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平成16年12月 新・第1号 (日本語版) 〜「新しい」投資銀行ビジネスの時代に備えよ!〜
エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社
代表取締役 小溝 勝信 |
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- 目次 -
I.レポートの「要約」 II.ビジネス別人材需要の様相 1.再生・買収ビジネス
2.不動産金融ビジネス
3.投資銀行・企業金融ビジネス
4.クレジット・ビジネス
5.資産運用ビジネス
6.マーケットリスク・ビジネス
7.プライベート・バンキング
III.外資系金融機関の様相 (概観)
(外資系プロのキャリアについて)
W.日本の金融機関の様相 (概観)
(若手金融マンへのアドバイス)
(金融庁のスタンスとコンプライアンスの問題)
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| はじめに 04年の日本経済は企業業績の回復を受けて好調であった。GDPの成長は政府見通しで実質ベース2.1%増とのこと。05年でも堅調な景気を予想する向きが多い。銀行不良債権問題でも、大手7行は「不良債権比率を02年3月末の8.4%から05年3月末には半減する」という目標を達成する。従って、大手邦銀は経営目標を「健全性」から「収益性」へ移しつつある。マーケットでは「市場型間接金融」の拡大が予見され、国民の投資行動も「貯蓄から投資」へのシフトが要請されている。一方、大手外資系金融機関も欧米経済の回復と本社ベースの業績の回復により、下記に報告するような問題を孕みながらも、東京支店の戦略部門にリソースを注入している。このため、日本の金融人材市場は、1〜2年前とは比較にならない程の活況を呈している。 しかし、上記のような経済の質的・構造的な変化(下部構造の変化)に対して、内外の金融機関は、戦略・組織・人事政策を適合(上部構造の改革)させているか。また、金融プロの意識改革は行われているか。これらの問題に対して、金融人材市場の様相を報告しながら、当社の提言を行いたい。 私事ながら、筆者は11年間勤務したヘッズジャパンの金融部門を退社し、04年11月に当局の許可を得て、エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立した。この「レポート」は、筆者が94年以来半年毎に作成していた「外資系金融機関の最近の人事事情について(最終は19号)」の連続版である。「金融市場の最近の人事事情について」−新・第1号として、04年の金融人材市場の様相をお伝えする。 |
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I.レポートの「要約」 金融人材市場の様相は下記に要約出来ると思う。
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II.ビジネス別人材需要の様相
エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のアサインメント残高
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1.再生・買収ビジネス
このビジネスには「ディストレス」「プリンシパル・インベストメント」「再生ファンド」「プライベート・エクイティ」を含む。
2.不動産金融ビジネス このビジネスには「ディストレス」「プリンシパル・インベストメント」「再生ファンド」「プライベート・エクイティ」を含む。 日本のバブル崩壊に伴い発生した不良債権は、89年から04年の15年間に、約120兆円処理された。特に97年のバルクセール開始により、邦銀の不良債権処理が進んだ。「ディストレス・ビジネス」として、外資系投資銀行やハゲタカ・ファンドと呼ばれた外資系投資ファンドは、邦銀から不良債権を超安値(簿価の1/10程度)で購入し、転売し、回収して巨額の利益を上げた。また、竹中金融庁は大手邦銀に本格的なリストラを迫った。結果、大手邦銀の不良債権の残高は、01年に設定した目標の通り、05年3月に半減(4%台)することになる。これによりディストレス・ビジネスは終焉し、注目は「破綻懸念先」から「要注意先」、言い換えれば「再建可能先」の再生に向かう。また、正統の「プライベート・エクイティ」も活性化しつつある。