2006年3月のメガバンクの決算は空前の好決算になると予想される。しかし、このトレンドへの対応を誤ると、メガバンクは「儲けすぎ」とバッシングされ、さまざまな後ろ向きの対策に忙殺されることになる。そのような事態を避けるためにも、メガバンクは早々に「開かれた」経営に転換する必要がある。
「今後、金融ビジネスではどの力を持つプロが有利か」(図表13)
全体では「強い顧客ベースを持つ人が有利」が38.3%と最大であるが、「専門性を持つ人が有利」が34.0%であり、 拮抗している。次に「良質な総合力を持つ人が有利」が19.5%となっている。日系金融・外資系別では、今後は「顧客ベ
ース」の構築が最も大切であると考える点では、外資系と日系の金融マンに認識の差は無い。地位別でも同じ傾向にある。し かし専門性別では、特に「資産運用」の人が「専門性」重視と回答しており、他のビジネスとは逆になっている。「資産運用
」は「運用力」で評価されるべきで「営業力」で売るものではないという、そのビジネスの「哲学」を表していると思われる。
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2.自身のキャリアについて
人生観(図表14)
「自身の人生観」について、「キャリアを中心に生きていく」「個人生活を大切にして生きていく」「仕事が命である」「会社が命である」「これらのバランスを取って生きていく」「その他」の選択肢の中から選んで頂いた。大半の258人(64.5%)が「これらのバランスを取って生きていく」と回答している。次に「キャリア中心」(16.0%)、「個人生活」(10.8%)、「仕事中心」(6.8%)の順番となっている。昔懐かしい「会社命」と回答した人は1人(0.3%)だけであった。この傾向は、日系金融・外資系別でも年齢別でも同じであった。即ち、金融マンは「キャリア構築」と「個人生活」の両立(「バランス型」)を追及していると解釈される。従って、明らかに、かつてのような「会社人間」や「仕事人間」から脱却している。
「職業人の就業観」の歴史的変遷を見ると、戦後しばらくは「会社命」「滅私奉公」「忠誠心」を持つ人が「サラリーマンの鏡」とされた。その後、日本経済の拡大にあわせ「仕事」に重点を置く風潮へ変わった。国民一人当たりの所得が世界のトップクラスとなるに至り、「余暇」や「個人生活」を大切に生きる人が増えた。「家庭には仕事を持ち込まない」と言う「マイホーム・パパ」の登場である。しかし、バブルの崩壊で「会社が一生面倒を見る」という約束手形を反故にされたサラリーマンは、失望し、「結局、自分の力で生きていくより仕方が無い」と考えるようになった。そして「自分の人生とは何か」を自問し、「自己実現」のユングが読まれた。今世紀に入り、ITバブルを経て、現在景気回復の過程にある職業人は「キャリア」と「個人生活」の両立を意識し始めている。
「職業人の就業観」が上記のものであれば、雇用者としての金融機関は、そのような個人と「共生」する人事体制を構築しなければならない。従って、従来のように企業への忠誠心を求めたり、ジョブ・ローテーションでジェネラリストをつくる人事政策は変更されなければならない。しかし、日本の金融機関は昔から「会社は従業員のものである」と言いながら、個人の人生観・就業観を無視してきた。従って、従業員への「キャリア自立支援」という考え方はまったく無い。まして、不良債権問題で経営危機に陥ると大幅なリストラを断行したのは、日本の金融機関の「企業一家主義」がいかに欺瞞に満ちたものであるかを証明している。これからメガバンクの経営に「改革」は起こるのであろうか。
転職意志(図表15)
「貴方の転職へのスタンスはどのようなものですか」に対して、64.6%が「現在具体的に転職準備中である」か「良い転職案件があれば転職する」と回答している。一方、「当面転職するつもりはない」が25.8%であった。「将来も転職するつもりは無い」と言い切っている人は2.6%(8人)に過ぎない。大方の人が転職を考えている(アンケートに回答した人は、必ずしも転職目的で当社と連絡を取り合っている人ではない)。この傾向は日系金融・外資系別でも同じであった。当然であるが、年齢が高くなるに従って転職意欲は低下する。専門性別では、「債券ビジネス」と「資産運用」で転職意欲が相対的に大きい。「債券ビジネス」では、一年毎に評価が確定するから転職の動機が起こりやすいが、中・長期のビジネスである「企業金融」や「投資ファンド」では転職動機が起こりにくい。「資産運用」も中・長期ビジネスであるが、転職意欲が大きいのはこのビジネスの現時点での不安定さを反映していると考えられる。
