1. 現在メガバンクは、そのグループ内の証券会社も含め積極的に外部採用している。しかし、「量」及び「質」の確保においてまったくうまくいっていない。これにはさまざまな原因が指摘されるが、その一つは邦銀の「組織のあり方」である。
邦銀は、伝統的に「企業経営・企業文化」において、「専門性」や「業績評価」を軽視する。これは「良い言い方」で言えば、「ジェネラリスト」指向であり、「クオリティ指向」である。即ち、「経営は収益だけを追求しているわけではない」「稼ぐプロは往々にしてバランス感覚を欠く」「過度の成果主義は従業員のモティベーションを削ぐ」と。
これらの「言い草」は「半分」正しい。しかし、これを「悪い言い方」で言えば、「営業はクオリティの低い人がやる職責だ」「業績重視の人事は銀行の減点主義にそぐわない」「業績重視の人事を行うとエリートである自分が不利になる」「低収益だからと言って銀行の株主から指弾されているわけでは無い」となる。
この「悪い意味」での「専門性の軽視」や「成果主義の否定」がいまだに邦銀経営の根幹にある。世界的に低い収益力を、たいして「悪いこと」だと思っていない。「現に外資がメガバンクの株を10〜30%買っている。これは邦銀の経営を評価しているからだ」と嘯く銀行経営者もいる。外資が買っているのは「邦銀の株価が短期的に割安」だと思っているからに過ぎない。即ち、日本経済全体の回復基調と金融庁による保護政策を見て買っているだけだ。メガバンクの経営者は、「大きすぎて潰せない」と国民経済を人質にとり、「既得権」に安住しようとしている。しかし、国際的に低い邦銀の収益力は「乗っ取り」の危険を意味する。「低い株価」と「お粗末な経営」は、逆に言えば格好の「敵対的買収」のターゲットとなる。もっとも「日本の銀行が巨額の資金を使って買収に値する」かという疑問はある。
2.銀行経営では「収益力アップ」が喫緊の課題である。そのために、確かにメガバンクは大量の「外部採用」を行おうとしている。プロの採用も計画している。しかしメガバンクが考えている「採用条件」が「プロ」の食指に適うのか極めて疑問である。「プロ」を採用するためには「組織や権限の調整」、「報酬」、「閉鎖的な企業文化の改革」等々、さまざまな条件整備が必要である。しかし現時点で多くの邦銀は、「プロ」を既存の組織の「一兵隊」として押し込めようとしている。即ち、どんなに優秀で稼ぐプロであっても、邦銀では部長、グループ長、ましてや執行役員に任命されることは無い。これらのポジションは必ず「生え抜き」が占める。また、形式上「ヘッド」となったとしても、「生え抜き」の上司が実質的な指揮権を握っている。これは、「経営に関すること」は外部採用者には任せられないという邦銀の「絶対的な経営方針」に基づく(勿論、例外がまったく無いわけではない)。
3. 「外部採用者」は「経営に関わる」ことが出来ないとして、「プロ」にディール遂行上の「権限と責任」が明確に与えられているのか。「プロ」は「権限」が明確でなければ実力を発揮出来ないし、「責任」も負えないと考える。「稼ぐプロ」とは、いつも「権限と責任」の狭間で追い込まれ、苦闘して成果をあげる。しかし日本の金融機関では、「プロ」がレポートするヘッドにすら明確な「権限と責任」が与えられていない。しかもそのヘッドのほとんどは「半分素人」である。ジョブ・ローテーションで廻されて来ただけの人である。勿論、ディールになるとさまざまな問題が発生する。戦略や戦術での判断、リスクマネジメント、顧客との調整、競合他社との戦い等々である。従って、ヘッドが「半分素人」であれば戦えない。ここに日本の金融機関と外資系金融機関の組織の大きな違いがある。外資系のヘッドは「マネジング・ディレクター」と呼ばれ、「実戦上がり」のプロである。彼らには明確な「権限と責任」が与えられている。彼らは、与えられた権限の範囲内で収益目標を達成しようと苦闘している。従ってリスクを取ってチャレンジするし、革新的なアイディアが生まれる。結果として高い収益が生み出され、会社全体が潤うことになる。しかし、このヘッドには「稼ぐ」だけでなく、部下を率いる「リーダーシップ」も求められる。逆に言えば「稼ぐプロ」の中から「リーダーシップや見識のある人」がマネジング・ディレクターとなる。外資では「稼いだ実績の無い人」がヘッドに選ばれることはない。本社の「経営者」は、各々の部門の実績を検討し、戦略の見直し、資本配分の適正化等を通じて部門や会社全体の経営を行う。即ち、コストとリスクの縮小と収益の拡大である。そこでは必ずしもディールでのノウハウは必要とされない。勿論、この「経営者」と「部門/グループ・ヘッド」は十分にコミュニケーションをとらなければならない。欧米のエクセレント・カンパニューはこの組織形態をとる。日本の金融機関の組織は、両者が「混在」しているため、何がなんだか分からない。従って、外部の優秀な「プロ」はメガバンクに応募しない。
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