M&Aも活性化しており、04年の「再生・買収」ファンドによるM&A件数は500件を超え、前年比200件以上増えた。「再生・買収」ファンドの投資累計は1兆円を大きく越えている(産業再生機構を除く)。これは03年の6倍以上である。この流れを確かなものにしたのは新生銀行の再上場である。これにより外資のファンドが一気に日本への投資に自信を持った。エグジットも増えている。04年での投資ファンドの事業法人等への転売は30件あり、金額は前年の10倍の4200億円に達した。投資利回りも推定で年率15%程度と堅調のようである。 実際、マーケットの資金余り状況を反映して「再生・買収」ファンドが乱立している。外資に加え、年金も投資を開始し、日本勢でも評価出来るファンドが出てきた。更に「地方の再生」に照準を合わせるファンドもあり、地方が主戦場になりつつある。このようにビジネスは拡大し人材需要を生んでいた。 外資系投資銀行と海外の不動産投資ファンドが積極的に買い、マーケットをヒートアップさせている。買値は採算ぎりぎりまで上がり、「バブルだ!」と非難する向きもある。ある米系投資銀行が運営する私募ファンドが、東京の紀尾井町ビルを推定利回り3.7%で落とした。8割が借り入れで、金利は2%。従ってエクイティ部分の利回りは10%となり、十分採算が取れるという。しかし日本の小体ファンドはこれでは買えない。特にオークションに持ち込まれると米系投資銀行と米系ファンドの独壇場になると。このように、コストの安い資金を大量に持つ米系投資銀行やJ−REITがマーケットを独占しつつある。 「勝ち組」でも「苦戦組」でも不動産投資では人材需要が強い。しかし「強い」と言っても、ビジネスが量的に拡大しているからではない。競争に勝ち抜き、採算に合う優良物件を仕入れる優秀なプロをどうしても採用したいと言っているだけである。仕入れる方法は問わない。銀行から不良債権を買っても良いし、独自の人脈を活用しても良い。 国内の不動産投資ファンドも健闘している。大手は7〜8社ある。いずれも95年前後に創業した。当初は外資系ファンドの下請けで、デュー・ディリジェンスを行っていた。その後各社とも順調に成長し、現在5社上場している。資産総額は2兆円を超えており、05年に は5兆円を目指す。まだ拡大する。私募ファンドの運用予想利回りは6%程度で、J−REITの4%より高い。年金が私募ファンドへの投資を本格化するので心強い。各社とも「不動産と金融の融合」を理念に掲げており、ファンド投資に加え、投資銀行化を目指す。即ち、不動産取引を契機に不動産絡みのM&Aやファイナンスを提案しようとしている。このため広範な人材需要がある。最近収益力もついたので報酬水準も上がり、優良な人材の確保も可能になりつつある。 J−REITは01年9月に始まった。現在上場銘柄は14法人で、市場規模も1.4兆円に拡大した。しかし米国の20兆円には及ばない。1〜2年以内に3〜4兆円に拡大すると言われる。懸念は金利水準の上昇である。現在予想利回りは4%程度まで落ちているが、レバレッジが高過ぎるため、金利が反転したら大きく売られる可能性がある。しかし業界はまだ強気で、人材需要も強い。物件の取得・売却を担当するフロント系だけでなく、REITの仕組み作り、上場法人としての法令順守を確保するコンプライアンスやIR等も人材需要の対象である。 物件のソーシング アレンジャーとしての成否を決めるのはソーシングである。ソーシングにはプロとしての「目利き」が求められる。「金融と不動産の融合」を目指すから、不動産業か金融業の出身者が多い。一見不動産業出身の人が強そうだが、意外に苦戦している。不動産業出身者は、確かに物件の目利きには強いが、仕入れからエグジットまでの時間の観念(何年で売れるか)や金融スキームのアイディア(金融商品に仕立てる)に弱いと言われる。勿論、金融マンは不動産の目利き、法律、規制、慣行、用語に弱い。 一般には、ソーサーは仕入額に対して報酬が支払われる(売却益に対してではない)。稼ぐソーサーの争奪戦が激化しており、引き抜き条件がヒートアップしている。50〜100百万円も珍しくない。彼らは「成果連動のボーナス制(たくさん仕入れたら、一年後にボーナスを払う)」では動かない。稼ぐプロは事前に高額のギャランティを要求する。巨人の清原選手への5年30億円の年収条件のようなもので、本当に稼ぐかどうか分からないが高額の年収保証を迫られる。人材市場もバブルである。この状況は長く続かないと思う。 また、戦いは地方に拡大しており、地方に人脈や実績を持つプロも求められている。 