転職の判断基準(図表16)
「転職をするとすれば、何を判断基準としますか」(最大で三つ選択可能)に対しては、「自分のやりたいビジネス・職責・プロダクトであること」が圧倒的多数(66.0%)であった。日系金融・外資系の別では、外資系の人の方が、より「やりたいこと」にこだわっていた。二番目の基準は「報酬が上がること」(41.5%)となっている。日系金融・外資系別でみれば、日系金融の人の方がより「報酬」にこだわっている。これは日系金融での年収が著しく低下しており、「不満」の表れと言えるかも知れない。三番目の基準は「中・長期的なキャリアにフィットしていること」(36.0%)である。上記したように「キャリア指向」が転職の基準にも反映している。この傾向は日系金融・外資系別の全体では大差は無い。しかし年齢別を日系金融と外資系で見た場合、日系金融の人では、年齢が上がっていくにつれて「やりたいこと」が少なくなり、外資系の人では、逆に多くなっている。これは、日本の金融機関では「ジェネラリスト」として育成されるのに対して、外資系のプロは元々、自分の専門性への「こだわり」をもっているからである。専門性別では、「やりたいこと」へのこだわりは「債券ビジネス」→「企業金融」→「資産運用」→「投資ファンド」へと増大する。各々のビジネスの性質上当然の傾向であろう。逆に、「報酬」へのこだわりは「投資ファンド」と「債券ビジネス」で高く、「資産運用」で非常に低い。これも自然である。従って、外部採用を計画するのであれば、日本の金融機関も外資系も、候補者の「志・キャリアプラン・やりたいこと」に照準をあわせて口説かなければならない。
転職希望先(図表17)
結論として、「今後転職するとすれば、どこを選択しますか」との質問に対し、233人(有効回答者383人中60.8%)が、「外資系」、即ち外資系の投資銀行、銀行、資産運用会社、コンサルティング会社等に転職したいと考えている。次に、129人(同、33.7%)が「日系その他」、即ち日本の独立系資産運用会社(日本版ヘッジファンドを含む)や日本の独立系M&Aファーム等を選択している。「日系金融」、即ち日本の銀行・証券会社への転職希望者はわずか21人(同、5.5%)に過ぎない。この現実は、日本の金融機関の経営者や人事担当者の認識と大きく違っている。「由々しき事態」と言わなければならない。メガバンクの一部経営者は「メガバンクによる金融支配が確立しつつあり、優秀な人材の採用も可能になる」と嘯くが、実態とかけ離れている。
転職のルートと転職市場の現況(図表18)
転職ルートでは、・「民間人材紹介会社」が一番多い(転職延べ人数の36.3%)。次に、・「友人・知人の紹介」(同、33.0%)、・「直接応募」(同、13.3%)、・「企業のウエブサイトの採用情報」(同、9.5%)であった。・「新聞・雑誌の求人広告」は、転職延べ人数の4.7%でしかない。即ち、「金融のプロは新聞広告では転職しない」という当社の見方が裏付けられている。
一方で、「日本の転職市場は全体として機能しているか」との質問に対し、43.7%が「否定」している。「否定」の過半は「市場として整備されていない」からであるが、2割近い人が「良い人材紹介会社が少ない」と指摘している。「日本の金融転職市場の創設」を企業理念と掲げる当社としては、一層の努力をしなければならないと覚悟している。
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第二章 金融人材市場の概観と金融ビジネス別の現状
I.金融人材市場の概観
金融ビジネス別の人材需要は、M&A等の「投資銀行ビジネス」、私募ファンド等での「不動産ファイナンス」、メガバン クによる証券化等の「ストラクチャード・ファイナンス」、オルターナティブやヘッジファンドの「資産運用」、そして、
企業・事業再生やプリンシパル・インベストメントの「投資ビジネス」に偏っており、かつて金融人材需要の大層を占めた デリバティブや仕組み債の「マーケットリスク・ビジネス」は少なくなっている。
ESPのプロダクト別アサインメント残高(平成17年7月31日現在)
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