バリュエーション 確実に収益が期待出来る物件が希少になっていることから、ソーサーが持ち込む案件を判断するプロ(アンダーライター)が求められている。不動産のプロによれば、不動産価値は金融商品と違って、その物件の上に何を建てるかで大きく違うとのこと。対象は不動産鑑定士ではない。また、クライアントへの説明能力も求められる。 ノンリコース・ローンのレンダー 物件のソーシングに加え、ファイナンス分野でも人材需要が強い。職責は、・営業(融資先の開拓)、・デュー・ディリジェンス(担保不動産の評価)、・ドキュメンテーションである。邦銀も、企業金融より利鞘が大きいことから積極的に取り組んでいる。最近はシニアな部分だけでなく、メザニンやエクイティ部分への投資も始めた。ここでも目利きが必要である。 ノンリコース・ローンの証券化 CMBSの組成も拡大中である。レンディングから証券化、証券化商品のプレースメント(販売)まで一貫して行う投資銀行もある。CMBSではクライアントが既に流動化する物件を保有しているので、調達コストを適正化するスキームを作る。しかし現在、「新規の」プロジェクトに対する「仕掛け型」「開発型」CMBSが注目されつつある。ビルや商業施設等の建設にあたり、計画の当初から証券化での資金調達を前提とする。六本木ヒルズの建設に使用されたと言われる。REITにも組み込まれる。ここでの人材需要は強いが、適格者が極めて少ない。これは一種のプロジェクト・ファイナンスだが、ABSのプロには「ファイナンス」のノウハウが無く、通常のプロジェクト・ファイナンスの経験者には「証券化」のスキルが無い。今後、この両方のノウハウを持つプロへの需要が拡大すると見られる。即ち、この職責には、案件の発掘力、参加者の調整力、プランの構築力、クレジットの審査能力、プライシング、法律・会計知識、不動産、エクイティ・マーケット、証券化技術等、全てを熟知していなければならない。このような人材は極端に少ない。 プロパティ・マネジメント さまざまな作業を行い、投資した物件価値の増大を図る。また、物件を管理する。当社にはサーチ依頼が無いので人材需要の状況は分からない。 プレースメント(販売) エクイティ部分とデット部分により投資家が異なる。デットの販売は債券営業部が行う。エクイティ部分の投資家は独特で、シニアなプロが人脈を通じて見つけてくる。年金等の機関投資家が購入を増やしており、この投資家向けの提案力が重要になる。また、機関投資家も不動産金融商品を「オルターナティブ」としてではなく、「正規」の投資対象として位置づけるべきだと考えられている。従って、不動産流動化市場は「不良債権問題」が終焉しても拡大する。 3.投資銀行・企業金融ビジネス 04年での投資銀行・企業金融の環境は前年に比較して大きく改善した。即ち、04年の米国でのM&Aは、米国株式市場の好調さに後押しされて01年以降の落ち込みから回復し、金額ベースで前年の1.5倍の約87兆円に拡大した。日本でも、M&A件数は04年には2211件(レコフ調べ)で、これは、前年比28%増である。買収金額も10兆円を超えていると見られる。前年の5.4兆から大幅に増えている。また、株式市場からの調達も急増し、新規公開を含む株式調達額は3.6兆円となり、前年比77%アップした。これはこの10年間では、96年(6.2兆円)に次ぐ規模であった。05年でも増大し、4兆円規模に膨らむと予想されている。また、IPOは157件も実現し、過去3番目の高水準となった。また、スチール・パートナーによるソトー買収の攻防戦に端を発して、日本の上場会社にも敵対的買収に対する危機感が広がった。この防御アドバイザリーのニーズが激増していた(日本の一部上場企業3千数百社の過半が余剰キャッシュを持ち、外資系の買収ターゲットとなり得る)。さらに05年での商法の大幅改正を経て、06年には本格的なM&Aの時代が来る。このように、05年では投資銀行ビジネスが活気を帯びると予想される。既に人材需要を引き起こしている。 これらの環境の変化を受けて、日系の金融機関では投資銀行ビジネスが活性化した。急増している国内M&AやIPOの多くは、日本のメガバンク(証券子会社も含む)及び大手証券が取った。外資系金融機関は一件当たりの収益が小さすぎるとして避けていた。従って、メガバンク系や大手証券系のM&A部門は超多忙であった。 また、メガバンクの一部が「新しい」投資銀行・企業金融ビジネス時代の到来に先駆けて、組織の変更と人材の採用を積極化している。マーケットはこの10年、「マーケットリスク・ビジネス(デリバティブ等の先端金融商品)」から「資産運用ビジネス」「ディストレス・ビジネス(不良債権の転売)」、「クレジット・ビジネス(証券化)」「再生・買収ビジネス」へと変遷し、今後「新しい」投資銀行時代に移行する。従って、企業金融や投資銀行ビジネスでは、通常のローンの提供や単なるM&A・引受けのマンデート・ハンティングだけでなく、顧客の資本政策やジュニア・デットに照準を合わせた提案が出来なければならない。特に日本の金融機関がこの体制作りを急いでいる。 また、メガバンク系証券会社の一つが株式ビジネスでも3年以内に野村證券に追いつくとして、プライマリー・サイドでも大幅な人材採用を行った。銀行での企業との緊密な関係(メインバンク)を使って、株式発行での主幹事取りを目指している。 外資系投資銀行でも、大手が03年までのリストラ基調から反転し、組織を再構築している。しかし、外資系投資銀行での優勝劣敗は明白で、活気を帯びているのは米系トップクラスの投資銀行5〜6社と、欧州系の3〜4社に過ぎない。外資系らしい大型のM&Aや引受けが行える金融機関だけが生き残っている。人材需要もこれら「勝ち組」へ大きく偏っている。 外資系金融機関の投資銀行では、シニアに対しては「即戦力」が求められる。M&Aや引受けで大きな収益をもたらすプロが求められている。言い訳は利かない。中堅でも一級の能力を持つ者に対してのみ需要がある。一般スタッフは生え抜きの「金太郎アメ」で十分である。従って、現時点では基本的にリプレースメントの需要しかない。但し、06年の「新しい」投資銀行ビジネスの勃興(M&Aや買収防御アドバイザリー)に備えて、人材ニーズが起こりつつある。 日本の金融機関(メガバンクの企業金融部門、メガバンク系証券、大手証券)は、上記の環境変化に対応するために、大幅な人材採用を行っている。エクイティ・ファイナンス、資本政策での提案に経験を持つ、外資系投資銀行や大手証券会社の中堅プロに対する需要である。報酬は、従来の日本の金融機関のレベルを超えている。日本の金融機関にはディール機会はたくさんあるため、報酬が下がっても応募する外資系プロも多い。いずれにしろ、ここでの人材需要は今後も増える。ここでは、ターゲット産業は数年前のようにTMTと薬品に限定されていない。 しかし、日本の金融機関はディール機会には困らないが、提案力やグローバル・ネットワークの無さは相変わらずである。 CSR(企業の社会的責任)やIRの重要性が説かれている。現在、日本の一部上場企業の内80社余りが、30%以上の株式を外資に保有されている。外国株主に対する説明が重要になっている。これらの人材需要が増大すると考えられる。 金融機関においては「投資銀行ビジネスや企業金融とは何か」について深い洞察力が求められる。また、法改正で必要なノウハウの取得が必須である。
4.クレジット・ビジネス 「市場型間接金融」の重要性は論を待たない。資本主義経済が成熟するためには、直接金融と間接金融がバランスよく機能することが望ましい。金融機関の経営者が資産をポートフォリオとしてマネジメントするためには、貸出債権のセカンダリー・マーケットが必須である。間接金融という相対融資の条件を、マーケットと連動したプライシングに合理化する必要がある。特に日本の金融構造が「銀行融資」に過度に依存しているため、銀行経営の失敗は、即、経済の失敗につながる。これが「失われた10年」の構造的原因である。現在でも、銀行融資の総残高(全銀行ベース)はGDPの80%を超えている(米国は30%台)。直接金融拡大の道筋として「市場型間接金融」の拡大が喫緊である。一方、日本経済の回復にとって大切なことは、全体で数十兆円に上るリスクの高いデット・マーケット(不良債権と一部の要注意債権)への挑戦である。筆者は、マスコミが報道している程、「不良債権問題」が解決しているとは考えていない。日本のクレジット問題を早期に収束するためにも、クレジットリスク・ビジネスは拡大しなければならない。人材需要も強い。 ここで言う「クレジットリスク・ビジネス」とは、具体的には、証券化(不動産の証券化も含む)、ローン・トレーディング、クレジット・デリバティブ、シンジケート・ローン、私募債、開発型CMBS、ハイイールド・ファイナンス、メザニン、DIPファイナンス、またそれらを支えるクレジット・アナリスト等である。 証券化 ABSの市場規模は引き続き拡大している。04年の発行額は4兆円を越していると見られる。残高は10兆円を既に越えている。流動性は小さいものの利回りが公社債より高いため、生命保険会社を中心に機関投資家が投資を増やしているからだ。ABSの対象債権の内、各種売掛債権、特債法債権、消費者ローン等の伝統的なものは全くコモディティー化しており、忙しい割には儲からない。多くの外資系がこれらのABSビジネスから撤退した。従ってこの人材需要は大幅に減った。目玉は、不動産の証券化一般、住宅ローンの証券化(RMBS)や商業用不動産の証券化(CMBS)である。RMBSはマーケットで実績があるため手法は確立しており、メガバンク系の商品になっている。外資系にも人材需要はあるがメガバンクでの採用のニーズが強い。 付加価値のある証券化を行うため、さまざまな新しい資産やビジネスを対象にする証券化が試みられた。例えば、医療費請求、パチンコ機器、倉庫の敷金、各種の繋ぎ融資等である。しかし、まとめても50億円にもならず、相当額の資産を集めなければ効率的なビジネスとならない。従って、人材需要も頭打ちとなった。今後は資産より「事業そのもの」の証券化が注目されるが、具体的にはこれからである。 人材需要で特筆すべきは、日本の信託銀行のノンリコース・ローン担当者に対する強い需要である。彼らは不動産や事業のキャッシュ・フローを裏付けとする信託受益権証券を発行するが、その実務能力への需要が強い。 シンジケート・ローンと私募債 04年での邦銀のシンジケート・ローンの組成は20兆円に拡大したと見られる。これは03年の15兆円と比較して大きな伸びである。しかしこれも米国の1兆ドルの規模に比較して小さい。メガバンク各行がシンジケート・ローンの拡大に躍起になっている。海外向けの大型プロジェクト・ファイナンスやPFIもあるが、要するに国内企業向けの協調融資である。これまでのようにメインバンクとしてリスクを抱え込むのではなく、リスク分散し、かつフィー収入を得ようとするものである。メガバンク各行とも大幅に人材を増やしている。これは通常の銀行員で出来るビジネスだが、邦銀では若手の職員が枯渇しているため外部採用している。人材需要は、マーケティング(案件発掘)、トランザクション(組成)、ストラクチャリング、ドキュメンテーション等多岐に亘っている。 ローン・トレーディングとクレジット・デリバティブ クレジット・デリバティブはグローバル・ベースでは依然拡大中である。しかし、日本もののクレジット・デリバティブが拡大せず、人材需要も冷え込んでいる。日本人トレーダーも失職している。現在では、外人プロが海外市場を相手にトレーディングしているだけである。理由は、運用難の銀行や機関投資家が国債の代替としてクレジットものを大量に購入しており、信用リスク格差が過剰に小さくなっているからである。このため日本のクレジット・デリバティブのプライスには合理性が無くなり、多くの参加者が嫌気して退散した。 但し、外資系金融機関の開発するシンセティックCDO(クレジットの保証料収入の組み入れ)が、年金や地銀等の機関投資家の投資対象となっていることから、それなりに拡大している。日本もののシンセティックCDOは仕組みやトレーディングが難しく、最近は日本の金融機関でも可能のようだが、一部の外資系に限定された商品である。営業マンに対する人材需要がある程度である。 また、単純に、債権やローンを売買するビジネスもある。融資先の発掘に苦戦する邦銀が拡大している。この経験者への人材需要がある。不良債権先であっても、一旦マーケットに出された債権であれば優良債権として買えるとのこと。 クレジットリスクのコントロール クレジットリスクのコントロールは銀行にとって不可欠である。最近邦銀では、クレジットリスクを一元的に管理するための体制作りが始まっている。欧米の大手銀行にはクレジットリスクを集中したブックがあり、各部門で行うクレジット取引の反対取引を行う。邦銀でもこの必要性が認識されつつある。ローンだけではスプレッドが抜けないので、クレジット・デリバティブを駆使したり、リスクを集中管理して、ポートフォリオとしてコントロールすると同時に収益機会も伺う。邦銀の預貸率が8割程度であり、また運用機関化=ファンド化していることから、クレジットリスクに自己資金を投入している。リスクが増大するJGB運用から脱却するオルターナティブ投資である。ここでは外ものも対象にする。その人材ニーズが起きている。 ハイイールド・ファイナンス 日本経済の再生のためには、「リスクの高い」クレジットに対するファイナンスの拡大が喫緊である。メザニン、ハイイールド、DIPファイナンス等である。本来、クレジットリスクは、シニアデットからジュニアまで、最終的にはエクイティまで、連続性を持って市場(プライス)が構成されていなければならない。しかし日本の金融マーケットではそれらが分断されている。外資系を中心に、米国市場に習って、「リスクの高い」クレジットを対象にしたビジネスを立ち上げようとする動きがある。メザニン・ファンドの上陸である。このリスクに対しては金利も高くなる。しかしこれを邦銀、特に日本の信託銀行が壊す。邦銀は今でも一旦「貸せる」と腹をくくれば低利の貸金をぶつける。リスクに見合った金利を取るという動きが出来ない。外資のこのグループは開店休業である。人材採用どころではない。 クレジット・アナリスト クレジットリスク・ビジネスが「合理性」をもって拡大するためには、「新しい」クレジットリスクの分析者が育たなくてはならない。邦銀の不動産担保融資の審査でもなく、A以上の社債の分析でもない。「高い」クレジットリスクの事業・企業の分析者である。この人材ニーズは01年〜02年頃に勃発し、証券会社のクレジット調査部や格付け機関が採用しようとした。しかし、マーケットにはこの人材が極めて希少だとわかり、採用に苦労していた。クレジット・マーケットの不信と相俟って、人材需要も霧散していると思う。 5.資産運用ビジネス 04年では、「伝統的な」投資信託や投資顧問ビジネスは「底を打った」ようだ。いずれも、運用資産の残高は前年比増加していた。しかし運用関連での人材需要は余り聞かれなかった。これは、01年をピークとして内資・外資の運用会社が人的体制を整備していたこと。この数年のエンロン事件等不祥事で、運用会社に対する不信感が蔓延していたこと。企業年金の代行返上等の影響を受けたこと。機関投資家がパッシブ運用を選択していたこと等による。しかし、このビジネスで人材の需給が冷え込んでいるのは、基本的には、日本の資産運用会社が十分なリストラを行っていないことによる。そしてプロの運用者を育てなかったことによる。人材需給にはまだ売り圧力が感じられる。下記に述べる「オルターナティブ関連」を除いて、人材需要があるとすれば、良質なプロへの代替か、商品設計等のミドルオフィスであろう。05年も基本的にこの流れにある。 投信 公募投資信託の残高は04年3月末現在で39.0兆円あり、前年より11%増えた。特に銀行による窓口販売が健闘しており、全体に占めるシェアは04年7月末現在で30%を越えた。投信は銀行商品なのであろうか。今後もそのシェアは拡大すると考えられる。売れたのは、グローバル・ソブリン・オープンに代表される毎月分配型である。また、海外のREITを組み込んだ投信も好調であった。また個人年金保険も順調に拡大している。これら投信・個人年金での収益は、あるメガバンクの04年3月の決算では400億円を上回った。ますます拡大すると予想されるので、銀行はこれらの商品の販売スキルを持つ経験者を大量に採用している。今後は、多様な個人向け商品の仕入れや販売戦略を企画・推進する戦略担当者が採用され、銀行のメインビジネスとして拡大することが期待される。特に投信は、05年のペイオフ解禁、数年後に来る団塊世代の退職に伴う巨額の退職金の支払い、401(k)の拡大期待等で、順風が吹くと予想される。特に401(k)は、01年に制度が導入されたが、様々な制約により広がらなかった。しかし04年には導入企業・団体数は倍増し、11月末では3311件になった。また、04年10月には掛け金の上限が引き上げられたこともあり、今後飛躍的に裾野が広がると期待される。投信が再び「60兆円の壁」突破に向けて拡大し、人材需要も回復することを期待したい。 投資顧問 投資顧問契約残高は04年9月末で100兆円に迫り(98.5兆円)、3月末から5.7%増加している。過去最高である。これは内外の機関投資家を中心に、日本株やグローバル債券で運用する投資一任契約が伸びたことによる。企業年金の代行返上のインパクトは吸収されたように見える。契約件数も9月末で6808件と、3月末比7.6%増えている。しかし、この契約件数は00年当時のまだ半分程度である。これは、この数年での年金基金の解散の影響だと考えられる。従って、投資顧問や年金運用での人材需要はほとんど聞かれなかった。 オルターナティブ投資 インデックス型運用の利回りの不振から、「絶対収益」を求めて「オルターナティブ投資」が拡大している。ヘッジファンド(個別のストラテジーやファンド・オブ・ファンズ)、不動産金融商品(内外の不動産投信、私募ファンド、証券化商品)、プライベート・エクイティ等である。世界の機関投資家もオルターナティブ投資の比率を上げているが、日本の厚生年金基金も運用の10%程度をオルターナティブに向けている。これは前年比3%のアップである。日本の信託銀行大手5行の04年9月末でのオルターナティブ投資は1兆円に迫っている。各社とも海外の大手運用会社とタイアップしたり、専門部署を強化している。 日本のオルターナティブ投資の中核は、ヘッジファンドと不動産ファンドである。不動産については上記で報告した。多くのヘッジファンドが90年代末期のアジア危機・ロシア危機で破綻し、その後ヘッジファンドは低迷した。しかし01年頃から復活し、第3次ヘッジファンド・ブームを迎えた。03年までは年率10%程度のパフォーマンスを上げていた。04年末での世界のヘッジファンドの運用資産残高は1兆ドルに達している。これは前年比30%以上の増加である。ファンドの数も8000に達した。日本の機関投資家もヘッジファンドをオルターナティブ投資の一つとして位置づけ、積極的に運用している。 世界的なヘッジファンドも日本での販売増強のためオフィスを強化している。一方、日本経済の回復基調を受けて、日本向け投資も急増している。04年6月末現在では840億ドル(米国大和証券推定)を日本もので運用していると推定される。今後、日本での運用を増やすと表明している海外大手のファンドもある。また最近は、個人富裕層ビジネスが拡大しつつあり、ヘッジファンドの個人向けの販売も増えている。 ヘッジファンドでは、ロング・ショート、マクロ、CB裁定、イベント・ドリブン等あるが、日本の機関投資家の投資の中心はファンド・オブ・ファンズである。 しかし04年も後半に入り、ヘッジファンドに対する評価が下がっている。04年での世界のヘッジファンドのパフォーマンスは1%台に落ちている。特にマーケット・ニュートラルが不振である。ヘッジファンドへの不信が広がりつつある。原因の一つは、日本の金融機関ではいつものことだが、専門部署を立ち上げてもプロの外部採用を行わないことである。高給を出してプロのゲートキーパーを採用するという発想が無い。年金では相変わらず労務・人事出身者が担当しており、信託銀行もジョブ・ローテーションで担当させている。専門性で裏打ちされたリスク管理能力もない担当者が、証券会社の口車に乗って購入している。実際、機関投資家が運用で失敗したと聞く。また、元々ヘッジファンドとは、他に先駆けてニッチや歪を見つけ、リスクを取って投資するものである。大きな資金が最初から投入されるものではない。従って、年金のような巨大な資金が参入すればパフォーマンスは悪化する。一つのファンドはせいぜい500億円までと言われる所以である。また、リスクテーク下手の日本の機関投資家には不向きな投資商品である。従って、人材需要も頭打ちになっている。 「日本版ヘッジファンド」と呼ばれるプロたちがいる。彼らはかつて大手の投資銀行で名をはせたプロで、ユニークな投資手法で高いリターンを実現している。実績もあり資金も集まっている。株のトレーダー、セールス、債券・デリバティブのトレーダー(クオンツ系)、エクイティ・デリバティブのアービトラージャー等出身は多様だが、成功者のほとんどは外資系のプロである。最近多いのは、正直、大手の外資系投資銀行のトレーダーをクビになった人たちで、再就職先が見つからないから友人たちとヘッジファンドをやっている。玉石混交で、既に撤退した人も多い。 6.マーケットリスク・ビジネス デリバティブ デリバティブは、依然として一部の外資系金融機関と邦銀の大きな収益源である。一部のトップクラスのプロは、いまだにこのビジネスで1〜2億円のボーナスを貰っている。引受け、M&AやABSが苦労の割には儲からないのに比較すれば、工夫すればまだ大きく儲かる。しかし時価会計が広がる中で、どのようにして儲かる顧客を見つけるかが問題である。ミッド・マーケットと呼ばれる顧客群がある。学校、宗教法人、財団等で会計原則を異にする法人である。いわば「甘い」投資家で、これらのニーズに合わせて仕組み債を売り、収益を抜く。これに顧客ベースを持つマーケターの人材需要があった。しかし、これらの「甘い」顧客は、一旦「騙された」ことが分かると業界に「御触れ」を廻す。コンプライアンスに厳しい外資系の中には、この顧客への接近を禁止するところもある。 エクイティ・デリバティブ 04年末の日経平均は前年同日比で7.6%上昇したが、年初来の安値と高値の差が約1800円しかなく、19年ぶりに狭い範囲での売買であった。従ってボラティリティが低く、エクイティ・デリバティブのビジネスチャンスは小さかった。組織の縮小もあり、このプロは苦戦していた。 円債 円債ビジネスは「儲からない」と言われる。しかしフルラインの金融機関として看板を掲げる以上、やらない訳にはいかない。外資系数社がJGBトレーディングを強化するため人材を募集していた。大丈夫だろうか。 7.プライベート・バンキング プライベート・バンキング、個人富裕層ビジネス、ウエルス・マネジメント等呼称は違うが、リッチな個人層を対象とするビジネスが勃興している。不思議と、シティバンク東京支店に対する金融庁処分と期を一にする。シティバンクの処分理由は、銀行法が禁じる証券や保険、不動産の販売、美術品への投資の仲介、マネー・ロンダリングを行う人の口座開設、ずさんな顧客情報管理、誤解を招く勧誘手法、収益偏重の経営等であった。日本撤退の処分がフェアだったかの議論はあるにせよ、新しく参入する金融機関は、処分の理由を十分に検証する必要がある。 日本のプライベート・バンキングでは、10年も前から多くの外資系金融機関が日本に上陸した。いつも「1400兆円の個人金融資産の1%=14兆円でも取れれば大成功」という理屈である。しかし旨くいかずに撤退・縮小する。これを繰り返す。何故過去の失敗から学ばないのか。シティバンクだけが大きく成功したが、「奢って」崩壊した。現在、外資系金融機関や日本の金融機関の数社が、新しい戦略を練って立ち上げようとしている。対象はスーパーリッチではなく、シティバンクが対象にしていた預かり資産50百万円から1億円の層である。現在の日本の法規制の下ではスーパーリッチ層のニーズには対応が難しいため、この層がターゲットになると。商品では、富裕層を中心に、一定のリスクを負っても高い投資収益を望む個人が増えているため、ヘッジファンドやデリバティブを加工した金融商品を売るとのこと。 メガバンクや信託銀行も100人単位で個人宛て資産運用相談員を増やしている。身分は契約社員である。外資との提携も進んでいる。全体として人材需要は拡大しつつある。 III.外資系金融機関の様相
W.日本の金融機関の様相
イラク戦争の泥沼化や経済や技術のグローバル化の中で、文明の衝突をどう緩和するか、文化の多様性をどう守るのかが問われている。識者は「異なる文化への寛容と尊敬の念が大切」と説いている。しかし、歴史的、文化的問題が「べきだ」論で対応出来るのか。筆者は「唯物史観」の全てを肯定するものではないが、ファンダメンタルズの動きの深い洞察なくして「べきだ」議論をしても意味がないと考える。ファンダメンタルズ(マルクス主義で言う下部構造、現象学で言う超越的実在)の変化に沿った文化(上部構造)論を提起してもらいたい。歴史は「正しい」方向に向かっている訳ではない。ダーウインのいう「適者生存」が歴史変化の根拠だと思う(上部構造による下部構造の規定もある)。また、人間の認識能力の限界も確認されなければならない。哲学の歴史(カントの純粋理性批判や現象学)においても、最近の脳科学(脳機能と言語による認識能力の限界を研究)においても「人間は宇宙の事象(もの自体)を把握出来ない」と理解されている。即ち、「客体」=形而下における環境変化を把握できないとすれば、「主体」をどのように構築するかである。即ち、自らのキャリアをどう築くか、どう生きるかが問われる。 ESPのアサインメント残高(2004年12月末現在)
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筆者のプロフィール: 小溝 勝信(こみぞ かつのぶ) 1968年東京大学教養学部国際関係論分科を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行・主として国際部に従した。1984年に外銀に転じ、 ファースト・シカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任した。人材コンサルティングに転ずるため、1989年米国の大手ファームの一つで あるホイットニー・グループ日本支社に入社し、副支社長に就任した。1993年、日本型のエグゼクティブ・サーチの創設を目指してヘッ ズジャパンに転じ、金融部門マネジング・ディレクターに就任した。2004年エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立した。 このレポートは、筆者がヘッズジャパンで1994年以来半年毎に報告していた「外資系金融機関の最近の人事事情について」の連続版である。
エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社(ESP)のプロフィール:
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・実際のディールは各ビジネスにまたがっており、明確な区別は難しい。